エルビン・ジョーンズを知るのに欠かせないジャズドラマー必聴のジャズアルバム特集

前回に引き続き今回もエルビンジョーンズについてのお話です。

(前回の記事はこちらから)

今回は彼のキャリアの中・後期にサイドマンとして活躍したアルバム、リーダーとして出したアルバムをオススメしていきたいと思います。

エルビンジョーンズのオススメアルバム(中期)

エルビンはコルトレーンのバンドにいる間もさまざまなミュージシャンのアルバムに参加していました。

また、これらの演奏は歴史に残るようなすばらしい音源としても有名です。

■アンドリュー・ヒル「Judgment!」(1964年)

ピアノのアンドリュー・ヒルのアルバムです。

メンバーはアンドリュー・ヒル(Piano)、ボビー・ハッチャーソン(Vibraphone)、リチャード・デイビス(bass)、エルビン・ジョーンズ(drums)です。

1曲目の“Siete Ocho”は当時では珍しい7拍子が使われていてエルビンが変拍子を叩いている貴重なテイクです。

この年より前に5拍子の“Take Five”が発表されて大ヒットしていますが、プレイヤーみんながもっと自由に変拍子を演奏しているのはこのアンドリュー・ヒルのアルバムだと思います。

エルビンのソロパート以外はコルトレーンの時のような爆発するスタイルを取っていません。

むしろバランスよくアンサンブルを創っています。

なのでベースのリチャード・デイビスが自由になるためにサポートに回ることがありますね。

そしてなにより拍間を感じさせないエルビンのリズムがアンドリュー・ヒルのこのアルバムのコンセプトにマッチしています。

いろいろ曲の演奏の仕方を試行錯誤したりハーモニーの感じが現代にまでつながる音楽なので必聴です。

ウエイン・ショーター「Speak No Evil」(1964年)

「Juju」と迷ったのですがトータルでこっちの方がオススメしたいと思いました。

メンバーはウエイン・ショーター(T.sax)、フレディ・ハバード(Trumpet)、ハービー・ハンコック(Piano)、ロン・カーター(Bass)、エルビン・ジョーンズ(Drums)です。

同時期に活躍していたマイルスバンドのドラマー、トニー・ウイリアムスからエルビンに変わったらという目線で見ると興味をそそるアルバムですね。

このアルバムは音質もよくてバンド全体のサウンドがとても気持ちいいです。

そしてエルビンのプッシュの仕方がハッキリしています。

うねるグルーヴだと全体的にごちゃっとしちゃうんはずなんですが、ここではバンドとしてスッキリ聴こえるようにうまくバランスがとれいています。

アルバムとしても名盤なのでこれもぜひ聴いておきたいアルバムです。

■マッコイ・タイナー「The Real McCoy」(1967年)

コルトレーンバンドで一緒に演奏していたピアニスト、マッコイ・タイナーがリーダーのアルバムです。

メンバーはジョー・ヘンダーソン(T.Sax)、ロン・カーター(Bass)にマッコイとエルビンのカルテットです。

個人的にロン・カーターとエルビンの組み合わせは、グルーヴ感がとてもスムーズですごく気持ちいいコンビです。

エルビンのシンバルのグルーヴ感はベーシストに左右される感じがするので、ベースがいるときと抜けたときとではグルーヴの印象が違います。

なので音に弾力があってグルーヴ感がスムーズなロン・カーターは相性が良かったのかもしれませんね。

そこにプラスしてクリエイティブなベースラインを弾くのでエルビンもそれに触発されて常に新鮮な音楽に聞こえます。

アルバムとしてはハードバップな曲の感じが多いですがとても熱い演奏と美しい曲がバランスよく組み込まれています。

エルビンジョーンズのオススメアルバム(後期)

■レイブラウン「Something for Lester」(1977年)

