2ビートと4ビートの使い分けから入るひと味違うジャズインタープレイ

ずっと4ビートだともったいない

ジャムセッションでたまに見かけることですが、どんな曲を演奏してもずっと4ビート良くてテーマで2ビート、そして最初のソロから後は曲が終わるまでずっと4ビートのままということ、ありますよね。

もちろんプレイヤーたちが望んでそうしているのならそれで良いのですが、もし単なる惰性や他のプレイヤーのメッセージ=インタープレイに気づかぬままそうなってしまっているのなら、とてももったいないことです。

そこで今回は、ジャムセッションでもっとステップアップしたいというプレイヤーの方へ向けてジャムセッションで使える簡単な2ビート、4ビートの使い分けについて紹介したいと思います。

ここではこのライブ映像の一曲目を題材としてみましょう。

Wynton MarsalisのThe House of Tribesでの演奏で、今回題材とする一曲目はWhat Is This Thing Called Love?です。

このときの演奏はLive at the House of Tribesというアルバムとして発売されており、聴いたことのある方も多いと思います。

この動画の中での5分20秒前後、ソロの1コーラス目の最後までが2ビート(もしくは2フィールとも)、その後が4ビート(同じく4フィールとも)です。

その違いを楽器ごとに細かく述べていくときりがありませんが、大まかに言うと2ビートの部分ではベースの二分音符が基調となって曲が進んでいき、4ビートに切り替わると四分音符が基調となるということです。

何と言うことはない。名前のまんまですね。

もちろんどちらもそれぞれに特徴があります。ちょっと乱暴ですが、非常に簡潔に言い表すならば2ビートはゆったり4ビートはすいすい進んでいく感じです。

具体的な手法はともかくとして、というかそもそもそんなに難しい技術は必要ありません。

同じテンポなのにもかかわらず、ゆったりとした雰囲気で曲が進むのか、それともすいすいと流れるように進んでいくのかという違いを表現することができれば、今回挙げた動画ほどいかなくとも、そこそこメリハリのきいてスリリングな演奏が可能になるはずです。

ジャズはインタープレイに挑戦するのが楽しい

さて、ご存知の通りジャズという音楽においては演奏中に行われるプレイヤー同士のやり取りインタープレイが重要視されます。

インタープレイというと、とても繊細で難しそうな印象を持たれる方が多いかもしれません。ですから今回のタイトルにあるように、まずはこの2ビート4ビートかというフィールの使い分けから意識してみてはいかがでしょうか。

なぜならこれは技術的難易度が低いわりに、演奏に大きな影響を及ぼすのでインタープレイというものを理解する取っ掛かりとして非常に適しているからです。

フィールの切り替わりは多くの場合、曲中でいくつか表れる区切りの部分で行われます。

一番分かりやすいのは前テーマからソロへの導入部分です。

次に、ソリストが変わる場面

そして、今回参考にした動画のようにソリストが変わらなくともコーラスの頭でのフィールチェンジです。

曲によってはコーラスのサビの部分でフィールが変わったりもしますので、ここで挙げた例が全てではありません。しかし、初心者に近しい人でれば、上記の部分を意識してあげるとより分かりやすいでしょう。

フィールの切り替えの目的は先に書いたように、“ゆったり=2ビート”“すいすい=4ビート”かの使い分けによる曲全体のメリハリ付けです。

必ずというわけではありませんが、多くの場合は一旦すいすい進んだものがゆったりになるのは、その逆より大きなきっかけが必要になることが多いです(例えばソリストが変わったときやテーマに戻る時など)。

特に同じプレイヤーのソロ中での“すいすい”から“ゆったり”へのチェンジは、バラードなどの場合を除いてあまり行われません。

これは濃い味のものを食べた後にあっさりしたものを食べても、その美味しさに気づけないのと同じようなものだと僕は思っています。

もしそうしたければ、水を飲んで口の中をリフレッシュさせる必要がありますが、音楽においても同じようなきっかけが必要になることが多いんです。

本当はあるお下品な例え話をすると理解しやすいのですが…、とてもここでは書けません。どこかで僕を見かけたらこっそり尋ねてください(笑)。

フィールの切り替えは周囲の雰囲気重視

というわけでフィールの切り替えにチャレンジするならば、初めのうちは主に“ゆったり=2ビート”から“すいすい=4ビート”へのチェンジを。

そしてその切り替えタイミングとしては前テーマからソロへ、もしくはコーラスが変わるときを狙ってみましょう。

少し慣れてきたら今度はソリストが代わるか、後テーマへ戻るタイミングでの4から2への切り替えを狙ってみましょう。

ただし、ここに挙げたタイミングに闇雲にフィールチェンジすることを推奨している訳ではありません。

そもそもフィールの切り替えはインタープレイの一種です。自分の意思だけでなく、自分以外のプレイヤーの雰囲気もよく感じ取って切り替えのタイミングをはかるのがとても重要です。

まあ失敗したって殺されるわけではありませんから、初めのうちはえいっ! と気軽にやってみましょう。

もしかしたらあなたが試行錯誤している様子を見て、誰かが声をかけてくれるかもしれません。それが優しいアドバイスかどうかはまた別の話ですが(笑)。

とにかく、的確なタイミングでのフィールの切り替えに慣れてさえしまえば、上に書いたようなタイミングやパターン以外にもさまざまな変化を狙ったとおりに起こすことができ、そしてこれは一緒に演奏するプレイヤーにとって非常にありがたいことなのです。

