ジャズドラムで聴くべき55人のプレイヤー

もう年の瀬ですね。今年最後は世界で活躍した、そして今でもしているジャズドラマーをたくさんご紹介していきたいと思います。

以前おすすめドラマーをご紹介したこともありますが、今回はもっと拡大して隅から隅までいいドラマーをピックアップしていきますので最後までご覧ください。

プレイヤーが変わることで広がるジャズの楽しさ

同じジャズスタンダードを演奏してもプレイヤー次第で曲やアンサンブルのアプローチが変わります。

ドラムにおいて特に注目したいのは、

  1. シンバルの4ビート
  2. コンピング
  3. 音質、音色
  4. グルーヴ、タイム感
  5. フレージング

の5つ。

シンバルの4ビート

ジャズドラムの醍醐味といえばシンバルの4ビートです。

これなくしてジャズは演奏できないので、このシンバルのビートをどう気持ちよく聴かせるのかがポイントです。

しっかりソリッドに叩く人もいればしなやかに流れるビートを叩く人もいます。

このシンバルビートはシグネチャーと呼ばれることもあるのである意味その人自身を表すものです。

コンピング

コンピングに関してもやり方がそれぞれあります。

ある程度の決まったフレーズはありますが、8分系でいくのか3連系でいくのか。スネアだけでコンピングするのか、バスドラも入れてコンピングするのか、それに加えてハイハット(左足)でコンピングを入れるのかなどアプローチの仕方はさまざまです。

時代によってコンピングの仕方も変化してきていますので今回はそれにも触れながらご紹介できたらと思います。

音質、音色

シンバルのビートの次にその人の特徴がわかりやすいものは音質、音色ですね。

単純にきれいとかではなく、その人が出す音=ボイスという概念をジャズミュージシャンは持っています。

そのため自分が出す音の質にはかなりこだわっていると思います。

今から挙げる大半のミュージシャンは音色のコントロールや音質を自分独自のものに仕上げています。

グルーブ、タイム感

グルーヴやタイム感も人それぞれです。

ドラムは両手両足で叩く楽器ですが、上半身でグルーヴをとるか下半身でグルーヴを取るかで分かれてきます。

生粋のジャズマンは上半身でグルーヴを出している人が多いですが、8ビートやフュージョンを通っているドラマーなどは下半身でグルーヴを出している人が多かったりします。

これも好みが分かれそうですね。

それとリズムにきっちり正確な人もいれば音楽の雰囲気でテンポが速くなってもオッケーという人もいます。

基本音楽的であればみんなオッケーと思っているでしょうがテンポ感に関しての価値観も様々です。

フレージング

フレージングとはその人が叩くフレーズのことです。

この人だったらソロでこういうフレーズを叩く”クセ”みたいなのが誰しもあったりするのでカッコいいフレーズがあればみんな真似する傾向があります。

そういうのをリックと呼びますがどの時代にも存在するようです。

ある意味それが伝統となっていってジャズを築いてきているところもあるのでその人のフレージングを研究して自分に取り入れるのもいい練習になると思います。

前置きが長くなりましたがこういう観点を頭に入れたうえで今から紹介していくドラマーを見てみると面白いと思います。それでは時代ごとにまとめて名プレイヤーをどんどん見ていきましょう。

ビッグバンドやジャズが始まった時代の名プレイヤー

ケニー・クラーク

ジャズが広まった時の初期のドラマーですがかなり画期的なことをやっていました。

普通はスネアでコンピングを入れるのにケニー・クラークはバスドラムでもコンピングをやったり、ライドシンバルを刻むときに2、4拍目に入れる左足のハイハットをあえて入れなかったりとジャズドラムで常識となるようなことをあえて外してきたりしました。

ビバップが始まった頃に活躍したドラマーで、主にチャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピー、マイルス・デイビスなどのプレイヤーと関わってきました。MJQ(モダンジャズカルテット)の初期メンバーでもあります。

オススメアルバム:

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コロムビアミュージックエンタテインメント

コニー・ケイ

コニー・ケイもMJQのメンバーで、ケニー・クラークの後に引き継いだドラマーです。

レスター・ヤングやキャノンボール・アダレイ、チェット・ベイカーなどの多数の名プレイヤーたちと活動してきました。

オススメアルバム:

チコ・ハミルトン

ルイ・アームストロング、レスター・ヤング、ジェリー・マリガン、デューク・エリントンなどレジェンドのミュージシャンと共演してジャズを築いてきたドラマーです。

ちょっと昔は私がジャズを学んでいたニュースクールの先生でもありました。

一度学校で生の演奏を聴いたことがあるのですが、出す音全てから「これがジャズだ」というフィールを感じるのでとても感動したのを覚えています。

 

オススメアルバム:

ジーン・クルーパー

ベニー・グッドマン楽団のドラマーとして有名なドラマーです。日本ではシングシングシングでお馴染みですね。

フレーズは派手な感じはないですが、ニューオリンズジャズをルーツにしているのでスイングのノリは一級品です。

スイングの跳ね方もこの時代のドラマーの中で一番参考になると思います。

オススメアルバム:

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ソニーミュージックエンタテインメント

バディ・リッチ

強烈なスピードとパワーのあるフレージングが特徴の持ち主です。

どんなにドラムを知らなくてもこの人の演奏が人間レベルでないことは一目瞭然です。

ジャズマンというよりエンターテイナーの感じが強いのでクセのある4ビートや音色ではないですが、マシンガンのようなフレーズはかなり特徴的です。

オススメアルバム:

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Blue Note /emi

メル・ルイス

サド・ジョーンズとの共同ビッグバンドで活躍していたドラマーでした。今もヴィレッジヴァンガードオーケストラという名前でバンドは残っています。

バンド自体はオールドスタイルよりコンテンポラリーな感じもあったので曲によって柔軟にカラーを使い分けられるドラマーです。

シンバルの綺麗な音色も今でも受け継がれていて、彼のシグネチャーモデルのシンバルも今でも人気があります。

オススメアルバム:

ルイ・ベルソン

ツーバスをやり始めたドラマーはこの人でした。意外にもジャズドラマーが最初だったんですね。

ドラムソロにかなり特化したプレイヤーなので見たことなければぜひYouTubeで見てみてください。

ビバップ、ハードバップで活躍した名プレイヤー

アート・ブレイキー

強烈なリーダーシップを発揮するドラマーです。

音の意思がものすごく出ているのでソリストをたきつけたり、またはサポートしてあげたり面倒見のいい兄貴みたいな側面も人気の1つかもしれません。

自身のジャズメッセンジャーズというバンドでも活動して、メッセンジャーズに加入したことのあるジャズミュージシャンはほとんが、その後のジャズ界で大きな足跡を残しています。

シンバルの4ビートも強烈ですが、ソロのフレージングはアフリカのリズムを取り入れていてこれもかなり強力なドラムを叩きます。

アート・ブレイキーに関しては別で記事にしているので読んでみてください。

オススメアルバム:

アート・テイラー

個人的にとても大好きなプレイヤーです。

シンバルの4ビートはオントップで叩いていてビートの重心もシンバルに感じられます。いわゆるビバップなドラマーです。

コンピングもいわゆるビバップのドラマーなのでジャズドラムやり始めの人は参考になると思います。

ソロではよくリズムが走りますがそれも音楽的なのと人間的なので好きなドラマーです。

アートテイラーに関しては別記事にて詳しく解説しているのでこちらも参考にしてみてください。

オススメアルバム:

エルビン・ジョーンズ

ジャズの歴史を変えた1人と言えるでしょう。ジョン・コルトレーンのバンドで長く活動していました。

独特のうねるようなグルーヴ感とフレージングが特徴的です。シンバルの4ビートも3連系でリズムを取っていて、それにうまくブレンドするようなコンピングになっています。

ここまで4ビートとコンピングが一つに混ざり合うように叩くドラマーはなかなかいないです。

エルビンについてのさらに詳しい解説はこちら

オススメアルバム:

ジョー・ジョンズ

ビバップ初期に活躍したドラマーです。

注目すべきところはドラムソロ。特徴的なのはスティックだけでなく手でも叩きます。

手で叩くことによって音色が変わるのと音量が抑えられるのでその場の雰囲気(カラー)が変わって聴いてるこっちは耳を澄まして聴きたくなります。

音だけでなく叩き方や顔の表情などもみていると面白いので、YouTubeなどで残っている映像を観るとこのドラマーの魅力がかなり伝わると思います。

オススメアルバム:

ジョー・モレロ

デイヴ・ブルーベックのバンドで活躍して、take fiveを叩いていたドラマーといえば皆さんピンとくるかと思います。

音色やグルーヴ感はとてもスムーズな印象で軽快に音楽の流れを作るドラマーです。

ドラマーとしてもそうですが、指導者としてかなり有名でもあります。

彼が出している教則本「スティックコントロール」やストンキラーという練習法は今でも世界中のドラマーの役に立っていますし、ジャズをやるには彼の教本を使用するのが一番伸びやすいです。

全ドラマーの基礎が底上げされたのは彼のおかげでもあります。

オススメアルバム:

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ソニーミュージックエンタテインメント

 

ジョー・チェンバース

主に1960年代以降に活躍したドラマーの1人です。主な共演者はウエイン・ショーター、フレディー・ハバード、ボビー・ハッチャーソンなど数々の名プレイヤーとハードバップなジャズを演奏していました。

推進力の高い勢いのあるグルーヴが特徴的でソリッドなんですが柔軟性のある音質です。

リーダーアルバムもいいですがサイドで活躍しているアルバムがオススメです。

特にウエイン・ショーターの「ETC」やチック・コリアの「Tone’s For Joan’s Bones」のアルバムではジョー・チェンバースのキャラクターが色濃く出ています。

オススメアルバム:

ジミー・コブ

ジミー・コブもジャズ界にかなり重要なドラマーの1人です。

タイム感がかなりしっかりしていますがかなりオントップでシンバルビートを刻み、安定感のあるグルーヴで叩きます。

無駄なことは一切せずにシンプルなフレーズで音楽をサポートするところが魅力的です。特にマイルス・デイヴィスの「Kind of Blue」でのドラムは最高です。

かなり最年長で今まで健在だったのですが惜しくも2020年今年に亡くなられたのでとても悲しい思いです。。

オススメアルバム:

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Columbia

シェリー・マン

シェリー・マンもシンプルなフレーズで安定したグルーヴを優先するドラマーの1人です。

彼自身のリーダー作もかなりウエストコーストなジャズでとてもクールで聴きやすいですので、オシャレなジャズを聴きたいならシェリー・マン、オススメです。

オススメアルバム:

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Original Jazz Classi

ダニー・リッチモンド

主にチャールス・ミンガスでのバンドで活躍していました。

ミンガスはフリージャズのようなアドリブをみんなで同時に吹いたり、ソロの順番を曲をやっている最中その場で決めたりなど、実験的な演奏を実施する人物でした。

そんな無茶振りにも対応できる柔軟性があったり、ミンガスの音楽をくみ取って実際に表現できる音楽性があったりするのでミンガスバンドを聴く際にはぜひ彼に注目して聴いてください。

オススメアルバム:

トニー・ウイリアムス

1950年代後半に現れた革命児です。彼なしでは今のジャズはなかったと言っても過言ではないでしょう。

16歳の時にはあのマイルスバンドで大活躍しました。マイルスもトニーがいたからここまでの音楽ができたと絶賛するほどです。

プレイスタイルとしてはかなり派手で、飲み込まれるようなシンバルのビートの合間に爆発するかのようなスピード感のあるフレージングが特徴的です。

後期は自分のバンドでフュージョンをやったりロックのようなこともやってどんどん音色が変わっていきましたがプレイスタイルは一貫していました。

トニーに関しても記事を書いているのでまだ見たことない方はこちらから見てみてください。

オススメアルバム:

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ソニーミュージックエンタテインメント

ビリー・ヒギンズ

1960年代以降に活躍したドラマーの1人です。

ビリー・ヒギンズのプレイスタイルはとてもシンプルでかなりスムーズに流れるようなシンバルビートでグルーヴします。

スムーズなんですが一音一音はっきりしていて明確です。

フレーズ自体はコンスタントなのにフリーのような音楽をやっても周りと馴染んでしまう不思議な音楽性を持っているのでこのビリー・ヒギンズも聴き逃せないドラマーです。

オススメアルバム:

フィリー・ジョー・ジョーンズ

ドラマーなら絶対に聴くべきジャズドラマーでしょう。彼もマイルスのバンドでトニーの前に活躍していました。

叩くフレーズがジャズドラムそのものなので彼を研究し尽くすとジャズドラムの本質が見えてくるかもしれません。

私自身もかなりフィリーのコピーをたくさんしました。

シンバルのビートの出し方、3連符のコンピングの入れ方、ソロフレーズで出すクロススティッキングなど、どれをとっても彼の特徴がみれますがそれがもうジャズど真ん中でカッコいいです。

知らなければ本当に今すぐチェックです!

オススメアルバム:

ポール・モチアン

ビル・エバンスのバンドで活躍していたドラマーです。彼のドラミングもかなり独特です。

普段ドラマーは手足バラバラに動かしていますが、この手足4つのリズムを組み合わせて1つにまとまるように考えている人がほとんどです。

ポール・モチアンの場合は手足それぞれが意思を持つ独立型です。手足というよりそれぞれの楽器の音が独立して聴こえるので複数人でドラムを叩いているかのようにも聴こえます。

後期は自身のバンドでエレクトリックビバップというバンドをやっていてそのアルバムも面白いので要チェックです。

オススメアルバム:

マックス・ローチ

ジャズドラムの父のような人です。ビバップ初期に活躍していて、そのころはケニー・クラークかマックス・ローチが1番だろうと言われていました。

チャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピー、マイルス・デイヴィス、クリフォード・ブラウンなどのプレイヤーと数々の名演を残してきました。

彼の特徴的なプレイスタイルとしては歌うようなフレージングです。本当にメロディが聴こえてくるかのようなドラムフレーズなので、テクニカルな面だけでなく音楽的な部分をフレージングから学びたいドラマーです。

マックスローチについても前に書いたことがあるのでこちらも見てみてください。

オススメアルバム:

ロイ・ヘインズ

サイドマンとしてかなり活躍していたドラマーです。今でもご健在で自己のリーダーバンドで活動しています。

プレイスタイルはエルビンと似ていて3連系のグルーヴ感やフレージングが特徴的です。

かっちり安定したプレイというよりは音楽の流れに沿ってシンバルのビートやフレージングが変化するドラマーです。コンピングもバスドラでコンピングするなどその当時にはまだやってなかったアプローチで数々の名演を残しています。

オススメアルバム:

エレクトリック、フュージョン時代に活躍したプレイヤー

アル・フォスター

かなり豪快なドラムを叩くドラマーで、止めどなくどんどん進んでいくようなグルーブを作ります。マイルスのバンドで活躍した後ソニー・ロリンズ、トミー・フラナガン、ケニー・バロンなどの人たちと活躍していきました。

セッティングが特徴的でシンバルの角度がかなり縦に近いです。こうすることによって自分からはアタック音がよく聞こえて他のプレイヤーにもシンバルがかなり聞こえやすくなります。

他にも理由はあるかもしれませんが音色やグルーヴもかなり個性があるドラマーです。

オススメアルバム:

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ソニーミュージックエンタテインメント

スティーヴ・ガッド

ジャズもできますが私としてはフュージョン系のドラマーな感じがします。

Stuffでの活動が一番有名ですね。他にもBBキングやチック・コリアなどのバンドでも活躍していましたしエリック・クラプトンでのドラマーとしても活躍していました。

プレイスタイルとしてはあまり複雑なことをやらずに安定した気持ちいいグルーヴを出し続けるタイプです。重心がシンバルじゃなくバスドラにあるのがやはりフュージョン系のドラマーな感じがしますがかなり安定感のあるドラマーです。

今は自身のバンドにかなり力を入れて活動中です。

オススメアルバム:

ジャック・ディジョネット

初期はかなり荒々しい感じでマイルバンドで活動していました。トニー・ウイリアムスの後にマイルバンドに入ったのでかなり責任重大だったんでしょう。

その後はビル・エバンス、パット・メセニー、ソニー・ロリンズ、マイケル・ブレッカーなど多くのジャズプレイヤーと関わっていきました。

中でもキース・ジャレットでのトリオは有名ですね。

ここではひたすらシンバルでグルーヴを作っていくことがメインですが、たまに爆発する感じがスリリングでバンドに緊張感が出ます。

今はトリオのメンバであるベースのゲイリー・ピーコックが亡くなってキース自身も身体が不自由になってしまいもうあのトリオが聴けなくなるのはとても悲しいですね。。

オススメアルバム:

デイヴ・ウェックル

かなりフュージョンよりなドラマーです。

ドラムセットの仕様がロックに近く、グルーヴの重心がバスドラ寄りなのでジャズのフレーズを叩いていても聴こえ方が違います。

テクニックはピカイチなのでウェックルを目指しているドラマーはかなり多いので聴いたことがなければ必ずチェックしたいドラマーです。

チック・コリアのアコースティックバンドでの活躍が有名でバディ・リッチのトリビュートコンサートの動画もかなり有名です。

オススメアルバム:

ビリー・ハート

ビリー・ハートもマイルスバンドで活躍しました。その後、デイヴ・リーブマン、ロン・マックルーアー、リッチーバ・イラークとのクエストというバンドで活動しています。

生で聴いた時はかなりの爆音でしたがバンドをプッシュする力が物凄いです。

音色はCDの時よりライブで生で聴いたほうがビリーハートの良さ伝わります。 CDだとなぜかあまりよくなく感じてしまう現象が起きるので不思議なところですが生で見ると一音一音の説得力が重いです。

オススメアルバム:

レニー・ホワイト

チック・コリアのリターントゥーフォーエバーで活躍したドラマーです。いわゆるフュージョンドラマーで16ビート系が得意ですがスイング系も得意としています。

音色はシンバルがキンキンして太鼓系がベタっとしていますが70年代を象徴する音色ですね。この当時はトニーもアル・フォスターも割とこういう音色が流行でした。

オススメアルバム:

ピーター・アースキン

ウェザーリポート、ステップスアヘッドなどフュージョンの中でもかなりコアなバンドで活躍していました。4ビートジャズも素晴らしくジョー・ヘンダーソンやボビー・ハッチャーソンなどのプレイヤーとも活動していました。

音色は透き通るような透明感があってグルーヴもスムーズな感じで音楽の土台を作っていきます。昔は結構グイグイでしたが最近は少しグルーヴの重心が後ろになっていてプレイスタイルが変わってきています。

オススメアルバム:

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ソニーミュージックエンタテインメント

現在のベテラン名プレイヤー

グレゴリー・ハッチンソン

ピアニストのベニー・グリーンやジョシュア・レッドマンなど王道なジャズをやりながらも新しいジャズにも対応できるベテランドラマーです。

シンバルの4ビートのグルーヴ感の勢いがかなりあり、グルーヴの重心もシンバルにありますがかなり低めに感じます。

音色やタッチも綺麗なのにダイナミックなので聴いていて爽快があるドラマーです。

オススメアルバム:

ケニー・ワシントン

グレッグの師匠でもあるドラマーでマスタークラスのドラマーです。今もご健在で王道なジャズを得意とするドラマーです。

シンバルのビートの出し方やコンピングにかなり意思がこもっていて一音一音主張が強いので生で聴くと戦車のようなガッチリとしたドラムを叩きます。

ビル・チャラップやトミー・フラナガンなどのプレイヤーとの共演が有名でピアノトリオを得意とします。

ピーター・ワシントンとよくセットで共演する機会が多いのでこの2人がサポートで入っているアルバムやライヴは間違いなしです。

オススメアルバム:

ジェフ・バラード

特殊な叩き方をするドラマーですがグルーヴ感がとても強いドラマーです。

音は鋭い感じですがしなやかな感じもあっていろんなバリエーションの音色を使い分けることもやっています。

他のドラマーも同じことはやっているのですがリズムのグルーヴ感や音色、音量を両手両足全て独立して使い分けているので一人オーケストラみたいに聴こえます。

現在はブラッドメルドートリオのドラマーとして有名です。

サイドマン以外にも自身のバンドではアフリカの音楽をモチーフにドラムだけでなくアフリカ現地の楽器を取り入れたりするなどワールドな幅広い音楽をしています。

オススメアルバム:

ジェフ・ワッツ

トランペットのウイントン・マルサリスやテナーのブランフォード・マルサリスのドラマーとして80年代、90年代以降活躍して今でも現役バリバリのドラマーです。

ワイルドなグルーヴ感や音のスピード感は飛び抜けていてます。プレイスタイルは荒々しい感じもしますがその野性的な感じがジェフ・ワッツのキャラクターになっています。

生粋のジャズドラマーですがビートの重心の取り方がシンバルというよりバスドラや太鼓系にあるように感じられます。

なのでフレーズの感じはジャズですが少しフュージョンのようにも聴こえるドラマーです。

オススメアルバム:

ビル・スチュワート

ジョン・スコフィールドのトリオで長く活躍したドラマーです。

ビル・スチュワートのバックボーンはエルビンやジャック・ディジョネットにあるようで、ビルが新人で出てきた頃はディジョネットのパクリと言われていたそうです。

その後すぐしっかりと自分のプレイスタイルが出ていて特徴的なのはハイハットです。

コンピングとして左足のハイハットを使っているのですが他のプレイヤーにはないアプローチで入れているのでかなり個性的です。

またライドシンバルの音色も工夫していて、グリップを特殊な奏法にしてアタック音がコツコツなるようになっています。

またフレージングも4拍子で5つ割りするようなフレーズを持っていてそこからもこれから活躍するドラマーに影響を与えています。

オススメアルバム:

ブライアン・ブレイド

生ける伝説と呼んでいいほどのドラマーです。

マックス・ローチ、フィリー、トニー、エルビン、ディジョネットと時代を作ったドラマーに並ぶほどのすごいドラマー。

何がすごいのかは生で音楽を聴いたら一発で分かりますがグルーヴ、音色、流れるフレージング全てにおいて完璧です。

ジャズのルーツも大事にしているのでそれをすごく感じますが、決してトラディショナルに寄るのではなくオリジナリティあるドラムを叩きます。

音楽の作り方も全体を考えならプレイしてるのでCDでは流れがスムーズで緻密で計算されたようなプレイをします。

ですがライヴになると感情向きだしでかなりダイナミックな演奏をする時もあるのでそのギャップがすごいです。

オススメアルバム:

現在の中堅名プレイヤー

アントニオ・サンチェス

現在パット・メセニーグループでプレイしているドラマーです。

あのパット・メセニーがかなり信頼してるということなのでテクニックや音楽性ともにお墨付きです。

トラディショナルなジャズというよりは現代のスイングじゃないイーヴンのビートを得意としています。両手両足の独立も長けていて左足で一定のクラーベリズムを刻みながらドラムソロを取るという超人的なテクニックも持っています。

オススメアルバム:

アリ・ホーニグ

変拍子マスターといえばこの人で間違いないでしょう。タイムも意のままですがドラムそのものも意のままに操っていてミスショットするところを見たことがないです。

ケニー・ウィラーやクリス・ポッターのバンドでサイドでの活躍もしてますが、自身でのバンドでの活動が注目です。

曲が途中でコロコロとリズムやテンポが変わっていくように聴こえるアレンジが面白いので変拍子、タイムモジュレーションが気になる方はチェックです。

オススメアルバム:

エリック・ハーランド

ここ15年くらいは超売れっ子ドラマーでジョシュ・アレッドマン、ベティー・カーター、マッコイ・タイナー、カート・ローゼウィンケルのバンドなど多数のミュージシャンと最近のジャズを創ってきました。

シャープで細かいフレーズをたくさん入れるのですがダイナミクスレンジも広いです。生で見ると音量は全然出してないのにバンドを大きく包み込むようなサウンドを出しているのでグリップや音色にもかなり研究している感じです。

最近はジャズ寄りの音楽をしてないですが、エレクトリックや自身のVoyagerというバンドが結構オススメです。1作目のリーダーアルバムは個人的にかなり聴き倒しましたがいつ聴いても飽きないアルバムです。

オススメアルバム:

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Sunnyside Communicat

クインシー・デイヴィス

王道ジャズをいくドラマーです。シンバルの4ビートはオントップでコンピングの仕方もマックス・ローチやフィリー・ジョー・ジョーンズなどトラディショナルなジャズに根ざしています。