レイ・ブラウン(Bass)、シダー・ウォルトン(Piano)、エルビン・ジョーンズ(Drums)のピアノトリオです。

シダー・ウォルトンとレイ・ブラウンなのでバンドの雰囲気はすごく王道なサウンドをしています。その中でのエルビンの立ち位置が面白です。

ピアノソロやベースソロはしっかりバックに回っています。

もちろんドラムソロになるとエルビン節は炸裂です。

ただテーマの時や譜面に書いてあるところは感覚でやっているようで、いざみんなで合わせようと思っても合ったり合わなかったりします。それでも音楽として成立しているのでそれがまたいいですね。

■ケニーギャレット「African Exchange Student」(1991年)

マイルスバンドの後期で活躍したケニーギャレットのアルバムです。

全曲に参加しているわけではないですが、ゲストとして5,7,8,10,11曲目にロンカーターとマルグリュー・ミラーと一緒に参加しています。

全体的にアフリカのリズムフィールを重視していて、それにハードバップのようなサウンドをベースにしてる気がします。

それだけ聞くと古くさい重いイメージですが、レコーディングの状態やプレイヤーのフレージングでそうは感じないですね。

ケニー自身もこのアルバムはエルビンがいてこそ成立すると思っていたのではないのでしょうか。

しっかりリーダーの作りたいアルバムのコンセプトとプレイヤーのスタイルががっちり合った素晴らしいアルバムになっています。

■ジョン・マクラフリン「After the Rain」(1995年)

ジョン・マクラフリン(Guitar)、ジョーイ・デフランセスコ(Organ)、エルビン・ジョーンズ(Drums)のトリオです。

レコーディングが90年代なのでサウンドがとても聴きやすいです。マクラフリンもジョーイもアプローチの仕方は今と変わらなく全く古くさい感じがありません。なので昔のハードバップはちょっと聴きにくいなぁと思う方にぜひオススメです。

曲はコルトレーンがやっていたレパートリーをフィーチャーして演奏しているのでエルビンが水を得た魚のようにとてもイキイキしています。それでいてこの新しいサウンドとマッチしているのでエルビンが昔の人というより今の人みたいに身近に感じる個人的一押しアルバムです。

リーダーとしてのオススメアルバム

ここからはまたさかのぼって年代順にリーダーとしての活動をフォーカスしてみましょう。

■「Elvin!」(1961年)

初期の頃のアルバムではこれがオススメです。

メンバーはフランク・ウエス(Flute)、フランク・フォスター(T.Sax)、サド・ジョーンズ(Trumpet)、ハンク・ジョーンズ(Piano)、アート・デイビス(Bass)という豪華6人編成です。

曲のハーモニーのアレンジはメンバーに任せているでしょうが、構成やソロを演奏する順番はエルビンが仕切っています。

2曲目の“Buzz-At“はソロの移り変わりが面白いです。

トランペットとフルートでソロをトレードしながら展開していったり、その後もピアノとベースのソロを交代でやっています。

そして最後においしいところを自分のソロにして持っていくのはリーダーの特権ですね。

バラエティ豊かで楽しいアルバムです。

コードレスのサックストリオに力を入れる

1966年あたりまでは大人数でのリーダーアルバムを出してきましたが、それ以降の数年はコード楽器がいないコードレスの編成でアルバムを出していきます。

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ユニバーサル

中でも下のこのアルバムがオススメです。

■「Puttin’ It Together」(1968年)

ジョー・ファレル(T.Sax)、ジミー・ギャリソン(Bass)のメンバーです。

エルビンの自由なプレイにここまでフィットするプレイヤーがいるのかと驚かされるアルバムです。

ジョー・ファレルのソロにエルビン、ジミーのグルーヴが恐ろしいくらいにぴったり合います。

特に4曲目の“Village Greene”。エルビンだけのソロパートが終わってからのみんなが戻ってくるタイミングが絶妙すぎて、どうやったらそんなに息が合うのか不思議でしかないです。

