個人的にマニアックだと思うJAZZの曲

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こんにちは、野澤です。

ジャズ好きが集まれば一番最初に交わす話題。それは「最近何聴いてる?」「どういうミュージシャンが好き?」。

この話を聞くだけでその人がどういうジャズを聞いてきたのか、どういうジャズが好きなのかがよくわかるというのがジャズファンの醍醐味。

これまでの記事でも個人的な趣味を語ってきましたが今回はもっとマニアック。個人的な好みを前面に押し出したテーマでジャズの曲をピックアップして語ってみようと思います。

マニアックポイント①実はセカンドリフがあった曲

最初のご紹介はセカンドリフがあった曲。過去形なのがミソです。

セカンドリフトとはテーマの後、もしくはアドリブソロが終わった後に演奏されるメロディのことです。

例えば”Take the A Train”や”Confirmation”のセカンドリフは有名です。知らない、という方は「曲名 セカンドリフ」で検索するとたくさん出てくるのでチェックです。

セカンドリフはどのスタンダードナンバーにもある、というものではありません。

そのためジャズミュージシャンはセカンドリフがある曲に関してはおおむねセットで覚えています。

しかし有名な曲であってもセカンドリフが存在していることを認知されていない曲もあるのです。

■アート・ブレイキー「Moanin’」

ジャズファンには驚かれる人もいるかもしれませんが、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズの代表曲で世界中でも、そして日本でも有名な「Moanin`」。

この曲にもセカンドリフがあったのです。

本人のアルバムではないのですが収録されてるのがこのアルバム。

Niagara Shuffleに収録された「Moanin`」ではセカンドリフを演奏しています。

私も今まで何度も演奏してきましたがセカンドリフが入ったバージョンをバンドで演奏したことはありませんでした。

つい先日、サックス奏者の中村誠一さんからセカンドリフがあることを初めて聞き、さっそく演奏しましたがなかなかいい発見になったなと気に入っています。

昔から知っていていやというほど演奏してきたのに知らないこともあるのか、灯台下暗しとはこのことだ、と思いました。

これは結構マニアックです。

マニアックポイント②ハーモニーにこだわった曲

ハーモニーにこだわりを持つプレイヤーといえばマイルス・ディビス、デューク・エリントン、コンポーザーのギル・エバンスなど、著名なミュージシャンが数多く挙げられますが今回はこのプレイヤーのこの曲を推したいと思います。

■ビル・エバンス「Spring Is Here」

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ユニバーサル ミュージック

ジャズファンならほとんどの人が知っているであろうエバンスの名盤、ポートレイト・イン・ジャズの中の1曲、“Spring Is Here”。

スタンダードナンバーにも数えられる曲ですが、スタンダードの中でも結構マニアックな曲と言っていいでしょう。

エバンスのバージョンはテーマからエンディングまでハーモニーの流れが複雑になったりメロディラインを聞かせるようにシンプルになったり、コード進行に合わせて曲のカラーが美しく変わっていきます。

特にメロディラインが上がって曲として少し盛り上がるパートに対して、下がっていくメロディラインを一緒に弾くカウンターポイントという主旋律、対旋律をうまく駆使しています。

その内声の和音も複雑なとこから明快な和音へと変化していく部分がドラマティックで情緒的です。

それこそ少しマニアックな着眼点プレイヤーでないと分かりにくい部分もあるかもしれませんが、個人的にはこの世にたくさん存在する音楽の中で最も美しい曲だと思っています。

マニアックポイント③インタープレイが気に入っている曲

ジャズにおいてはどの曲もソリストとリズムセクションがアドリブやテーマで絡みながら演奏していくものですが、その中でも気に入っているインタープレイを繰り広げる曲が何曲かあります。

■ダニー・グリセット「A New Beginning」

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Criss Cross

コンテンポラリー界隈では知る人ぞ知るピアニストダニー・グリセット。巨匠ハービー・ハンコックに次ぐ音の魔術師と呼ばれたピアニストです。

ハーモニーセンスはもちろんですが溢れ出てくるアイデアは唯一無二。ベースとドラムへの反応スピードがとてつもなく速くその上ストーリー性も一貫していて個人的にはベスト級のピアニストです。

そんなダニーのレッスンを数年受ける機会があり、一緒にセッションしたりレコーディングしたものを聴いてどういうインスピレーションを受けて演奏したのかを細かく話してもらいました。

