ニューヨークにジャズで音楽留学するには、演奏技術はどの程度必要か

ニューヨーク ジャズ 留学

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前回までは、私自身が実際にニューヨークに留学した際にかかった費用や、持っていった物などを紹介しました。

今回は、音楽留学をしたい人ならだれでも気になる、実際に留学する際に自分自身のテクニックがどれくらい必要なのか、ということに焦点をあててみます。

結論から言うと「ある程度演奏の経験があって自分のレベルをもっと上げたくて留学したい」「自分の演奏技術に限界を感じる」と思う方は本当に留学を検討してみてもいいと思います。

極端に高い技術力を留学前に保持している必要はありません。行った先で向上させるのが正解です。

だからといって、それではすんなり希望の大学で夢のキャンパスライフ! とはいきません。

近所の音楽教室に通いに行くのとは訳が違うので、優れた音楽大学で学びたければそれなりの勉強をして入るというのが一般的です。

ある程度演奏技術が達していないと入学できない学校もあるのです。

そのため留学をしたければ今の自分のレベルに合わせて志望校を決めるのがよさそうですよね。

まずは最先端の音楽が学べる街、ニューヨークで志望校となりうる大学がどれだけあるのか、どのくらい演奏技術があればその志望校に入れるのかを参考にみていきましょう(私自身ジャズというジャンルで留学していますので、ジャズに絞った内容です)。

ニューヨークでジャズが学べる学校

ニューヨークでジャズが学べる学校は、いつも私が言ってるニュースクールだけではありません。他にもいくつか大学があるのでまずはこれらを見ていきましょう。

  • ジュリアード音楽院
  • NYU(ニューヨークユニバーシティ)
  • ニュースクール
  • マンハッタン音楽学校
  • シティカレッジ
  • クイーンズカレッジ
  • パーチェス

マンハッタン近辺でこれだけのジャズが学べる音楽大学があります。

ジュリアード音楽院は誰もが聞いたことあるクラシックでも有名な大学ですよね。

ジュリアードに入れれば有名なトランペットプレイヤーのウィントン・マルサリスに学べる機会があったり、これから活躍できる場が保障されています。

ここが一番入るのが難しく、その次にマンハッタン音楽学校、NYU、ニュースクールの3校が同じレベルくらいの入学難易度です。

残り3校(シティカレッジ、クイーンズカレッジ、パーチェス)は割と入りやすいと言われています。

入学の難易度が違えば学校のレベルも違うんじゃないの? と思うかもしれませんが、学歴を気にしなければ学ぶ内容はどこも似ている気がします。

なぜならどの大学も先生が一流プレイヤーばかりだからです。

クイーンズカレッジにはギタリストのマイク・モレノがいたり、マンハッタンスクールはケンドリック・スコットやあの巨匠ロン・カーターが先生として教えています。

そうなってくると、どの学校でどのプレイヤーが先生として在籍しているのか見て決めたくなりますよね。

私がニュースクールを選んだ理由としてはニューヨークに住んでいる人なら誰でも先生にできるというスタイルだったからです。

ドラムは1番習いたかったケンドリック・スコットに習い(当時はマンハッタンスクールにいなかったため)、アンサンブルを自分が好きなプレイヤーを先生にしてコンセプトを学ぶことができました。

習いたい先生がたくさんいて決められないという方や、習いたい人が大学に所属してない場合はニュースクールがお勧めです。

とはいえそんなニュースクールに入るのにどれぐらいの演奏技術があれば入れるんだと疑問に思いますよね。

なのでまずはニュースクールに入るためにどのくらい演奏技術が求められるのか、私が体感したことをもとにお話ししていきます。

入試で求められる演奏レベル(ニュースクール編)

