ジャズトランペットで聴くべき10の名盤

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「名盤」という言葉があります。

優れている演奏が収められた有名なレコードやCDのことを指す言葉ですが、最近はそういったものよりネット配信サービスを利用する方がかなり増えてきたので実際に「盤」を目にする機会は減ってきました。

CDはともかくとして、たまにレコードを聴かせてもらったりすると本当に臨場感があって良いですよね。

 

……とまあ少し本題から話が逸れましたが、今回はジャズトランペットという括りでその「名盤」をご紹介していきたいと思います。

前回の記事と被る部分もありますが、なるべく初心者の方がこれからトランペットでのジャズを聴き始めるにはどうすればいいかという観点からセレクトしてみました。

非常に素晴らしい作品ばかりなので、どれを聴いても間違いなしだということは保証します。

Ella & Louis

前回記事のルイ・アームストロングの項目でもご紹介した作品です。

単にエラのみずみずしい歌声が素晴らしいとかトランペットの演奏が良いとかそんな小さな話ではなく、一拍ずつ極上のビートを紡ぎだすリズムセクション(=この場合はドラム、ピアノ、ベース)と共にこの作品全体に流れるリラックスしたムードを感じ取っていただければなと思います。

たとえるなら夜、高級車に乗ってジャズクラブの並ぶ通りをゆったりとクルージングするという感じでしょうか。

まさに「ジャズ」とか「スウィング」ってこうだよねと唸らされる作品です。

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ユニバーサル

Clifford Brown with Strings

トランペットにおけるバラード演奏の完成形と言っても過言ではないでしょう。

現代ではトランぺッターによるバラードというとフリューゲルホルンへ持ち替えることが多いのですが、このクリフォード・ブラウンのようにトランペット特有の乾いた硬めの音色で男らしく演奏するバラードもまた良いものです。

ただし演奏する側からするとフリューゲルホルンへ持ち替えた方がアラが目立ちづらくて助かる、逆に言えばトランペットでのバラード演奏はその乾いた硬質な音色という特徴から、かなりの演奏技術がなければ耳障りに聴こえてしまうことがあります。

この作品では特にここに挙げたYesterdaysの演奏が印象に残っています。

ストリングスによる暗く悲しげな4小節のイントロ……だけかと思いきやそのままトランペット無しでメロディの6小節目まで演奏が進行。

おいおいトランペットはどうした? と思わされた頃に太くて強い音でバラバラっと切り込んでくるトランペットの響きに思わず仰け反ってしまいそうになります。

The Beginning And The End

クリフォード・ブラウン好きな僕としてはもう1つ彼の作品を紹介したくなります。

それはクリフォード・ブラウンの短いキャリアの最初期のものと最期の演奏を収めたという触れ込みの”The Beginning And The End”です。

最期の演奏という点に関しては誤りなのですが(詳細はこちら)、この作品に収録されている彼の初期の演奏などはジャズというよりは当時のポップス(こういうのなんて呼ぶんでしょ?)です。

当然トランペットソロもごく短いのですが、その短い間に明快で強烈なアドリブを残しているのが印象的です。

Chet Baker Sings

クリフォード・ブラウンのような熱い演奏とは対照的に、チェット・ベイカーの演奏はスムースな音色とリリカルなメロディラインが特徴的。

そのため初心者の方にとっても取っ付きやすくお勧めです。

また彼のトランペットの音色と歌声はよく似ていますが、他のトランぺッターでも同じようなことが起こるんですよね。

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Unknown Label (tbc)

Relaxin’

マイルスと言えば”Kind of Blue”といきたいところですが今回はこちら。

当時プレスティッジというレコード会社との契約を消化するために4枚の作品を続けざまに収録したいわゆる”マラソンセッション”の1つです。

特にこの作品に関しては演奏の合間の会話もそのまま残されており、非常に興味深いものがあります。

以前は契約消化のために連続で収録したものだし、本当にやっつけ仕事なんだなと僕は勝手に勘違いしていましたが、よく考えてみると別にレコーディングした音源を編集する作業をマイルス本人が行っているわけじゃありませんよね。

