第1回:個人商店主がこれから自分自身で広告制作をおこなうときに必要な下準備
第2回:個人商店は想いを伝えるための文章をなにに掲載するべきか
さて、第3回になりようやく実践的な項目に入ります。
集客のための文章術というものと、購買を促すための文章術、そして今回のテーマ「自分の商店のよさを知ってもらうための文章術」はそれぞれ別物です。
それでは商店のよさを知ってもらう、つまり商店のファンを作るための文章術に必要なものはなにか。
それは“一定数の人に向けた共感”です。
すべての人に向けたものであってはいけません。なぜならば「あなたの商品やサービスを好きではない」もしくは「あなたの商品やサービスに合わない」人が一定数いるからです。
どんな商品やサービスにもお客さんの向き、不向きがあります。
ご自身のことを考えてみてください。
「そばを食べたいな」と思ったときに、歴史のあるA店とできて日の浅いB店があるとします。
A店は伝統のもりそばのみ、B店は変わり種のラー油や千切りネギ、温泉卵などをたっぷりいれた太いそばを提供します。
そばは特に嗜好の分かれるジャンルです。
そのため「A以外はそばではない!」という人もいれば「B店でそばをワシワシ食べたい!」というお客さんも出てきます。
ちなみに僕はAもBも好きですが、B店に(そば好きの方ならどこのお店のことを言っているかご存じでしょうがB店は実在するんです)そば好きの友人を連れて行ったときはあまり好みではなかったと話していました。
提供する商品に差異のあるそば店を例に挙げましたが、同じ商品同じサービスを提供している店舗でも同じです。
店員の対応やお店の雰囲気、場合によっては自宅からの距離など、違いは必ずあるため、すべてのお客さんに等しくお店を好きになってもらうことは経験上不可能です。
そのために、文章を考える前に検討しなければいけないのは“一定数”の部分。
つまり“どのような人に向けた文章を書くか”です。
情報を届けたい相手によって内容や体裁を変える
必要なのは年代、性別、どのような環境(職業や住んでいるのは戸建てか集合住宅など)かなどですが、もっと踏み込んで年収や家族構成まで決めても大丈夫です。
なぜここまでこまかくお客さんとなりうる人を絞り込むかというと、それぞれのお客さんが必要としていることが細かく分布しているからです。
あなたの商店で取り扱う商品が同業種の中でもひときわ高額であったとしましょう。
例として少し極端ですが800万円の高級車とします。
この800万円の高級車、性能もいいし長く乗れるし、座り心地もすばらしい。
整備も行き届いていて試乗するとみんなが「いい車ですね〜」と話します。
しかし、だれもが購入できる車でしょうか。
車には、中古車を含めれば10万円程度〜1億円程度までの開きがありますよね(もっと高級な車両もありますが…)。
現在の30代の平均年収400万円程度であれば、2年分の年収がまるまる吹っ飛びます。
そうすると、30代の平均年収400万円程度の人によさを知ってもらっても、購買に至る確率は非常に低くなります。
決して、上記の人によさを知ってもらうことはマイナスではありません。
基本的には年収は年を経るごとに上がるものなので、もっと年齢を重ね金銭に余裕が出たときにあこがれの車として購入してくれるかもしれません。
しかし、あこがれの車として広告するのと、直近で購入してほしい車を広告するのではアプローチ方法がちがいます。
あこがれの車である場合は、あこがれを抱くに足る価値が必要です。
それには伝統や格式、変わらない開発精神、こだわりのポイントなど、たくさんの情報を忘れられないように定期的に発布し、かつ世の中の多くの人にあこがれを抱かれるような存在にしなければいけません。
そうすると、まずは世の中全体に存在を知ってもらい、多くの人の憧れの的でありつづけるよう広告する必要があります。
一方、直近で購入してほしい車として広告するのであれば、同価格帯の別のメーカーや車種よりも自分たちの車両を選んでもらうための情報を強調する必要があります。
もしも10万円の中古車を購入するお客さんであれば、購入後どれだけ乗ることができるか、車両の状態はどうか、あなたの商店でどのように管理されているかなどが重要です。