試験内容と試験で見られること

まずは学校に入るために入試試験があります。試験内容はジャズスタンダードを3曲演奏すると言う内容でした。

アメリカ国外であれば録音したものを送って提出でもいいのですが、私の場合はそれだけだと不安だったので録音+現地に行って試験を受けました。

ジャズスタンダードの種類は3種類でミディアムテンポのスイング曲、バラード、アップテンポなスイング曲の演奏でした。

試験で見られるものとしては、

  • 自身の楽器のテクニック
  • 曲が始まって終われるくらいのジャズの演奏の知識
  • アンサンブル能力

この3つになります。

まず一番気になるのは楽器のテクニックですよね。基本的なジャズが演奏できるテクニックがあれば大丈夫です。

ドラマーであれば4ビートと2ビート、コンピング、そして曲の中でソロを回されるのでドラムソロを取れるテクニックが必要となります。

あとはある程度ジャズのグルーヴが出せるかどうかも少し大事です。

3曲中2曲はスイングが求められるのでスイングのノリが出せるように2ビート、4ビートを練習しておく必要がありそうです。

そして最低限のアンサンブル能力も見られていると思います。

絶対抑えておきたいのはジャズがどうやって始まって終わるのか進行を知って演奏できることです。

当たり前ですが曲を始めて終われないと試験官の先生も取り合ってくれません。

曲の進行がAABAなのかABACなのか知っておいたり、ソロ順を知っておいたり、8バーストレード4バーストレードでドラムソロをとれるように練習しておきたいところです。

あと試験を受けるときは、イントロとエンディングを迷わないでいいようにリードシートに書いておくといいと思います。

そうすれば曲が始まってから終わるまで何が起こるか把握できているので自分自身の演奏にしっかり集中できますよね。

恥ずかしながら私は試験の時に譜面を持っていきませんでした。

ジャズスタンダードなので曲のタイトルを言えば演奏補助の人もすぐできるだろうと軽く考えて行ったからです。

部屋の中に入ってから「My Shinning Hourでお願いします」と言ったら演奏補助の人が「その曲知らないんだけど」と言われすごく焦った記憶があります。

日本でよく演奏されるスタンダードとアメリカで演奏されるスタンダードが違うためそうなったのか、その人がスタンダードのレパートリーがなかったからそうなったのか、どっちかわかりませんが、そういうことが起こってしまったのです。

今考えると当たり前ですが譜面を持っていくのが正解だったと後悔しました。

ちなみにそのとき試験官の先生に「ミュージックは持ってないの?」と聞かれてどういう意味か分からなくて余計に焦りました。

向こうでミュージックといったら音楽以外に譜面のことも意味します。まさかこの場で学ぶとは思ってませんでしたが1つ勉強になりました。

脱線したので話をもとに戻します。

曲を問題なく演奏できるのも大事ですが、もっと具体的なアンサンブル力が備わっているとより受かる確率は高くなります。それはドラマーならベースとのコンビネーション、ソリストへのコンピングも理解して演奏できるかです。(詳しくはこちらの記事から)

私が試験を受けたときはピアノトリオだったので、ピアニストに対してだけ意識を向ければいいものでした。

もし他に管楽器がいた場合はピアニストもコンピングするのでピアニストがどうコンピングするかも見て一緒にコンピングできるといい思います。

ジャズにおけるドラムの役割を頭に入れて演奏できるようにしておけば試験官にも説得力のある演奏が伝わりますよね。

あとはバラードでブラシのテクニックがいるのでしっかり触って慣れておきましょう。(ブラシについての記事はこちらから)

あとはこれらをどこまで見られているかですが、さすがにプロレベルではなく学生として授業についていけるレベルがあるかどうかを見られているのであまりシビアに捉えなくていいと思います。

実際私も英語の勉強漬けでドラムを数ヶ月触ってなくて通りました。試験会場もそこまで緊張するほどの空気感はなかったです。

私の尺度だけじゃ参考にならないと思うので一緒にいたクラスメートも参考にしてみます。

どれだけの演奏技術があればいい?

