ハードバップジャズを知るための代表的なプレイヤーとアルバム

※記事の中にアフィリエイト広告を利用しています。

こんにちは、野澤です。8月も後半にさしかかりましたがまだまだ暑い日が続きますね。

個人的ですが新しくブログを始めました。前に運営していた自身のサイトがなぜか使えなくなったのでこっちに私のライブ情報などを載せていこうと思います。

https://ameblo.jp/nozawadrums/

よければ覗いてブックマークよろしくお願いします。

さて今回はハードバップ特集です。

ハードバップとは?

1940年代のビバップが発展してきてその次に派生した1950年代半ばのジャズのことをハードバップと呼びます。

ドラマーのアート・ブレイキーが取り入れたアフリカのラテンのグルーヴ、ピアニストのホレス・シルバーが取り入れたブルージーな音使いだったり、ファンキーなサウンドがハードバップと呼ばれる発端となります。

そのためアート・ブレイキーとホレス・シルバーが結成したバンド、Art Blakey And The Jazz Messengersのバンドサウンドこそがハードバップのモデルと言えるでしょう。

バンドに続々と加入してくるケニー・ドーハム、フレディー・ハバード、ハンク・モブレー、ボビー・ティモンズなどの作曲もまさしくザ・ハードバップという感じです。

ビバップとハードバップの違い

こう言われてもビバップとハードバップがどう違うのかわかりにくいかもしれません。私も最初ジャズを聴き始めた頃はその2つがどう違うのかわかりませんでした。

なのである程度ビバップについて少し知っておくとハードバップとの違いを比較できるので少しビバップを紹介しておきましょう。軽くビバップについて触れた記事があるのでまずはこちらをご覧ください。

ビバップを代表するプレイヤーといえばアルトサックスのチャーリー・パーカー、トランペットのディジー・ガレスピー、ピアノのバド・パウエルなどが挙がります。

彼らの曲をよく聴くとコードチェンジが目まぐるしいほどII-Vのコード進行する曲が多く、かつテーマのメロディは歌えるようなものがほとんどです。リズム隊のスイングもさらりとしていて伴奏に徹しているのも感じます。

そして一番はルーツの違いです。ビバップのルーツはビッグバンド、ニューオリンズの音楽、映画音楽です。

ビッグバンド上がりのプレイヤーやニューオリンズジャズプレイヤーのやっている音楽が混ざってできた音楽なので鮮やかなサウンドがしますね。

シネマからジャズに流れてきたジャズナンバーも多く”There Will Never Bee Another You”や”Days Of Wine And Roses”は映画音楽からジャズスタンダードになった代表的な曲です。どの曲も歌のようにメロディックでポップな部分が感じられます。

ハードバップのルーツはソウル、R&B、ゴスペルミュージックなど黒人の音楽がルーツとなっています。もちろんそれがビバップと融合するような形になっているので見分けるのは難しいかもしれません。

ここにビバップの代表曲とそれを演奏しているプレイヤーを挙げておくのでまずは聴いてみてください。

  • Confirmation (Charlie Parker)
  • Scrap From The Apple (Charlie Parker)
  • Take The A Train (Duke Ellington)
  • All The Things You Are(Bud Powell)

そしてビバップは楽器のテクニックを追求する側面もありました。1小節の間にどれだけの音数を並べられるか競うようなアスリート的な面もビバップの美学の一つです。パーカーもディジーもバドももれなくそういうプレイヤーに当てはまります。

この楽器のテクニックの進化の先がハードバップへとつながっていきます。今度は楽器のテクニックが上がると音楽理論の知識が高まりジャズマンそれぞれのオリジナリティが出てくるようになりました。

そしてそこに黒人プレイヤーが生み出すグルーヴやファンキーさが混じり独特なサウンド、これがハードバップと呼ばれるジャズになっていきます。

音の熱量が違ったりコード進行もより複雑になったりII-Vフレーズをあえて使わなかったりするので初期のビバップのサウンドと1960年代のハードバップと聴き比べると全く違うサウンドになっていると思います。

とはいえどこかのタイミングでビバップからハードバップへガラッと変わるわけではなく徐々にビバップが進化を遂げてハードバップへと進んできました。

その過程の中でターニングポイントのきっかけになったアルバムもあります。ハードバップを代表するミュージシャンと共にアルバムを一緒にご紹介していきますので音楽とセットで読んでもらうといいかもしれません。