その際に題材となったのがENCOUNTERSというアルバム中の「A New Beginning」という曲。

曲中でダニーが弾いたものにドラマーのケンドリック・スコットがどういう反応をしたのか、それにどうやってレスポンスしたのか、一つひとつ聞いていくと一流プレイヤーの視点が演奏と言葉の双方を通じて理解でき目から鱗の思いでした。

最初のテーマが終わった後はダニーが2拍3連から始めたのに乗っかってケンドリックが同じリズムで怪しげな雰囲気を作って引き込むような空気を作っていきます。

そこからだんだんとリズミックになっていきますが一番最初に出した3連符のアイディアは継続していてピアノが1拍3連でフレーズを繋いでいき、下降していくメロディを追うようにして次の小節ではベースも下降していきます。

その後に雰囲気を変えるメロディを提示した後はバンドの方向も変化していくのがわずかにわかります。

少しリズミックになったピアノに反応するようにケンドリックがシンバルのベルのキンキンした部分を叩いてよりリズミックに仕上げていき、それにまたダニーが単音でリズミックにアプローチした後両手で和音に繋げてまた広がりを持たせます。

しかもここでも3連符のリズムを使っていてアイデアに一貫性が出ていますね。

反応の仕方がみんな瞬発的なのにここまで一貫してストーリーあるソロの仕上がりを魅せるのは本当に一流ならではのテクニックでしょう。

個人的にはこういうところにジャズの魅力を感じます。

他にもこんな曲も好きです。

・アーネットコブ「Blues In the Closet」

テキサス出身のサックスプレイヤーであるアーネット・コブ。熱い演奏、渋い音色、リズムセクションに絡むようなソロのアプローチが最高です。

そんなコブのPARTY TIMEというアルバム中の曲「Blues In the Closet」の演奏。

最初はテナーで歌うようなソロを吹きますが最初に吹いたフレーズをリズムと音階を少し変化させながら渋い音で奏でていきます。

そこからギアをチェンジするようにリズムセクションを煽るようなフレーズへと変化させていきます。

シンプルでとてもわかりやすく頭からっぽにして聴いてもジャズのいい部分が味わえて最高なテイクです。ぜひ皆さんも味わってみてください。

マニアックポイント④気づくと面白い曲

これは結構マニアックな部分ですが、よく聴くとなんだか変だなと思うテイクもかなり存在するのがジャズという音楽。

プレイヤーは音楽のことを一番に考えてレコーディングしていると思いますがプレイヤーも人間です。

人間関係やレコーディング背景の影響がたまに演奏出ていておもしろい曲があります。

■マイルス・ディビス「The Sorcerer」

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LEGACY RECORDINGS

このアルバムのタイトル曲でもある「The Sorcerer」です。

アルバムではどの曲もシリアスで気難しい演奏でこの曲もそのうちの1つです。

作曲はテナーのウェイン・ショーターでかなり難解ですがマイルスとショーターの白熱するソロの掛け合いが最高です。しかしこの曲は最後のハービー・ハンコック(Pf)のソロで思わぬ展開が。。

マイルスとショーター2人のソロに続いてハービーも熱いソロを繰り広げていきます。

ハービーのメロディックではあるけどベースのロン・カーターとドラムのトニー・ウィリアムスとガッチリアンサンブルを組み立てながらも難解なプレイで攻めていくのも、手に汗握るようなスリルがあります。

盛り上がってきてまだまだこれから! あともう一歩! という所で、ショーターがまさかのテーマを吹き始めてピアノソロは終了します。

この時のハービーのピアノを聴いているとまだ弾きたそうな感じがしていて無理やりソロを終わらせられてのがちょっと可哀想な感じもしますが、同時に一流の演奏でもこういうことがあるのかと思うとクスッときます。

ぜひ一度聞いてみてくださいね。

以上が、ちょっとマニアックではありますが個人的に気に入っているジャズの曲たちです。

多分この辺は好みが分かれますし思い出補正があったり、さらにまた違う知識を持っている人もいたりするのでジャズ好きが近くに現れたら何の曲が好きか、どういうミュージシャンが好きかを情報交換するとより興味の幅が広がってジャズが詳しくなって好きになるでしょう。

こういう聞き方ができるにもおもしろいところですね。



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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。