佃煮を、普段から食すことはあるだろうか? 醤油やみりんなどで煮しめられた旬の素材を、白米といっしょにガツガツいく。
もしくは、冬なら熱燗、夏なら冷やで一杯、なんてときにちょっと一口の肴に。
僕はそんな佃煮が結構好きだ。そして、いつも買うお店は決まっている。
下町まで佃煮を買いに行く
浅草橋駅から歩いて少し、両国駅からでも十分歩いて行ける。
隅田川にかかるこの柳橋近辺は、その昔、船に乗ってお酒を楽しんだりする船遊びをしたり、日本料理を出すお店がたくさんあったのだそうだ。
現在はオフィスビルなどが多くなっているが、当時の様子を残すお店が川沿いにある。
それが、僕もいつも佃煮を買うお店“小松屋”さんだ。いつも、といっても常連と呼べるほどではない。
なにせ佃煮を三食三度食べる訳ではないから、大体4〜5カ月に1度くらい買い求める程度だろうか。
おまけに不思議なもんで、暑い夏の盛りではなく、冬の身の引き締まる思いをしているときに食べたくなる。
それが大体3〜4年続いている位。そんな程度だ。
その理由は、材料にある。
別に批判するつもりもないし、大体、体重90Kgを越す僕が成分表示だ健康だなどと、大岡越前に「粋」のなんたるかをご高説するようにとんちんかんである。
なので一言だけ。小松屋さんの佃煮は、素材と醤油、みりん、さとうだけです。
ちなみに、小松屋さんは釣船や屋形船を出す船宿としても営業しているそうだ。屋形船で一杯、てのもよさそうだ。
たきたてご飯と一緒にいただく
さて、ご高説もっともだが、話ばかりで腹がふくれるもんでもねえ。さっそく一杯やりましょう。
こいつが季節限定 生のり佃煮です。1月〜3月までの期間作られている。
ここ数年はこの時期欠かしたことはないほど食卓に並ぶ。
そのまま箸先にちょっとすくってツマミ代わりになめるのもいいし、ご飯の上に少し置いてかきこむのもいける。
今日は一杯といえど、ご飯の一杯。なぜなら昨日の酒が抜けていない。
醤油の香りと味わいの奧に、生のりの風味が抜けていく。
コクと旨味が強いので、口中いっぱいに広がり、ご飯がすすむすすむ。
小松屋さんの佃煮は、保存料などなしで、1カ月常温で保つ。
それは昔ながらの作り方を守っているから。
そのため、いわゆる市販品の佃煮よりも、醤油の風味がずっと強い。
何度かお使い物に持って行ったことがあるが、おいしいけど、いずれも塩気が強いね、という感想をいただいた。
これは、本来の佃煮がこういうものなので、他の佃煮の方が間違っている、と言える。
また、小さめのサイズにしては金額が高いとも言われたことがある。
が、先述の通り塩気が強いので、一度に食べる量は少しでいいのだ。そのためのお値段。
止め椀もいらないほど、ご飯が主役になる。うーーー、たまらん!
普段佃煮を食べない人にも、是非試してほしい。期間限定であるというのもそそられる。
同じくらいの時期にはカキの佃煮も出ているほか、穴子の佃煮などもうまい。
いずれも、ご飯でも肴でもいける。強魚もいらないほどだ。
さて、今日もご飯を炊かなくては。それでは。