よりビバップとハードバップの違いが納得できると思うのでぜひYoutubeやストリーミングサービスを活用しながらご参照ください。もちろん気に入ったらCDをご購入ください。

ハードバップを代表するミュージシャン

アート・ブレイキー(drums)

ビバップ時代も活躍していましたがハードバップ時代が自身のバンドで輝いていました。モーニンも代表的なアルバムですが”チュニジアの夜”もかなりハードバップを代表するアルバムとも言えます。

アート・ブレイキーは作曲をしないのでどちらかといえばメンバーの曲がハードバップの味を出していますがソウルやグルーヴ的な面ではアートブレイキーのプレイはかなりハードバップを感じます。

created by Rinker
ユニバーサル

ホレス・シルバー(Piano)

ジャズメッセンジャーズをブレイキーと一緒に立ち上げたピアニストです。

とはいえ数回でホレスはジャズメッセンジャーズを去ってしまうのですがその後は自身のバンドでハードバップの演奏を中心に活動します。

曲のテーマでもソロでもブルージーなサウンド、リズミックなフレーズで魅せてくれるのですがよく聴くとメロディの作りはとてもシンプルです。

シンプルすぎて一歩間違うと初心者のようなフレーズもたまにあったりするのですがそこはホレスの音楽性と音色で見事にカッコよく聞こえます。

created by Rinker
ユニバーサル

フレディー・ハバード(Trumpet)

1960年代以降に活躍したトランペッターでスタイリッシュでカッコいいハードバップジャズをプレイします。個人的には曲もプレイもかなり好きです。

最初のリーダーアルバムの「Open Sesame」の”Open Sesame”や”Hubs Nub”はビバップとは一味違うハードバップを感じるようなメロディラインとコード進行になってますね。

リー・モーガン(Trumpet)

リー・モーガンといえばアートブレイキー&ジャズメッセンジャーズでの活躍が世の中的には認知されていますがリー・モーガンのリーダーとして有名なのがアルバム「Side Winder」でしょう。

ビバップの頃にはなかったイーブンのリズムが取り入れられて世に広まったのがこのアルバムのタイトルチューンになる”Side Winder”でした。

相当売れて大流行したのでこぞって他のプレイヤーもイーブンのリズムでファンキーな要素を曲に取り入れていきました。まさにハードバップの金字塔になるアルバムです。

ジョン・コルトレーン(T.Sax)

コルトレーンの初期はハードバップを感じるアルバムが多いですがこのアルバム「 Blue Train」はハードバップを感じるサウンドに仕上がっています。

“Locomotion”はもろにハードバップなテーマのメロディです。”Moment’s Notice”や”Lazy Bird”もハードバップ時代を代表するスタンダードナンバーとなり今でもジャムセッションでやります。

メンバーを見ても鉄壁のフィリー・ジョー・ジョーンズ、ポール・チェンバースにハードバップを代表するリー・モーガン、カーティスフラーがアルバムに参加しています。

ケニー・ドーハム(Trumpet)

ラテンのリズムを積極的に取り入れてハードバップをさらに発展させていきました。

「Una Mas」はハードバップ時代を象徴するアルバムですね。ファンキーなリズムとメロディはビバップと違うのは明らかです。

“Una Mas”のテーマの最後のほうの8分音符の短く吹くメロディなんかは個人的にハードバップを感じます。このアルバムに参加しているテナーのジョー・ヘンダーソンもケニー・ドーハムの作曲法に影響を受けていると思います。

ジョー・ヘンダーソン(T.Sax)

ハードバップの後期を代表するプレイヤーです。ここでは2枚アルバムをご紹介します。

まずは「Page One」から”Jinrikisya”。日本の人力車からそのままタイトルをつけました。スイングの曲なのにテーマのメロディが均等に8分で弾くとろこが印象的です。

他にも”Blue Bossa”や”Recorder Me”ではブラジルのリズムを取り入れたり”Out Of The Night”でのファンキーな感じはハードバップ的です。

もう一つのアルバムは「In ‘n Out」です。”Serenity”や”Punjab”はコード進行やテーマの小節数が複雑で理論に基づいたような曲の作りになっています。