ということは演奏の合間に残された会話は敢えて残されたものでしょう、多分。

ちなみに(?)演奏の内容は当然最高のクオリティです。

特に冒頭で紹介した”Ella & Louis”とリズムセクションの感じの違いをよく聴いてみるとスウィングの奥深さに気づかされるかと思います。

The Complete Live At The Plugged Nickel 1965

同じくマイルス・デイビスの作品ですが、こちらは少し後のもの。

下に参考として挙げた曲は上のものと同じIf I Were A Bellですが、演奏はガラッと変わってしまっています。

正直初心者向けとしてはどうなの? って感じの演奏ではありますが、同じプレイヤーでも時代が変わるとこんなにも変化することがある一例として敢えて選択しました。

この作品が素晴らしいということは細かく書きませんが、少し聴いてみてもし興味を持たれたらこの作品の他の曲もぜひ聴いてみてください。

The Sidewinder

なんだかちょっと自分の趣味に走りすぎちゃったような気がするので少し軌道修正……

リー・モーガンの代表作とも言えるこのアルバムも忘れてはいけません。

それまでのハードバップに行き詰まり感が出てきていた1964年にリリースされて以降、いわゆる”ジャズ・ロック”を代表する作品として大ヒットしました。

個人的には2曲目のTotem Poleなんかも良いなと思うのですが、知名度の高さではタイトル曲のThe Sidewinderが圧倒的。

軽快なリズムとリー・モーガンらしく歯切れのいいトランペットのサウンドが特徴的です。

Blue’s Moods

ちょっと遊び人風なリー・モーガンのサウンドに対してブルー・ミッチェルはまさに実直という印象です。

少し細めで遠鳴りのするトランペットサウンド、コードトーンに対してシンプルで無理なく綺麗に紡がれていくメロディラインは非常に美しいものがあります。

またアドリブ演奏を身に着けるための手段として誰かのアドリブソロを耳コピすることがあるのですが、特にこの曲I’ll Close My Eyesはその題材としてもうってつけのプレイヤーです。

The Vive

昔の作品ばかりじゃ物足りない!という方へ向けて、最近のものも少しだけ紹介したいと思います。

まず一つはロイ・ハーグローブの作品から”The Vive”です。

最近のものと書きましたが、この作品は1992年リリースですから大分前のものですし、彼のキャリアの中でも初期のもので、CDは廃盤のため入手困難です。

しかしアップルミュージックでは配信されていることを確認済みですので、ぜひ聴いてみてください。

以前紹介した”Earfood”のように後期のハーグローブは洗練されていてカッコ良いのですが、初期の作品もやんちゃな感じで非常に勢いがあるのと、素直にトランペットを鳴らしている印象があり聴いていて気持ちの良いものです。

Youtubeでは見つけることができませんでしたが、このアルバムに収録されているBlues for Booty Green’sでは彼のブルージーな演奏を思いっきり浴びることができます。

A Jazz Celebration

現代ジャズトランぺッターといえばウィントン・マルサリスを忘れてはいけません。

非常に多作なマルサリスなのでその中から一つだけというと困ってしまいますが、ここではウィントン・マルサリスが家族で行ったライブレコーディング作品を紹介してみることにします。

メンバーはウィントンの父であるエリス(pf)、兄のブランフォード(ts)、そして弟のデルフィーヨ(tb)、ジェイソン(dr)と、ベース以外は全員家族です。

中でも1曲目に収録されているこの曲Swinging At The Havenは非常にご機嫌な曲です。

家族で演奏しているせいかどこか角張った感じがなく、とてもリラックスした演奏で聴いていて幸せになるような作品です。



ABOUTこの記事をかいた人

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1986年生まれ。中学生から吹奏楽を通してトランペットの演奏を始め、高校生からジャズに目覚める。その後、原朋直氏(tp)に約4年間師事し、2010年からニューヨークのThe New Schoolに設立されたThe New School for Jazz and Contemporary Music部門に留学。Jimmy Owens(tp)氏などの指導を受け帰国し、関東近郊を中心に音楽活動を開始。金村盡志トランペット教室でのレッスンを行いながら、精力的に活動を続けている。