お互いが音楽の展開の先を感じるままに合わせているのでほぼテレパシー状態という感じでしょうか。ジャズをやっていればこういう感覚が欲しくなりますよね。

リーダーとしてジャズシーンを引っ張っていく

コルトレーンバンドのドラム=エルビンのプレイスタイルでイメージがついてしまい、コルトレーンバンドが終わった後も周りの人からそう思われていたみたいです。

エルビン自身もそれは感じていたのかもしれませんが、これを機に自分はこうなんだということを自ら発信していくかのように自身のバンドに力を入れていきます。

■「Merry-Go-Round」(1971年)

これこそコルトレーンのときと全く違ったエルビンのイメージです。

メンバーもデイヴ・リーブマン(Sax)、スティーブ・グロスマン(Sax)、チック・コリア(Piano)など当時のいい若手ミュージシャンが入ることによってかなりフレッシュなサウンドになっています。

曲もどれも華やかでアルバム全体明るいイメージですね。

エルビンらしさは変わらないですが曲や周りのミュージシャンと調和が取れるように演奏をコントロールしています。

■「Earth Jones」(1982年)

日野皓正(Trumpet)、デイヴ・リーブマン(Sax)、ケニー・カークランド(Piano)、ジョージ・ムラーツ(Bass)のメンバーです。

波に乗っているメンバーなのでとてもエネルギッシュで洗練された演奏です。

アルバムとは違う話ですが、このアルバムの一曲目の“Three Card Molly”は有名でyoutubeでもエルビンがどういう風にソロをするのかこの曲を使って説明している動画があります。

動画ではメロディを理解して叩けるようにしてそこからアイデアを発展させるということを説明して叩いています。

ぜひ曲を聞いてからこの動画を見てみてください。エルビンの独特のリズムの歌い方が感じ取れると思います。

コルトレーンのトリビュートアルバム

■「Live In Japan 1978: Dear John C.」(1978年)

■「Tribute to John Coltrane “A Love Supreme”」(1992年)

このアルバムは本当にいいです。ですがかなり貴重なCDらしく今は手に入りづらいようですね。

メンバーはウイントン・マルサリス(Trumpet)、マーカス・ロバーツ(Piano)、レジナルド・ヴィール(Bass)のメンバーで来日したときのレコーディングアルバムです。

コルトレーンの大作”A Love Supreme”を熱演しているのですが、この時のウイントンがキレキレで観客の雄叫びが聞こえるくらい盛り上がっています。

エルビン自身ももちろん迫るようなプレイとベテランのオーラで凄腕のメンバーをまとめています。

このアルバムの3曲目に入っているバースデーソングはエルビンの奥さん、ケイコさんに頼まれて演奏している気がします。

なのでちょっとこの曲だけテイストが違いますが会場の熱量が伝わってくる良いアルバムです。

気になる方は頑張って入手しましょう! それだけの価値があります。

ユニークなアルバムと活動

最後に人間味があってやっぱりエルビンはいいなと思ったものを紹介します。

■「Together!」(1961年)

名ドラマーフィリー・ジョー・ジョーンズと共作でのアルバムです。

2台ドラムがあるとドラムバトルのイメージが強いですね。ここではソロをお互い順番にとったり一緒に叩きながら伴奏したりしています。

フィリーのほうがキレがあるので、ここでのドラム対決はどうしてもテクニックがあるフィリーの方がよく聴こえてしまいます。

力関係もフィリーがあるように聴こえてしまいますね。コンセプトが面白いアルバムではあるんですが個人的にエルビンが残念に聴こえてしまうアルバムです。

ですがエルビンもそういう時代もあったんだと個人的に励まされたアルバムです。

そこから10年後の1971年には映画俳優としても1度出演しました。

 

どういう映画かは観たことないですがエルビンがアクションをやっている貴重な映像ですね。

ちなみに私生活では奥さんのケイコさんが近くにいないとパニックに状態になるくらい頼りにしていたそうです。演奏は完璧ですがこういう一面を見るとエルビンも人の子なんだなと親近感がわきますね。



ABOUTこの記事をかいた人

野澤 宏信

野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。