よりミュージシャンが好むジャズになってきたので一般的には難しいアルバムとされていますが個人的にはこれがハードバップの完成系の一つだと思います。

現にウィントン・マルサリスがジャズをリバイバルをした時の演奏を聴くとジョー・ヘンダーソンのエッセンスを割と感じますね。

ちょっとマニアックになってしまいますがコアなハードバップ聴くならジョー・ヘンダーソンだと思います。

created by Rinker
ユニバーサル

ジャッキー・マクリーン(A.Sax)

ジャッキー・マクリーンは高音でのフレーズがトレードマークです。この高い音でブルーノートフレーズやブリっとしたファンキーな音を出してくる感じがいいですね。

1963年に出したアルバム「Vertigo」ではケニー・ドーハムとの2フロントでソニー・クラーク、ブッチー・ウォーレン、トニー・ウィリアムスのリズムセクションになっています。メンバーを見るとトニーは若めですが、どのプレイヤーもハードバップど真ん中を生きたプレイヤーです。

どの曲もハードバップを感じれるオリジナル曲になっています。2曲目のイーブンの曲もファンキーでブルージーな要素がありますね。そしてトニーのプレイも洗練されているのも相まってかっこよく仕上がっています。

ベニー・ゴルソン(T.sax)

現代にまで受け継がれるような名曲を生み出してきたプレイヤーです。”Stable Mates”や”Whisper Not”に”Killer Joe”など多くの名曲が今でもセッションで演奏されます。

ビバップとは違ったアプローチで演奏ができるので理由でしょう。

デクスターは渋い音をしていますがエレガントな感じもする音色が魅力的です。

吹きまくってもオーバーブローというわけではなく楽器が綺麗になってくれる範囲で吹いているのでとてもジェントルな感じがしますね。

ベニー・ゴルソンを通らずに今のジャズを語ることはできないと思います。

ソニー・クラーク(Piano)

ハードバップを語る上ではどうしても管楽器がメインになってしまいますがソニー・クラークもハードバップを創ったプレイヤーです。

プレイはビバップ的なアプローチがベースですがファンキーなハードバップのフレーズも時折混ぜて使います。

アルバム「Sonny’s Crib」ではビバップ的なスタンダードが前半3曲収録されていますが、4曲目の”Sonny’s Crib”から少しアルバムのカラーが変わってファンキーなメロディラインを使った曲やラテンのリズムが入った曲などハードバップらしさが入った曲もあります。

現代でハードバップを演奏するプレイヤー

最近のジャズはヒップホップやラップ、はたまたクラシック音楽のようなジャンルが混ざるようになりバップ1本に絞って活動しているミュージシャンは少なくなりました。

ですがジャズを演奏するにはバップを通らずにはいられません。根本ではバップが好きで演奏しているミュージシャンは割といるので数人ご紹介したいと思います。

ピーター・バーンスタイン(Guitar)

ニューヨークで活動するギタリストです。カッコいいギタリストはたくさんいますがこんなに渋くていい音が出せるのはピーター・バーンスタインのほかにほとんどいないでしょう。

created by Rinker
Criss Cross Jazz

サリバン・フォートナー(Piano)

プレイを聴くとバップ全盛期に活躍したセロニアス・モンクやレッド・ガーランドなどのリスペクトを感じるプレイスタイルで本当にトラディショナルなジャズが好きなんだなと思うプレイヤーです。

コンテンポラリーなアプローチもしますがアルバムではバップを取り入れた曲も多く個人的にはお気に入りのプレイヤーです。

ベニー・べナック(Trumpet)

ユリシス・オーエンス(Drums)

この2人は趣味がよく合うのかニューセンチュリーのバンドでも一緒に活動していますし最近ユリシスが力を入れているバンドGeneration Yでも一緒に活動しています。

どのバンドもトラディショナルに重きを置いていてこの演奏なんかはまさにハードバップをリバイバルした感じになっていますね。曲はウェインショーターの”One By One”ですがアートブレイキー&ジャズメッセンジャーズのバージョンをかなり意識した演奏内容になっています。

という感じで今回はハードバップを特集しました。

今回ピックアップしたアルバムを一通りざっと聴いてからチャーリー・パーカーやバド・パウエルとかを聴くとビバップとハードバップの違いがなんとなく感じてもらえると思います。

ファンキーさだったりイーブン、ラテンのフィールなどハードバップを感じるなどそういう要素は聴かないとわからりません。百聞は一見にしかずという言葉がしっくりくるくらい文字で説明するのは難しいのでまずは今回のおすすめアルバムを聴いてみてください。



ABOUTこの記事をかいた人

アバター画像

野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。