ピアノトリオの聴き方とスタイルのちがいをプロのジャズドラマーが解説する

ジャズ ピアノトリオ

皆さんはピアノトリオのジャズをよく聴きますか?

基本的にピアノトリオの演奏形態はピアノ、ベース、ドラムという3人で行われます(たまにピアノ、ベース、ギターという形態もありますね)。

ピアノトリオといえばこのピアニストでしょう! と挙げられる代表ピアニストはたくさんいますが、この人たちの演奏の仕方(アンサンブル)に着目すると、スタイルやバンドのこだわりが見えてきて聴き方が変わります。

今回はさまざまなピアノトリオの演奏スタイルから、各スタイルに近いであろうプレイヤーを紹介していきたいと思います。

まずはどういう演奏のスタイルがあるのかあげてみましょう。

  1. 王道スタイル
  2. インタープレイスタイル
  3. コンテンポラリースタイル

かなり独自の視点ですが、ざっくりと上記の3つに分かれると思います。

それではひとつずつ見ていきましょう。

王道スタイル

王道と一口でいっても沢山ありますので、私なりの王道ピアノトリオを先にあげてみます。

  • バド・パウエルトリオ
  • レッド・ガーランドトリオ
  • ビル・エバンストリオ(初期時)
  • オスカーピーターソントリオ
  • ベニー・グリーントリオ 
  • キース・ジャレットトリオ

ビバップやスタンダードを中心としたピアノトリオが多いですね。

基本的にピアニストが自由にソロを展開していってそれをベースとドラムがガッチリとサポートしていくというスタイルです。

演奏スタイルが決まるのはピアノだけじゃなくドラムと特にベーシストの演奏の仕方が大きく関わります。

王道スタイルだとソロのバッキングとしてグルーヴとハーモニーラインを導いてあげる役割をしています。

ドラムとベースはアウトをするような危険の道はあまりいかないかもしれませんね。

あとはそこに黒人特有のピアノトリオの力強い音色だったり、白人の繊細な音色だったりと同じ王道でもカラーが変わってきます。

オスカー・ピーターソントリオ

 

ビル・エバンストリオ

 

個人のキャラクターがよく出ている演奏ですがピアノのタッチ、明るさ、音の太さなどピアニストによって音色はさまざまですよね。

フレーズの歌い方もアクセントの付け方も、よく聴くと違いがわかるので色んな人を聴き比べすると面白いですよ。

オススメの王道スタイルのピアノトリオのアルバム

■バド・パウエル『The Scene Changes』

バド・パウエル(piano)、ポール・チェンバース(bass)、アート・テイラー(drums)のピアノトリオです。

テーマを演奏した後はひたすらバド・パウエルがソロをしてテーマに戻ってくるのでベース、ドラムは終始ガッチリとサポートしてます。

ドラムのアート・テイラーはアルバム全編ブラシで演奏していてベースの音程やピアノがクリアに聴こえてとてもバランスのいいトリオサウンドです。

ウイントン・ケリー『Kelly At Midnight』

ウイントン・ケリー(piano)、ポール・チェンバース(bass)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(drums)という、マイルス・デイビスバンドでも活躍したピアノトリオです。

ひたすらスイングするのでとても気持ちいいサウンドが最初から最後まで味わえます。

王道のピアノトリオで何か聴きたいのであれば超超オススメのアルバムです。

■ビル・エバンス『Everybody Digs Bill Evans』

ビル・エバンス(piano)、サム・ジョーンズ(bass)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(drums)のトリオです。

こちらもフィリーが参加していますが、ベースが違うとサウンドが変わりますよね。

こちらの方が繊細にグルーヴしていくイメージです。

ビル・エバンスはベースやドラムにも神経を払って演奏していて、3人で音楽の流れを作るインタープレイを大事にしています。

そのインタープレイがこの後くらいに更に磨きがかかります。

インタープレイスタイル

インタープレイとは皆んなが固定概念に縛られないで自由に音楽を発展させるスタイルです。

ベースは4分音符をずっと弾かなければいけないとか、ドラムはシンバルの4ビートをずっと続けてなければいけないというのは一般的に言われるルールであって、ジャズにおける絶対的なルールではないのです。

逆に、その固定概念に縛られてしまうと、自由に演奏できなくなってしまうときもあります。

そんなジャズの演奏を実験的に変えていった人の代表例がビル・エバンスです。

テーマのメロディからベースがすでに絡んできてますよね。

これにより、ジャズの演奏方法の幅が大きく広がりました。

さらにドラムも自由に絡んできます。

ピアノ、ベース、ドラムで1つの音楽であると同時にメンバー1人ひとりが次のシーンを判断して流れを創っていきます。

とても高度ですが展開が予想できなかったり、そこでみんなで音が合うんだ! という驚きがあって王道のトリオとは違った面白さがあります。

そういったインタープレイでのピアノトリオと言えば

  • ビル・エバンストリオ(中期以降)
  • ポール・ブレイトリオ
  • アンドリュー・ヒルトリオ
  • ブラッド・メルドートリオ
  • ジェイソン・モラントリオ
  • チック・コリアトリオ

