今回は言わずと知れた名ドラマーであるアート・ブレイキーのバンド、アートブレイキージャズメッセンジャーズの個人的名盤を紹介していきたいと思います。
ブレイキーは若い頃から自身のバンドを率いて演奏をしているイメージがあると思いますが、実はメッセンジャーズの立ち上げは37歳の頃。
それまではチャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピー、サラ・ヴォーン、マイルス・デイビスなどのサイドマンとして活躍したり、ドラムの研究のためにアフリカに2年間住んだりと、キャリアと技術をストイックに高めていました。
それだけでミュージシャンとして成功している気はしますが、なぜこのバンドを始めたのか気になりますよね。
ジャズメッセンジャーズの立ち上げ
最初はブルーノートレコード(NYの伝説的なレコードレーベル)からアルバムを出さないかと提案を受け、初めてバンドを組むことになります。
ケニー・ドーハム、ウォルター・ビショップJrも参加した8人編成バンドで「New Sounds」というアルバムを作りました。
これがアートブレイキーのジャズメッセンジャーズの原点です。
それと同時にセブンティーンメッセンジャーズというビッグバンドもやりますが経済的な問題ですぐに解散します。
その後一緒にバンドを進めてきたピアニストのホレス・シルバーとアート・ブレーキーの2人を中心に次のバンドに臨みます。
そのバンドがジャズメッセンンジャーズの始まりでした。
メッセンジャーズ初めてのアルバム
ニューヨークにあるジャズクラブのカフェボヘミアでのライブアルバム「At the Cafe Bohemia」が最初のレコーディング。
メンバーはケニー・ドーハム(trumpet)、ハンク・モブレイ(T.Sax)、ホレス・シルバー(Piano)、ダグ・ワトキンス(bass)の編成です。
最初はジャズメッセンジャーズとだけうたって、ホレス・シルバーとアート・ブレイキーの2人が実質的なリーダーとなっているバンドでした。
主にピアノのホレス・シルバーがバンドの曲を指揮していましたが、彼がバンドから抜けていったためここからアートブレイキージャズメッセンジャーズへと変わっていきます。
ジャズメッセンンジャーズといえばトランペット、テナーサックスの2管とピアノトリオという編成をメインにしていますが、メンバーは何代かに渡って世代交代しています。
その中から多くの名プレイヤーを輩出した若手ジャズミュージシャンの登竜門ということもあるので今回は世代を追って名盤とアートブレイキーの名プレイを見ていきましょう。
メッセンジャーズおすすめのアルバム(年代順)
アート・ブレイキーは譜面が読めないために(驚きですね!)自分が指揮をとるリーダーとして活動するほかに、もう1人ミュージックディレクターというポジションをメンバーに与えていました。
要はバンドに曲を提供する人ですね。
一番負担がかかるポジションですが、任命された人の曲はもれなくバンドの代表曲となって世界に知れ渡っていきます。
ここからは年代順におすすめのアルバムを紹介していきたいと思います。
「The Jazz Messangers」(1956)
最初のスタジオアルバムです。
この時はライヴレコーディングとメンバーがほぼ同じで、トランペットがケニー・ドーハムからドナルド・バードに変わったくらい。
この時はサックスのハンク・モブレイが主に楽曲提供をしていました。
youtubeのリンクは今やスタンダードナンバーのホレス・シルバーの曲Nica’s Dreamです。
このときはまだバンドとしてビバップ色があるものを演奏していますね。
「Ritual」(1960)
有名な「Night In Tunisia」を聴く前にこれを聴いてほしい1枚です。
みんながよく知っているアートブレイキージャズメッセンンジャーズのサウンドの片鱗がもう見えています。
メンバーはビリー・ハードマン(Trumpet)、ジャッキー・マクリーン(A.sax)、サム・ドッカリー(Piano)、スパンキー・デブレスト(bass)で、一曲目の「Sam’s Tune」の曲の雰囲気や、アルバムタイトルの「Ritual」もメッセンジャーズの有名曲となるNight In Tunisiaが始まりそうな雰囲気を出しています。
