JAZZギターフルアコ列伝

ようやく第3回の連載にこぎつけました。

一応、僕の書く記事はJAZZ初心者向けということになっているので、JAZZファンから見れば何を今更、なんて思うかもしれませんが、良かったら最後までお付き合いください。

今回は長め。

JAZZギター フルアコ、セミアコ、ソリッド問題

今日はJAZZギターについてのお話。

昔パンクバンドを組んでいたことなんかもあって、ロック系ギタリスト(プロ、アマ問わず)の方とお話しをします。

その際「ジャズギタリストって、フルアコばっかりなんでしょ?」と聞かれます。

フルアコ、というのはフルアコースティックギターの略称です。

これはエレキギターの構造の名称で、エレキギターに限ってお話しをすると、おおざっぱに…

・フルアコースティックギター(ボディが空洞)
・セミアコースティックギター(ボディは空洞だけど芯柱のようにブロックが入っている)
・ソリッドギター(木が詰まった空洞なしの構造)

の3種類に大別されます。

まあ、ほかにもこまかな構造の違いなんかはあるんですが、マニアックすぎる話になってしまいますので割愛。

よくロックバンドで使用されるのはソリッドか、その次に記載したセミアコースティックギターです。

これはロックでよく聞くひずませた音、ディストーションサウンドがギターの空洞内で反響することで、ハウリングを起こしやすくなるため、という呪文のような言葉だと難しいので、ロックくらい大きい音だと、フルアコの場合ノイズが入ることがあるため、と簡単に言っておきます。

実際、元ニルヴァーナのドラマー(今やそう言わなくてもいいくらいかな)、デイブ・グロールのハードロックバンド、フー・ファイターズなんかは、あんな大きな音でもフルアコ使っていましたので、大丈夫っちゃ大丈夫なんですが。

で、さきほどのJAZZはフルアコか、というトピックです。

そう言われると、そうじゃないようなそうであるような、曖昧な答えになってしまいます。

確かにフルアコ使用のJAZZギタリストは多いのですが、一概にそうとも言えず。確かに多いことは多いです。

それは、音質のためにフルアコにしているということが挙げられます。

フルアコ使用のJAZZギタリストが多い訳

なぜ音質のためにフルアコにすることが多いかを説明するためには、JAZZギター以外の楽器に言及しなければいけません。

この辺は結構単純で、周りの楽器がアコースティックな楽器だから、です。

一説にはニューオーリンズで、ブラスバンド(金管楽器であるトランペットなどや打楽器などを中心に演奏する楽団)が捨てていった楽器を黒人奴隷達が拾い、クレオール達が整えていったのが始まりとも言われているJAZZ(今回は話を複雑にしないため、イスラム系宗教音楽やカリブ海での、スケールやリズムの複合などの話は抜きにして。それにしても正しいところは分かっていません)。

それは1900年ごろのことではないかと言われています。

エジソンが円筒型のレコードであるフォノグラフを開発したのが1877年、円盤型のレコードはその10年後に開発されたものですから、当時の音楽系技術力は推して計るべし。

つまり、楽器は全て電子機器の組み込まれていない、アコースティックなものでした。

そして現在、JAZZでよく使用する楽器はどのように変化しているか。実は、そんなには変わっていません。

JAZZ誕生(正確には分かっていませんが)から100年以上経っているのにほとんど変わっていないというのもすごいことですが、ギターだけ近代的なギュワンギュワンひずませたものにすると、ギターの音色だけが浮いてしまう。そんな思いもあってアコースティックな音を出しやすい、古い構造を持つフルアコ、が重宝される訳です(もちろん、エフェクターを駆使したり、フェンダーローズピアノなんかで全楽器エレクトリックにしているバンドもありますが)。

なんでギターだけそんな気をつかわなければいけないのか。

その理由はJAZZ誕生時に、ギターはアドリブソロなんかをとることがなく、言い方を悪くすれば、脇役としてとらえられていたからです。

今のJAZZギターのようにシングルトーンで音数多く演奏するのは、JAZZ誕生から少し経ってのことなんです。

JAZZギターソロとギター構造の変遷

JAZZギターでアドリブソロをとることを世に知らしめたのは、1930年代に活躍した、チャーリークリスチャンという黒人ギタリストでした(それ以前にもエレクトリックギターを取り入れたギタリストは存在しました)。

ここからも分かる通り、JAZZ誕生が1900年ごろだとすると、30年ほど時間が経過しています。

これは、ギターという楽器の特性に影響されたためです。

チャーリー・クリスチャンの現役生活はごくわずかの時期。

1930年代〜42年まで。残念ながら20歳前半という若さで亡くなってしまいますが、亡くなるまでのこの時代、流行っていたJAZZのスタイルはスイング。

つまり、大人数(ビッグバンド)による演奏だったんです。

彼が活躍するまでのギターといえば、大半は電気的構造なしに、ギター内部の反響板とホロウ構造と呼ばれる空洞で音を大きくして、サウンドホール、ボディの真ん中に空いている穴から音を出していました(エレキギターの開発自体は1900年代初頭には既に実施されていました。