実際に受験を合格して学校で学んでいる生徒を見ればイメージがつきやすいですよね。

ニュースクールといえばブラッ・ドメルドー、マイク・モレノ、ロバート・グラスパー、黒田卓也さんなどブルーノートレーベルで活躍している人が多いから、やっぱり上手い人たちがいっぱい集まってるんじゃないの? と思うかもしれませんがはっきり言うとピンキリです。

上を見れば世界レベルもいますがジャズが分からないから学びに来ている普通の学生もいます。

例えば今はプロのジャズピアニストの大江千里さん。昔はJ-POPで活躍された後にニュースクールでジャズを学びたくて入学されました。

入学当初はジャズピアノとしてのアンサンブルの仕方を知らずコードを弾くときにルートまで弾いてしまってベーシストの役割を取ってしまったり、リズムチェンジを知らず演奏できなくてクラスの中で恥ずかしい思いをしたというのを聞きました。

今ではもうレーベルを立ち上げて日本でもツアーをしたりしているのでニュースクールでしっかり学んで活躍されていますが、やっぱり入学当初はそんなにジャズができなくても入学できたのがわかります。

アメリカ人の学生を見ていても、アンサンブルの仕方がわかってない学生や明らかにロック上がりの学生もいるのである程度ジャズがわかっていれば入れてくれるんだというのがわかります。

ただ1つ言えるのはジャズが好きでさまざまなジャズミュージシャンを知っていて、ジャズの演奏技術が入学当初から備わっている学生が周りに多かったのは確かです。

なので自分はジャズが好きである程度人と演奏した経験があるという人は受かる確率が高いと思います。

入学に求められる演奏技術(ニュースクール以外)

試験内容は大体一緒

他の学校の試験内容はどうなのかというと、実は大体一緒です。

クイーンズカレッジじへの入学を希望する友人の録音に関わったのですがミディアムスイング、バラード、アップテンポスイングと内容は同じものでした。

同じように楽器のテクニックとアンサンブル能力を見られるわけですが、ジャズの演奏を経験してある程度わかっていれば何とかなることが多そうです。

ジュリアードは例外

ただジュリアードはこれにいくつか追加で提出音源があります。

ボサノバの曲、3拍子の曲、ドラム単体でニューオリンズのリズムスイングフィールと提出がいくつか多かったです。

合格者も少なく1学年で15人くらい、ビッグバンドができるくらいの人数しか受からず、1楽器1人しか入れないと言われています。

私もニュースクールの後にダメもとでジュリアードのマスタークラスの受験をしたのですが落ちました。。なかなか…。世界のジュリアードの壁は大きかったですね。

それぞれの学校の先生リスト

先ほども言ったようにジュリアードじゃなくてもいい先生がいる学校がほとんどなので見てみるといいと思うのでそれぞれの学校の先生が載っているリンクを下に貼っておきます。

結構有名な人がいたりするので調べていて驚きました。

結論

今回はニューヨークの音大に行くのに演奏技術は必要なのかというお話でしたが、結論どこかの音楽大学に入ろうと思えば演奏技術はジャズを演奏できる最低限のものは必要です。

判断基準は先生なので確実とまでいえないですが高いレベルは求められていないのは確かです。

ただ、レベルを高くして入学できれば返さなくていい奨学金をもらえるチャンスがありますがこれはもらえたらラッキーという感じです。

留学前は自分なんかが行って大丈夫なのかとか、演奏レベルが低いから諦めたほうがいいと考えがちですが、そういうことはないのです。

むしろ早い時期から行ったほうが偏見なくさまざまなことをどんどん吸収していくので自分自身の土台がしっかりするのかもしれません。

私の経験から言うと、演奏技術より必要なのは行きたいという意思かもしれません。

今の自分より上手くなりたい、本物のジャズを現地で学びたい、という目標があるのならば、思い立ったときこそが留学する理由の決め手です。

多分これを見ている方はある程度ジャズをやられている方々だと思うので留学を考えているならばぜひ検討してみてください。

すばらしい体験ができることは間違いありません。



ABOUTこの記事をかいた人

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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。