それも10万円であればそこまで長く検証する時間は設けないでしょう。そのために早く広告しなければ、ほかの商店にお客さんをとられてしまうかもしれません。
また、駐車スペースの問題もあります。
高級車であれば、屋根付きの駐車環境を欲する人が多くなりますよね。その場合はお客さんになりうる人がどのような住宅に住んでいるかでアプローチ方法が変わります。
駐車場が住宅にない場合は、多くの場合高級車を安全に保管する術を提示してあげる必要も出てくるでしょう。
以上のように、どのようなお客さんを対象にするかで伝えるべき文章の内容や体裁は大きく変わります。
ほかにも、お子さんを連れたお客さんを対象にするならば子供連れでもお子さんの遊べるスペースがあることを広告したり、その場ですぐに商品を持ち帰りたいお客さんを狙うのであればその旨記載する必要があります。
800万円の車を買う人と、10万円の中古車を買う人では欲している情報がまったく違う、ということを念頭に考えると、少し分かりやすいかもしれませんね。
また、対象となるお客さんはある程度複数でも大丈夫ですが、あまりに広いとどっちつかずとなることがあります。
情報は多すぎると文章量が膨大となりますが、10万円の中古車を購入する人がそこまでたくさんの情報を欲するでしょうか。
まずは理想となるお客さんを1人の条件を詳細に想像して、その人に向けた情報と情報量を整理してみましょう。
それをひな形にほかの条件のお客さん向けの内容を少し付け加える程度がいいですね。
同じようなお客さんを対象にしている同業者の成功事例を読む
対象を絞り込んだら、次に同じお客さんを対象とする商売をしている同業者を探しましょう。
特にマーケティング部など、お客さんへの広告的アプローチを専門的に行う部署がある企業がいいでしょう。
その企業のHPや資料などでは、どのような言葉遣いでどのような情報を提供しているかを参考にします。
注目するべきは「です・ます調」や「だ・である調」です。
文章の調は、お客さんへ相対するときの目線が記載する文字で変わります。
一文を例に挙げます。
「モジカルの前身は“ひともじ”というサイトです。のじさとしが小田原じてんしゃ工房のブログサイトとして立ち上げ、少人数で運営しています。」
上記は「です・ます調」です。
少し丁寧な印象がありますね。読んだときにお客さんと同じくらいのフラットな目線を感じるでしょう。
では、次に「だ・である調」に変更します。
「モジカルの前身は“ひともじ”というサイトだ。のじさとしが小田原じてんしゃ工房のブログサイトとして立ち上げ、少人数で運営している。」
読んでみるとどう感じますか。少し上からに感じませんか。
「だ・である調」は情報の発信者が確固たる知識を持っていて、正しい情報を発している、と意識させることができます。
新聞や経済系の雑誌などは同じ書き方をすることが多々ありますね。
しかしデメリットもあります。情報の発信側に威厳を持たせるような書き方となるため、高級感を演出することはできますが親しみやすさを感じにくいのです。
そのため発信する情報などを絞って構成する必要がでてきます。
以上のような書き方による読者への印象を1から考えるのは大変です。
実際に運用してみて、この表現では発信する情報が伝わっていない、もしくは、この部分は伝わっている、といった経験から、修正を行いつつ情報発信を続けなければあなたの商店にあった文章の体裁が整いません。
だからこそ、こういった表現などを専門チームで検討している企業の文章を参考にしましょう。
ただし、参考にするまでにしてください。
同じ文章や表現した言葉などを流用することは絶対にしてはいけません。
コピペ、という著作権の侵害に当たる場合もあります。
参考にするのは「です・ます調」や「だ・である調」、どのような情報を発信しているかだけにしましょう。
この部分だけは気をつけてくださいね。
今回はここまでです。
次回はオリジナルコンテンツとして文章を書くときに「専門性」をアピールする必要がある、というお話です。
少し難しくなりますが我ながらかなりいい参考となると思います。
お楽しみに。