そのため、JAZZにおいて一般に普及するまでという意味において。

なにせ彼が手にしたエレクトリックギター【ギブソン社発のエレクトリックギター】は、それまでのラインナップにあったアコースティックギターに、同じく既にラインナップにあったハワイアンギターのピックアップを搭載したものだったので)。

そしてビッグバンドの演奏といえば、トランペット4本にトロンボーン3本、テナーサックスにアルトサックスが3本ずつ、のような編成で、とにかく音がでかい。

そこでさきほどのような構造のギターが1本1本弦をつまびいても全然聞こえない…。

そのために、四つ切り、と呼ばれるジャカジャカとかき鳴らすような演奏方法が一般的とされていました。

こうすると、現在で言う所のギターソロなんていうものは編成上ほぼない訳ですが、エレキギターのメジャー化で状況は一変します。

ギターのピックアップで弦の振動を電気信号に変換し、アンプで増幅・加工したものをキャビネットなどと呼ばれるスピーカーから出す、これにより1本1本の弦の音もしっかり聞こえるようになりました。

ここですごくかっこいいアドリブソロを演奏したのが、前述のチャーリー・クリスチャンです。当時のギタリストは驚いたでしょう。

なにせ、それまでのギターの演奏とは一線を画す、初めて見るような演奏スタイルだったんですから。

現在でも当時の演奏を聴くことができます。楽しそうで軽快なアドリブソロ。ビバップが流布する直前に、既に同じよう名スタイルを駆使する姿は、鮮烈だったでしょう。

そんなこんなで、JAZZの歴史において比較的後発組であるギター勢は、他の楽器に合わせてアコースティックに寄る、という巷間の風潮があるわけです。

例外もあり

が、全くもってアコースティックに寄らないJAZZギタリストが、1980年代くらいから登場します。そのうちの1人をご紹介しましょう。

北欧出身のギタリスト、ウルフ・ワケーニウスです(ジョンスコじゃないの〜というJAZZファンの声が聞こえましたが、今回はこの人を紹介します)。

数々のレジェンド級JAZZミュージシャンと競演した彼。

彼がよく使用している楽器は、なんとソリッドギター(レスポールタイプ)です。

しかも、ARIA製の入門用ギター。1万円くらいで買ったとか…。

彼は晩年のオスカーピーターソン(ロックで言えばガンズアンドローゼズみたいな人、だと思う、多分…)のバンド参加時にもこのギターで演奏していました。

こちらは音源だけではなく、DVDデ映像にも残されているので、是非ご覧いただきたい。

ちょっとぼろくて、オスピーのバンドでそんなギターを…なんて思われるのですが、美しい旋律を奏で、バラードなんて、その音の美しさに鳥肌が…。

初めて見聞きしたときは驚いたものです。

こんな人もいますので、JAZZギターはフルアコ、と言われるとうーん、とうなってしまうんですね。

大体、ウルフワケーニウスも使っているとご紹介したレスポールタイプのギター。

ハードロックの代名詞みたいな使い方されていますが、実際は…

レス・ポールさんというJAZZやカントリーを演奏していたギタリストのシグネイチャーモデルです。

これ結構知らない人いるんですよ。あのギター、元々はJAZZなんかに適したもんとして発売されている訳です。

レス・ポールさんはレコードの回転速度を早くした演奏をしたり、なかなか実験的音楽が好きな人だったようです。

90歳を超えても現役で演奏していたというのですから、ギター界に与えた影響は限りなく大きいと言えるでしょう。

長々と語ってきましたが、JAZZギターで使っていいギター、なんてものはないということです。

パット・メセニーはソリッドとフルアコを使い分けていますし、ジョン・スコフィールドなんて周りがアコースティックな楽器でもガンガンにひずませてきますからね。

近代ギタリストの雄、ジュリアン・レイジなんて、この前公開した映像で、テレキャスでクリーントーンを出していました。

ここまで時代が進めば、周りに合わせてフルアコ、なんて選択肢ではなく、好きなギターを使用してOKでしょう。

近年では、ライブハウスに行くとギブソンのSG(AC/DCのアンガス・ヤングが使用していたギターの種類)なんかでスタンダード演奏している人もいます。

まあ、古いバンマスを相手にするとフルアコじゃないの? なんて言われるかもしれませんが、そんなときはウルフ・ワケーニウスの話でもしてみたらどうでしょうか。

それにしても、JAZZの歴史って本当、いろんな要素が絡んでいます。そこが面白いとこではあるんですが。次回はジプシージャズというものについてお話ししようかなと思っています。それではまた、次回。



ABOUTこの記事をかいた人

マイク松田

JAZZ大好きなアラサーおっさん。FM小田原にて毎週火曜 夜7時から1時間のJAZZ専門ラジオ番組「JAZZ ROOM」を放送中。え、ポッドキャストじゃありませんよ、地上波ですよ地上波。