トム・ハレルやハンク・ジョーンズなどコンテポラリーやオーソドックスなジャズも対応するドラマーです。

教育にも力を入れていて彼のYouTubeチャンネルの動画はかなりオススメです。

オススメアルバム:

クリス・デイヴ

音のスピード感やグルーヴ感は唯一無二です。

サウンドももちろん独特なんですがこのクリスデイヴサウンドは全世界みんなが真似するようになっています。

ロバート・グラスパーのドラマーであり、自身のバンドでもヒップホップな音楽をやっていますがしっかりジャズにルーツがあるドラマーです。

自身のバンドはかなり実験的で人力DJをやっているかのように演奏している最中にコロコロ曲が変わっていきます。

そのやり方もその場の雰囲気で決めているようなのでオーディエンスの感覚がまだ追いついていない時もありそうです。

オススメアルバム:

クラレン・スペン

マリア・シュナイダー・オーケストラでの活動が有名ですが、小編成でもかなり他のプレイヤーとサウンドが溶け込みます。

グルーヴは少しフワッとしてる印象で重くはないですが、適度なリズムの重心ときらびやかな音色が特徴的です。

自身のリーダーというよりはサイドマンとして活躍しているドラマーで、さっき挙げたマリア・シュナイダー・オーケストラやカミラ・メッザというギター&ボーカリストなどがオススメです。

オススメアルバム:

ケンドリック/スコット

ブルーノート専属ドラマーになってさらに脂が乗ったドラマーです。

シャープかつ太い音が特徴的でスイングをやっても8ビートを叩いても懐が深いグルーヴを出します。

フレージングのアイデアも一貫性のものがあって、何かアイデアが浮かんで自分から提示したフレーズを発展させてソリストのフレーズと絡んでいきます。

楽器の使い方もアイデアに飛んでいてバスドラを2台並べてジャズの時と8ビート物の時と分けたり、左足で踏んでスネアを鳴らせるようにしたりするなど楽器の組み合わせでどれだけ音楽の幅が広げられるかを実験して自分のスタイルに取り入れていっています。

オススメアルバム:

ジャスティン・ブラウン

アンブローズ・アキンムシレイのバンドやジェラルド・クレイトンのドラマーとして出てきて今はサンダーキャットやカマシ・ワシントンのバンドなど、エレクトリックな音楽でも活躍しています。

パワーとスピード両方兼ね備えていて、黒人のゴスペルに通じるドラムを叩きます。

なのでジャズのサウンドはしているのですがジャズフレーズというよりドラマー的なゴスペルチョップス的なフレーズが耳に入りやすいです。

オススメアルバム:

ジャスティン・フォークナー

このドラマーのデビューはブランフォード・マルサリスのバンドでした。

前ドラマーのジェフ・ワッツの後釜なんですが20歳前後での加入だったのでかなりの大抜擢な印象でした。

ジェフ・ワッツとはまた違った荒々しくも洗練されている感じが現代な感じがします。

フレーズ感やスイング感はトラディショナルな感じですが、リズムの重心はビバップドラマーよりもっと深い感じがして音に立体感があります。

オススメアルバム:

ナシート・ウエイツ

ナシートはかなり独特なビートを出すのですがどちらかというとビートに重さがあまりないタイプのドラマーです。

ですがそのおかげでみんなで音楽の流れを作るようなインタープレイをコンセプトとするドラマーでもあります。

そう言えるのが彼の参加しているジェイソン・モランのバンドでしょう。音楽の展開がとても速くてアンサンブルの流れがかなりスムーズです。

オススメアルバム:

ネイト・ウッド

スイングより8ビート系の音楽を得意とします。いろんな民族楽器をドラムセットの上に置いて音色を変えたり、細かいリズムを刻みながらも大きいパルスでグルーヴさせるドラマーです。

このドラマーのなにがすごいかというと、ドラムを叩きながらベースとボーカルまでやってしまいます。1人でできるからこそ彼の表現したい音楽がダイレクトに伝わるのでかなり面白いです。

オススメアルバム:

ヘンリー・コール

個人的に超オススメドラマーです。プエルトリコ出身なので南米系の音楽を得意とするドラマーですが最近のコンテンポラリージャズにもかなりフィットする感じのドラムを叩きます。