ジェイソン・モランは現代風にインタープレイをさらに昇華させたピアニストですね。

最初はフリーで訳わかんないことやっているように見えますが、途中からスッと曲に聴こえるようになります。

本当にこのトリオならではのアンサンブルです。

聴き流すというよりじっくり聴いて神経使って聴くタイプのピアノトリオのスタイルですが、ハマればとても面白いです。

オススメのインタープレイスタイルのアルバム

■ビル・エバンス『Portrait In Jazz』

先ほど紹介したビルエバンスのアルバムです。

ビル・エバンス(piano)、スコット・ラファロ(bass)、ポール・モチアン(drums)というビル・エバンスが一番信頼していたピアノトリオの編成です。

■チック・コリア『Now He Sings, Now He Sobs』

チック・コリア(piano)、ミロスラフ・ビトウス(bass)、ロイ・ヘインズ(drums)でチック・コリア初期のアルバムです。

ビトウスの自由なベースラインに柔軟性のあるビートを刻むロイ・ヘインズがいい味を出しています。

この頃のチックコリアは少しガツガツしていて若い感じがします。

これはこれでいいですよね。

■ブラッド・メルドー『The Art Of The Trio vol.4』

ブラッド・メルドー(piano)、ラリー・グラナディア(bass)、ホルヘ・ロッシー(drums)のトリオで、最近のピアノトリオではこれがベストだと思うアルバムです。

最初の曲All The Thingsは7拍子でとてもやりにくいはずなのに縦横無尽にみんな音楽の中で駆け回っています。

今はホルヘ・ロッシーがピアニストに転向してドラムがいなくなったため、ジェフ・バラードに変わりました。

ジェフも相当すごいですがこのアルバムのトリオの方が好きという人は多いんじゃないでしょうか。

このインタープレイスタイルでも十分現代的ですが、もっとプレイヤーのオリジナル曲で注目を集めている人たちもいます。

コンテンポラリースタイル

コンテンポラリーとこれもまたひとまとめできないですが、さっくりとどういう人たちがいるのかを紹介します。

  • アーロン・パークストリオ
  • シャイ・マエストロトリオ
  • アビシャイ・コーエントリオ
  • ロバート・グラスパートリオ
  • アーロン・ゴールドバーグトリオ
  • ダニー・グリセットトリオ

まだまだいると思いますが、このプレイヤーたちはメンバーのオリジナル曲を中心に演奏しています。

スタンダードの小刻みなスイング系よりはもっとイーブンなリズムの8ビート系に近い曲が多いのが特徴です。

次はアビシャイ・コーエンというベーシストです。ピアノトリオで彼のオリジナルを中心に活動しています。

この動画を見た後、下の動画も見てみましょう。

ちょっと似ていますよね。

これはシャイ・マエストロのトリオですが2人ともイスラエル出身なのです。

ここ数年はニューヨークのジャズシーンで活躍するミュージシャンの多くがイスラエル出身です。

僕がニューヨークにいた頃にもイスラエル人のプレイヤーが多く、みんなこういうテイストのオリジナルを作って演奏してました。

最近はこういったイスラエルジャズも当たり前になってきています。

次はロバート・グラスパーです。

今やヒップホップの世界にどっぷりとなっていますが、初期の頃はもっとジャズ寄りなテイストで演奏していました。

最初はおふざけMCをやっているので本編は5:30あたりから。

今までのピアノトリオとは違うグルーヴとオシャレな感じがあります。とてつもないインタープレイとテクニックで当時はかなり新しいと感じました。

ビートに少しヒップホップの要素もあってブラックミュージックなピアノトリオですね。

現代のジャズは形に縛られず世界中の音楽や色んなジャンルと混ざり合いながらジャズは進化しています。

オススメのコンテンポラリースタイルのアルバム

■ロバート・グラスパー『In My Element』

ロバート・グラスパー(Piano)、ビセンテ・アーチャー(bass)、ダミオン・リード(drums)のメンバーです。

イーブンなフィールやトリオのサウンドがかなりオシャレです。

スピード感もめちゃめちゃ速いのでそれを追って聴くのも楽しいでしょう。

■シャイ・マエストロ『Untold Stories』

シャイ・マエストロ(piano)、ジョージ・ロジャー(bass)、ジブラ・ビッツ(drums)のかなりイスラエル色が強いアルバムです。

特にTreelogyはかなり聞き応えがあります。

■ダニー・グリセット『Promise』

ダニー・グリセット(piano)、ビセンテ・アーチャー(bass)、ケンドリック・スコット(drums)というメンバーです。

ダニー・グリセットは、ハービー・ハンコックに次ぐ音の魔術師と呼ばれるピアニストです。

このアルバムは顕著に出ていてハーモニーの使い方やベースとドラムとの絡みがかなり複雑ですがスタンダードとオリジナルを半々にやっていてとてもバランスがいいです。

メロディックでアイデアの使い方も桁違いのオススメピアニストです。

最後に

いかがでしたか?

自分はこのトリオのスタイルがいいとか、この人が聴きやすいとかありますよね。

いつもわかりやすくするためにスタイルごとに分けたりしていますが、きっとどのプレイヤーもスタイルの垣根なくお互い刺激し合って自分のスタイルを創っているんだと思います。

これを機に沢山のピアノトリオを色んな角度から聴いてみるととても面白いですよ。

それではまた次の記事で!



ABOUTこの記事をかいた人

野澤 宏信

野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。