この頃からアフリカで感じたものをバンドにしたいという気持ちはあったんだと思います。
ちなみにアルバムリリースは1960年ですがレコーディングした年は1957年になります。
A Night In Tunisia(1957)
RitualからのこのNight in Tunisiaを聴くとなるほどと思いますよね。
言わずと知れた名曲です。
メンバーもRitualと同じメンバー+テナーのジョニーグリフィンでレコーディングしています。
Moanin’(1959)
言わずと知れた名盤なので説明は不要かもしれません。
ここからはまた新メンバーになり、リー・モーガン(trumpet)、ベニー・ゴルソン(T.Sax)、ボビー・ティモンズ(Piano)、ジミー・メリット(bass)となります。
メッセンジャーズを代表するメンバーといえば、実は初期メンバーではなくこの人たち。
ピアノのボビー・ティモンズが作曲を担当することが多くなり、表題曲のモーニンも彼が作曲したものです。
youtubeの動画はこれも有名な曲「Blues March」です。
A Night In Tunisia(1960)
ん? と思う人もいるかもしれませんが「Night In Tunisia」というタイトルのアルバムは合計3枚出ています。
リー・モーガン、ウエイン・ショーター(T.Sax)、ボビー・ティモンズ、ジミー・メリットのメンバーで新たにレコーディングをしました。
「Night In Tunisia」だけは同じ曲ですが(中身は進化しています)、他に入っている曲はリー・モーガンの曲だったり、ウエイン・ショーターの曲が入っていたりします。
もちろんボビー・ティモンズの作曲もあり、ファンキーでかっこいい「So Tired」という曲が収録されています。
Mosaic(1961)
ここからはまた新メンバー体制になります。
フレディー・ハバード(trumpet)、カーティス・フラー(trombone)、ウエイン・ショーター(T.sax)、シダー・ウォルトン(piano)、ジミー・メリット(bass)でこのアルバムを制作します。
シダー・ウォルトンの曲がバンドにまた違った空気を作ってくれて、そこにサックスのウエイン・ショーターが刺激を与えている感じがとても良いですね。
この頃はトロンボーンも入ってしばらく3管になります。
Free For All(1964)
同メンバーでレコーディングしたアルバムです。
しかし今回はウエイン・ショーターの作曲したものが多いです。
前々からショーターの曲は他のジャズミュージシャンと比べれば異質な感じで、このアルバムのテイストはジャズメッセンジャーズしては珍しいものに仕上がっています。
ですがバンドの熱量がとても激しく、ライヴレコーディング並に白熱しています。
Oh-By The Way(1982)
だいぶ年代が飛んで1982年のアルバムです。
メンバーも移り変わりテレンス・ブランチャード(trumpet)、ドナルド・ハリソン(A.sax)、ビル・ピアース(T.sax)、ジョニー・オネール(piano)、チャールス・ファンブロウ(bass)というメンツになりました。
1曲目のテレンスの曲「Oh-By The Way」や4曲目の「One By One」もアート・ブレイキーのリーダーシップがしっかりでています。
アートブレイキーの存在
バンドで演奏する曲の制作はほとんどメンバーに任せていますが、アート・ブレイキーのリーダーシップやプレイスタイルはほぼブレません。
ここまで自分のプレイスタイルを突き通してできる人は少ないと思います。
先陣切ってガンガンいったりするときもあれば、ソリストを陰からプッシュするところもあったりしますが、どのやり方もメンバーの演奏を常に聴き、絶妙にサポートしています。
最後にそれが一発でわかる動画を載せておくのでぜひ最後まで見てみてください。
本当に最後の最後まで気合が入っています。
男の中の男という感じの演奏でバンドを長年引っ張ってきたアート・ブレイキー。
年代ごとにもっとたくさんのアルバムがあるので、ここから掘り下げて聴くのも面白いですよ。