音色はかなりクリスピーでシングルストロークで攻めるフレージングもかなり気持ちいいです。

今はミゲル・ゼノンのバンドで活躍中です。

オススメアルバム:

マーカス・ギルモア

ロイ・ヘインズの孫のマーカス・ギルモア、近くにすごい人がいるのに独学でドラムを学び今や一番活躍しているドラマーです。

今はチック・コリア、マーク・ターナー、クリス・ポッター、テイラー・マックファーリン、ヴィジェイ・アイヤーなど、かなり多数のバンドで活躍しています。

フワフワしたグルーヴ感に聴こえますが、しっかりボトムがあってリズムのパルスがかなり正確です。音色も心地よくなだれ込むようなフレージングがクセになります。

オススメアルバム:

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Jazz Village/harmoni

マーク・ジュリアナ

マーク・ジュリアナも8系に強いドラマーですが、元はアヴィシャイ・コーエンのバンドで出てきたドラマーなのでかなりアコースティックなサウンドも作れます。

なのでエレクトロみたいな音楽をやることもあればもっとアコースティックに寄った音楽もするのでかなりオールマイティに自分のサウンドを作れます。

彼のドラムはかなりロジカルでそれがよくわかる教本を最近出しました。私も買って全部やって見たのですが、かなりわかりやすくマークジュリアナのコンセプトが感じられます。

オススメアルバム:

ユリシス・オーエンスJr

トラディショナルに根差したスイング系を得意とするドラマーです。

クリスチャン・マックブライドのトリオのドラマーとして何年もいて、若いのにプレイからはかなりベテランの感じが出ています。

マックス・ローチ、フィリー・ジョー・ジョーンズなどのバップドラマーにかなり影響されていてフレージングからかなりバップを感じます。

ですが音色がモダンでもあるので昔より洗練されたバップドラマーみたいな印象です。

オススメアルバム:

これから活躍間違いなしのヤング名プレイヤー

正直最近のドラマーはタイプがかなり似ていて、昔のプレイヤーよりエリック・ハーランド、クリス・デイヴ、ジャスティン・ブラウン、マーカス・ギルモアの影響を受けているドラマーが多いです。

音色がクリスプでスピード感あるドラマーが多いです。

よく聴けば違いますが初見じゃ見分けがつきにくいです。

多分フレージングが似ているからでしょう。なのでどのプレイヤーとの活動が注目なのかをメインに述べていきます。

カシュア・バディ

クリスチャン・スコット、ギラッド・ヘクセルマン、メリッサ・アルダナなどのバンドで活躍中です。

オススメアルバム:

クウェク・サンブリー

エマニュアエル・ウィルキンスや他の若いミュージシャンとの活動が多いです。

ジャンベも得意としていてアフリカの多様なリズムを操ります。最近ニュースクールを卒業したこれから期待大のドラマーです。

オススメアルバム:

コーリンス・トラナハン

珍しく左利きのドラマーです。

ジョージ・ガゾーン、ギラッド・ヘクセルマン、マーク・ターナー、チャールス・アルトラなど多数のミュージシャンと活動中です。

オススメアルバム:

ジャーミー・デュートン

今かなり勢いのあるドラマーです。

ジェームス・フランシス、ジョエル・ロスなどのバンドで活躍していてブルーノートから最近いくつかアルバムを出しているので必聴です。

オススメアルバム:

ジョナサン・ピンソン

バークリーにいる頃からウエイン・ショーターに目をかけられ、そこから一気にギラッド・ヘクセルマン、ウィル・ビンソン、マーク・ターナーのバンドなどに入って活躍し始めました。

かなりアグレッシブに叩いたりドラマー的なテクニックもすごいですが、全体的なバランスを考えて引き算しながら音楽的に演奏したりもします。

ゴスペルやエレクトロの音楽を叩いてもそっちの音楽に寄せて叩くので何をやらせても完璧です。

オススメアルバム:

まとめ

全部チェックするのは大変ですが少しずつでもいいので自分の知らない未知なる音楽を広げていくと自分の本当に好きな音楽が見つかると思います。

それではまた次の記事でお会いしましょう。



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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。