ドラムイントロから見出すジャズプレイヤーの個性

今回もドラムイントロ特集です。(前回の記事はこちらから)

ではさっそく見ていきましょう!

拍子が取りづらい不思議なイントロ

前回の分かりやすい模範的なイントロとは対照的に、みんなこれでよく入れるなという変わったイントロもあります。まずは聴いてみないとわからないと思うので聴いてみましょう。

ロイ・ヘインズ “James”

最初の5秒程度のイントロですが、どうでしょう? どのようなイントロか分かりましたか? 私は最初、まったくといっていいほどイントロからの流れがわかりませんでした(笑)。

譜面におこしてみると4小節のドラムイントロだとわかってスッキリしましたが本番でいきなりこれをやられてテーマに入れる気がしません。。

ロイ・ヘインズもすごいですが周りのメンバーも耳が恐ろしいくらい耳がいいですよね。

エド・シグペン “Harper”

テーマの最初のメロディを使ってイントロを出していますが独特の間や暗さが不思議な感じを出していますね。

最初はそこまでテンポをだしてませんが最後の1拍のフィルインを合図にロンカーターのベースがドラムのリズムにぴったりひっついて出てきます。

これもロイ・ヘインズのイントロの時と似ていますがこの1拍というわずかなタイミングでどうやったら合うのか不思議でなりません。

Elvin Jones ” Here Is That Rainy Day”

これも不思議なイントロですね。2拍でのイントロで打ち合わせてあるんでしょうがテンポ感を出さずにしかもイレギュラーなアクセントを入れるのでテーマに入った部分は多少ズレていますがこういう大味なところもいい意味でジャズらしいです。

イントロとテーマに入った後のスピード感のギャップがあるので急に遅くなったかのように錯覚します。

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現代のドラムイントロ

今現在活躍しているドラマーはこれまでのジャズを創り上げた偉大なドラマーたちのテクニックを独自に昇華させてオリジナリティある音色やフレーズを追求しています。

Kendrick Scott “Cycling Through Reality”

特定のテンポは出さずにその場の空気感を出すようなフレーズから入り、40秒辺りからはちょっと特殊な奏法を使っていてスティックの叩く部分と持ち手のグリップエンドを使ってフロアタムのリムを連打しています。

そこからスネアを裏返してスネアの裏に張ってあるワイヤーをスティックでこすってDJがよくやるスクラッチのようにリズムを出していきます。

昔はスクラッチという演奏技法自体が一般的ではなかったため、これは現代ならではの発想と言えますね。

途中ベースのジョー・サンダースもびっくりした表情でケンドリックを見ています。

全然別の話ですが何度かニューヨークでケンドリックのバンドを観た中で一度全部ドラムイントロから曲に入るライヴの日がありました。

ドラムイントロのインスピレーションでメンバーや曲に新しいアイデアが生まれるかもしれないという実験的で聴く側も新鮮なライヴでした。

アリ・ホーニグ “Billes Bounce”

このアリ・ホーニグというプレイヤーは、特殊な技法を数多く持つジャズドラムプレイヤーのなかでもひときわ特殊です。

世界中探してもこれができる人はアリだけでしょう。マックス・ローチも歌うドラムですがアリはドラムで本当にメロディを奏でてしまいます(単純に音符のある箇所に適当なドラムセットを叩いてもこのようにはなりません)。

Bilies Bounceはブルースの曲ですが、ここでのイントロはブルースのフォームを気にせずアメリカンフォークソングのように歌っています。

そこから先もテーマを一緒にユニゾンしたり一緒にキメを演奏したりしていますがナチュラルかつスムーズで見ていて気持ちいいアンサンブルですよね。

ビル・スチュワート “Toogs”

これは革命的なドラムイントロです。

何が革命的かというと3連符を5つに割っていくフレーズで5連符を出していてます。要は違う拍子に聞こえさせるタイムモジュレーションというテクニックを使っているんですね。

なんだそんなことかと思うかもしれませんがこういう5つ割りのフレーズはその前の時代では聴いたことありません。

ジャック・ディジョネットやトニー・ウイリアムスが少し5連符のアイデアを使ってたりしましたが、もう少し切り開いて実用的にしていったのはビル・スチュワートだと思います。

この頃くらいから変拍子ブームが始まり、4拍子の中にもタイムモジュレーションという形で5や7の連符のアイデアが広がっていきました。

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個人的にツボなドラムイントロ

エリック・ハーランド “Byus”

コンテンポラリージャズですがやはり私が最初にジャズを聴きだしたのがこの世代のドラマーなので自然とこれを選んでしまいます。

この頃のエリック・ハーランドが一番好きで音色、フレーズ感ともにカッコいいです。16分音符の緩急の付け方や迫りくる迫力がありながらも洗練された空気感を匂わす音が好みなんだと思います。

何度聴いてもいいイントロです。

Philly Joe Jones “Lover”

ソニー・クラークの名盤「Cool Struttin’」から”Lover”という曲のイントロです。

いきなり片手2拍3連をフォルテで攻めてきて圧倒されます。その後に綺麗なフレーズが続き一旦フレーズを区切るんですが、フレーズの切り方も4小節目の区切りではなく小説をまたいだ5小節目の途中で区切るので少しトリッキーに聴こえます。

それからも本人は意識してないでしょうがルーディメンツを多用してめちゃめちゃカッコいいイントロをだしてくれています。こんなにいいイントロ出されたらとても気持ちよく入れそうですね。

バディ・リッチ “Caravan”

ジャズを聴きはじめた時すごくバディ・リッチにハマっていてこれをよく聴いていました。なので個人的なフィルターがかかっているかもしれませんが印象深いイントロです。

最初のフレーズの叩き方はマックス・ローチやエルビンを少し意識しているかのような歌い方をしています。

バディ・リッチはテクニックの面ではかなり長けていますが、小編成のインタープレイを重視するバンドがあまりなくこういう音源は結構レアです。

なので言い方は悪いですがテクニックでゴリ押しするイントロではなく歌うようなイントロをバディリッチがやっているという点で個人的に気に入ってるイントロです。

 

こういうふうにイントロを集めて聴き比べると面白いですね。

曲の紹介だけでなくプレイヤーそれぞれの個性や魅力が最初の数秒のイントロで垣間見え、そこから他のプレイヤーが合流してオリジナリティに溢れた曲にどんどん膨れ上がっていくこの感じがジャズらしくていいところです。



ABOUTこの記事をかいた人

野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。