2023年プロドラマーがよく聴いたジャズアルバム集(前編)

こんにちは、野澤です。

2024年も始まりましたね。今年もモジカルをひいきに読んでいただけたらと思いますのでよろしくお願いいたします。

さて今回は私が2023年によく聴いたアルバムを紹介していきたいと思います。

昨年も割と新作が出たり旧作でも興味をひく作品があって手を出してみたアルバムがいくつかあります。

そんなアルバムたちを今月は特集していこうと思いますので気になるアルバムがあればぜひ聴いてみてほしいです。

それではご紹介していきます。

松丸契「The Moon, Recollections Abstracted」

今注目を集めるアルトサックス奏者の松丸契のセカンドアルバムです。

フリーのように聞こえますがどの楽器の音色も綺麗でそれぞれの楽器がくっきり聞こえるようにミキシングがしっかりされています。とっつきにくそうな内容かと思いきややっていることがとてもシンプルで個人的には飲み込みやすいアルバムでした。

ドラムの石若駿さんの演奏も炸裂していて聴いていてワクワクする音楽が詰まっています。

曲やサウンドがニューヨークサウンドな感じもしますし日本人的なサウンドもいい感じに混ざっていてずっと聴いていられるアルバムです。

エルビン・ジョーンズ「Very Rare」

アート・ペッパー(A.sax)ローランド・ハナ(Piano)リチャード・デイヴィス(Bass)とドラマーのエルビン・ジョーンズという豪華メンバーでの1979年収録アルバムです。

エルビンのアルバムの中ではかなり綺麗なサウンドでレコーディングされていて、荒れ狂うドラムがとてもスムーズにうねっていきます。

サウンドが整理されてるからといってスケールダウンすることはなく、激しさやエネルギーのテンション感が収められているのでこれは聴いてみる価値アリだと思います。

イーブンと6/8のフィールを融合するような”Tin Tin Deo”も面白いトラックです。

ケンドリック・スコット「Corridors」

2023年にブルーノートからリリースされたドラマーのケンドリック・スコットのアルバムです。

リーダーとしては6作目になるアルバムで今作は珍しくコードレストリオ。ウォルター・スミスIII(T.Sax)とリューベン・ロジャース(Bass)のトリオ作品で、オリジナル曲を中心にリューベンとウォルターがフィーチャーされていくような曲順になっています。

ケンドリックは本アルバムのリーダーではありますが、前に出すぎるようなプレイでなくあくまでも2人のプレイヤーをサポートするようなスタンスで叩いているように聞こえますね。

いつものオラクルサウンドを期待して聴くとアルバムの音作りとして物足りなさは少し感じますがアルバムのコンセプトは狙い通りでしょう。

ケンドリックが言うにはバンドサウンドのキーになるピアノとギターを削ぎ落として何ができるかを考えたと言うので本人としてはかなり挑戦したアルバムになりました。

ジュリアン・ラージ「The Layers」

BGMとしてよくかけていた1枚です。超絶テクニックを持つ天才ギタリスト ジュリアン・ラージですが最近はカントリー色が強くこのアルバムもアメリカンカントリーの雰囲気が色濃く出るアルバムですね。

曲をかけているだけで空間がゴージャスかつゆったりな空気感になるのでリラックスしたい時に流していました。

ジュリアンはこのアルバムで多重録音でギターの音を重ねていますが、無理にサウンドを厚くするとうわけではなくあくまでもハーモニーのサポートとして多重録音を活用しています。

根底にはナチュラルなサウンドを目指しているのでとてもスムーズで聴きやすいアルバムです。

SF Jazz Collective「New Works & Classics Reimagined」

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008646489

SF Jazzに関してはいくつか書いているのでこちらからご参照ください。
SF Jazz Collectiveは実は隠れたジャズオールスターバンド

今大注目のドラマー!ケンドリック・スコットのライヴを追っかけた

ケンドリックが参加してから2枚目になるアルバムになります。SF Jazzらしいサウンドとアレンジになっているので初期のSF Jazzファンも楽しめますね。相変わらず1曲1曲が大曲になっているので聞き応えは充分ですし、ケンドリックの音色の美しさや展開の運び方は勉強になります。

SF Jazzのアルバムはどれもライヴレコーディングなんですがどのアルバムも粗がなくて素晴らしいですね。。

このクオリティで毎回レコーディングできているメンバーの凄さに驚かされます。

ウォルター・スミスIII「Return to Casual」

ブルーノートからリリースされたアルバムですがこれは前にこのメンバーで出したアルバム「Still Casual」の続編になるようなアルバムの内容になっています。

メンバーはウォルター・スミスIII(T.sax)マット・スティーブンス(Guitar)テイラー・アイグスティ(Piano)ハリシュ・ラガバン(Bass)ケンドリック・スコット(Drums)のクインテット。

少しだけアンブローズ・アキンムシーレ(Trumpet)がゲスト参加しています。

ウォルターならではの複雑で迫り来るメロディ、そしてメロディにシンクロするような複雑なコード進行。1曲目からフルスロットルで駆け抜けていきます。

相変わらず作曲センスが良すぎてこういう曲が作れるのは羨ましいですね。

ファンにはニクい演出も入っていました。それが”K8+BYU$”。

過去のウォルターの名曲”Kate Song”と”Byus”を混ぜた曲になっています。

ソロ部分は”Kate Song”のコード進行をとっていて、前のアルバムではアーロン・パークスとロバート・グラスパーがトレードでソロをとっていました。

この時は同世代の違ったタイプのプレイヤーの掛け合いが面白かったですよね。

なんと今回はテイラー・アイグスティとジェイムス・フランシーズ!

個人的にこの2人はタイプが似ているなと常々思っていました。

ウォルターもこれを見抜いていたのかこの2人のソロは面白くなると踏んだんでしょう。

ソロの順番もテイラーからジェイムスに受け継がれるかのような綺麗なラインになっていて本当にグッドジョブと心の中で思いテンションがめちゃめちゃ上がりました。

(まだまだありますので後編に続きます。近日公開。お楽しみに)



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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。