今大注目のドラマー!ケンドリック・スコットのライヴを追っかけた

こんにちは、野澤です。

今年は他にもいくつかライブに行っていまして我が師匠であるケンドリック・スコットが出演するライブに2回ほど行ってきました。

久しぶりに師匠の凄さを目の当たりにしてどちらも違う印象を受けたのでその2つライブレポをしてみようと思います。

7/3(月) Marquis Hill Live at Blue Note Tokyo

今注目の若手トランペッターのマーキス・ヒルのバンドでケンドリックが来るとわかりすぐさま予定を空けて予約。

マーキス・ヒルはチェックしていました。サウンドは柔らかいトーンを使い、アンブローズのような跳躍できるスキルも持っていて技術力が高いトランペッターです。

オリジナルは少し難解で決して派手ではないのでちょっと凄さが分かりにくいタイプではありますが、ニューヨークサウンドな都会的なオシャレさはあります。

このマーキス・ヒルのアルバム「New Gospel Revisited」にケンドリックが参加していたので一応このアルバムを予習してライブにいきました。このアルバムも聴くのに結構神経を使います。

メンバーの凄まじい集中力

演奏時間になると客席が暗くなりステージが照らされ後ろの方からメンバーが現れました。メンバー全員がステージに立つとマーキスが最初にMCをしてくれました。

具体的に何て言ったのかは覚えてませんが「これから演奏はじめますが途中で止めることなく全ての曲を続けて演奏します。なので最初にメンバーを紹介させてください。」と言って先にメンバーを紹介していきました。

MCが終わりすぐさまマーキスが指示をして演奏が始まっていきます。アルバムとは違った曲が始まりますがすぐに音楽に惹き込まれていきました。

メンバーの息はピッタリ。4拍子なのかよくわからない不思議なリズムで始まりとても抽象的な雰囲気の中ソロが展開されていきます。

6曲くらい演奏していましたが1曲1曲にストーリーがあるように感じられて全体を通して聴いた感じはとてもドラマティックなステージでした。

曲と曲の間もほぼマーキスがエフェクターやミュートなどいろいろな道具を使いソロを展開して次の曲に繋いでいくような演出も最高でしたね。

メンバーもマーキスのソロが終わるのをすぐに察知して次の曲に入っていくので、お互いの考えが手に取るようにわかってる感じが本当にすごい。

メンバーそれぞれが曲の世界観を無限に広げていくので、凄まじいものを目の当たりにして面食らいました。

とにかく曲が抽象的。フレーズというかベースラインのようなリフもあったりするんですがどことなくつかめない感じが終始ありました。メンバー同士は確実に解り合って演奏しているのでこっちが置いていかれている感があってなんか悔しかったです。

本当にステージが始まって終わるまで全く無駄がありません。どこをとっても完璧な演奏でした。

このライブでのケンドリックの凄さ

この時のケンドリックは神がかっていました。大体リックと呼ばれるお決まりフレーズがありそれを活用するのがジャズマンあるあるでケンドリックも自身のリックを結構持っています。

しかしこのステージでは自分がこれまでに知っていたリックはほとんど出てきませんでした。これはあえてフレーズを使っていなかったのだと思います。

抽象的な曲が多いなかでリックのようなお決まりのフレーズを当てはめてしまうと、表現が分かりやすくなります。

マーキスとしては曲というより音の流れや雰囲気を大事にすることを意識していたので、それに応えるようなスタイルをケンドリックはあえて選んだのでしょう。

それなのにここぞというときはみんなの音が揃うので、この瞬間に“ギュッ”と、1つにまとまりバンドサウンドが爆発する。この感覚はライブでないと味わえない、いわゆる醍醐味でした。

その音楽の表現力の高さに驚愕して帰り道は言葉にならないほど打ちのめされました。。

とにかく言葉に表せないくらい音楽が素晴らしく、レポートしても良さが半分も伝わらないので次回このバンドが来る際はぜひ生で見てほしいバンドです。

10/17(火) SF Jazz Collective Live at Blue Note Tokyo

今年2回目の来日はあのSF Jazz Collective!  知らない方はこちらから前の記事を読んでみてください。

あのオールスターバンドSF Jazzにケンドリックが去年から参加。これだけでも嬉しかったのに来日してくれて生で見れる日が来るとは。

過去にSF Jazzで来日したことはなかったんじゃないかと思います。それが今回このタイミングで観れるなんて感無量です。これもすぐさま予約。

これも組曲

偶然このステージも演奏が始まる前にマット・ブリューワーからMCがあり「今から8つのピースを続けて演奏します。このツアーのためにメンバーで作ったオリジナルです。」と最初に喋った後はずっと演奏を続けていました。

メンバーは

  • クリスポッター(T.sax)
  • デイビッドサンチェス(T.sax)
  • マイクロドリゲス(Trumpet)
  • ウォーレンウルフ(Vibraphone)
  • エドワードサイモン(Piano)
  • マットブリューワー(Bass)
  • ケンドリックスコット(Drums)

でクリス・ポッターがディレクションしながら今回のステージの構成を決めたそうです。

オーディエンスにダイレクトに届く音楽

これは普通に聴いている分にはかなり爽快なメロディやコード進行になっていました。やっぱりSF Jazzならではのかっこよさはメンバーが変わっても引き継がれていきますね。

しかしジャズプレイヤーが聴く分にはかなり難解に聞こえます。どういうことかというと、1曲の中でタイムモジュレーションが繰り広げられてテンポが変わったかのような展開がソリストが変わるたびに起こっていました。

例えばピアノのエドワード・サイモンが4拍子でソロを取っていたと思えばクリス・ポッターのソロになれば5拍子。

マイク・ロドリゲスのソロになったと思えば速いスイングにいくなど1曲の中でテンポ感がコロコロ変わります。

しかし実際は同じテンポでタイムモジュレーションがかかっている状態なんです。本当に難解。。しかし楽しい。ジャズマンの心を掴んできます。

アカデミックな聴き方をすると頭パニックになりそうですが、普通にテンポチェンジしてると思って身を任せて聴いてるとすごくストレートに聴こえるのでメンバーのプレイの凄さは十分観客に伝わっていました。

このライブでのケンドリックは分かりやすいフレーズも多用していたので少し安心しました。知っているケンドリックが見れて楽しかったです。

スイングになったときはマット・ブリューワーとのコンビネーションも最高でドライブ感がかなりありましたね。

1つだけ不満…

このライブでは1つ不満がありました。それは隣のお客さんのおしゃべり。とても楽しみにして来ていたのに演奏中ずっと隣で喋っていらっしゃって音楽に没入できませんでした。。

これだけ凄いことをやっているのになぜ見ないのかと思ったり、一旦考えないようにして見ていましたが単純に隣で話されると気が散りますね。

瞬間瞬間は驚くテクニックもあって楽しめましたがステージトータルではよく覚えていません。。いやー本当に勿体無い。。

ライブの楽しみ方はそれぞれですが、少しでいいので周囲がどのように聞いているか見ていただけると…。

という感じでケンドリックスコットのライブを今年は追っかけることができました。来年こそは自身のバンドのオラクルで来てほしい。また来年も楽しみですね!



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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。