ここで先に挙げた参考動画をソリスト目線から見てみましょう(下記の動画は、冒頭のものと同じものです)。

What Is This Thing Called Love?のWynton Marsalisのソロは3分54秒ごろからスタートします。

2ビートの部分はそこから2コーラス間ですが、初めの1コーラス目は少ない音数と小さめの音量で、高い音や長いフレージングはあまり見られません。

目に見える変化が現れるのは1コーラス目の最後の8小節目(4分27秒)辺りからです。急に音数が増え、音域と音量も増大しました。

特にこのコーラスの最後のトランペットのフレーズだけを聴くと次のコーラスで4ビートにいってもよさそうな感じですが、ここでは2ビートを維持します(後述)。

2コーラス目ではそれまでとは少し変わって音数、音量が増大し、高めの音や長めのフレージングも用いられるようになってきました。

そしてこのコーラスの最後のフレーズ(5分15秒)でリズムセクションを煽るかのようにして4ビートへ移行しました。

Wynton Marsalisがこの動画で吹いていることを直接真似するのは、テクニック的な意味では難しいことです。

しかし音数、音量、音の高さ、1つのフレーズの長さという側面から見ると、非常に明快にアドリブのストーリーが構成されており、そういった側面を自分の演奏の参考にすることは決して難しいことではありません。

特に、自分のソロがスタートしてから勢いよく演奏しだしてしまう人は多いのですが、初めから威勢よく演奏しだしてしまうとよっぽど引き出しがない限り後が持ちません。

ですから、リズムセクションの雰囲気にもよりますが、意図して演奏を盛り上げたいのならスタートのテンションは低めからの方がうまくいく傾向にあります。

また参考動画では1コーラス、2コーラスのそれぞれの終わりの部分では、どちらも短いモチーフを何度も繰り返して吹いています。これは「ぼちぼち4ビートに行っても良いんだよー」ないしは次の展開への提案をしているかのように聴こえないでしょうか。

リズムセクション目線で考えてみる

次にリズムセクションの目線から見てみましょう。

ソロのスタートから2ビートで落ち着いた雰囲気で進行していきます。

1コーラス目の最後(4分33秒)辺りでのトランペットの次の展開への提案を受けここで4ビートへ移行しても良かったのかもしれませんが、リズムセクションの判断は「もうちょい待ち」でした。

ただしコーラスをまたいで2ビートを維持してはいてもリズムセクション全体の演奏のボルテージはわずかに上がっています。特に2コーラス目ではベースが一度も全音符を弾かず、前のコーラスで多めに取っていたスペースを埋めるように演奏しています。

そして2コーラス目をいっぱいに使って2ビートでじわじわ焦らしてからのトランペットのフレーズ(5分15秒)を受け、リズムセクション全体がブレイク。3コーラス目の4ビートへ一気になだれ込んでいくわけです。

簡単に言い表すならば2コーラスに渡る焦らしプレイからのちょい寸止め、そしてそこからの一気にお楽しみタイム(?)をリズムセクションが上手く演出してくれたというわけです。

上にも書いたとおり彼らがやっていることをそのまま真似するのは技術的に難しいことかもしれませんが、まずは間の取り方や音量、フレーズの長さなどの側面から演奏の雰囲気を感じ取るよう心がけてみましょう。

それができるようになってくると今度はそれを利用して実際の演奏で役立てることが可能になってきます。

特に今回注目した2ビート、4ビートの切り替えは演奏全体に大きな影響を与えます。

演奏技術の優劣を気にしすぎず、まずは挑戦しないと何も始まらない

ここで紹介した動画での演奏は全てのプレイヤーが単に一流であるだけでなく、お互いの雰囲気を感じ取ろうとする姿勢に満ち溢れており、この曲だけでなく全ての曲で素晴らしい音楽のやり取りが行われています。

一般の方が参加する普通のジャムセッションでは残念ながら全てのプレイヤーがそうだということは稀でしょう。

あなたが的確なタイミングでわかりやすいシグナルを発したとしてもそれに気づかれずスルーされてしまうことなんてざらにあります。

だから普段からいろんなジャムセッションに通い、めげずにトライするのです。

繰り返しますが、演奏技術の優劣はそこまで重要ではありません。

周囲の雰囲気をよく感じ取り、その中でこうしたいという意思を持ち、あなたが感じた丁度良いタイミングであなたがやりやすいやり方でそれを表現するだけです。

あなたと演奏した人の中に偶然優れたプレイヤーがいたとしたらいつかあなたのシグナルを感じ取ってガツンと応えてくれるかもしれません。その瞬間の楽しさはまさに病み付きですよ。



ABOUTこの記事をかいた人

金村 盡志(かねむら つくし)

1986年生まれ。中学生から吹奏楽を通してトランペットの演奏を始め、高校生からジャズに目覚める。その後、原朋直氏(tp)に約4年間師事し、2010年からニューヨークのThe New Schoolに設立されたThe New School for Jazz and Contemporary Music部門に留学。Jimmy Owens(tp)氏などの指導を受け帰国し、関東近郊を中心に音楽活動を開始。金村盡志トランペット教室でのレッスンを行いながら、精力的に活動を続けている。