ゴマ。
日本では縄文時代の出土品にはその姿が見受けられるというから日本文化に根付いた食材と考えていいでしょう。
栽培するようになったのは奈良時代だそうで、油分も多いことから油として、また薬膳、薬味といった使い方もされる八面六臂な活躍を見せる一品です。
しかして原産は日本ではなくアフリカの方だとか。ナイル川流域にはその原型が見てとれるよう。
丸っこい楕円系の種子を想像しますがもともとは矢尻のような形をしていました。
僕たちの知る姿は品種改良されてからのものです。
このゴマが世界に分布するにはひょうたんが一躍買った、という説もあります。
ゴマのような小さい種子はなにせ持ち運びが効く。
しかしそのままでは空気中の湿気の影響も受けるし、手でもっていてはポロポロ落としてしまったり、風に飛ばされたりして保存性が悪い。
アフリカにはひょうたんを加工して利用する文化がある。内部をくりぬいて乾燥させたりすると、あら不思議。なにやら頑丈そうな容器ができあがりました。
中にゴマを入れてみる。ちょうどいい。
と、いうことでひょうたんに保存されることもあったそうです。
このゴマ入りひょうたん、もちろんそのまま人間が持ち運んで他地域へ分布が広がったということもあるようですが、海を渡ったのでは、という説もあります。
ひょうたんは防水性にも優れていました。きっちり封をされていれば水は混入しづらい。
そもそもアフリカではひょうたんを水の保存容器にしたり、食器としても使っていたそう。
また楽器にも使われていたというからマラカスのように使用していたのかも。
そうすると持って移動する人も出てきます。
どこかの誰かがゴマ入りひょうたんを持ちながら海辺をすたすたと歩きます。
なんならシャカシャカ振ってリズムをとりながら。
今日はなに食べようかな〜なんて考えていたら・・・おっと、手がすべってひょうたんがすってんころり。
海に落ちて引き波であっという間に沖へ。
南太平洋をどんぶらこと旅し、どこかの海岸に打ち上がる。
これまた、海辺をすたすたと歩いていた別大陸の人。奇妙な形のものをみつけます。
持ち上げてみる。中から音がする。
出してみるとなにやら種子だ。ちょっと食べてみる。コクがあってうまい!
これ、埋めたらもっと生えてくるかも。
土にでも埋めてみるか。
と、いった具合にアフリカからエジプト、インドなどを経てさらに大きく分布していった。
と、いう説もあります。
結構早いスピードで世界に普及したようで、現在と違い海運も楽な時代ではありませんから、このひょうたんどんぶらこ説は理にかなっているように見えてしまいます。
まあ、真実の探求は頭のいい人たちにまかせておいて。
さっそく食べる話に移りましょう。
ゴマは日本でも大変重宝され、良質なタンパク質、脂質が人々の心をがっちりつかみます。
懐石料理にも精進料理にも使用されました。
現代でも日本のどこかで必ず食されていると断言できるほど根付いた食材です。
炒って、すって、練って、潰して、ひねって、そのまま、はたまた他食材と合わせて、ましてや油分だけ抽出して炒めて、揚げて、かけて・・・etc。
調理方法が多く、またそのどれにおいてもすばらしい風味を与えてくれる。
大変優秀ですね。
そんなゴマはマグロに合わせるとおいしいと言ったのは美食家で著名な魯山人であったか。
今でも歴史の深いお寿司屋さんなんかで赤身の握りに合わせてくれたり、角造りにゴマをあえてあったり。
マグロの中でも赤身と合うとして種々様々に食されます。
試しにちょっとつくりましょう。
マグロの漬けとゴマを食べる
マグロの赤身を漬けにします。
漬けにする方法もいろいろあるようですが、ウチでは2種類です。
切り身になったものをそのままお醤油、酒、みりんと合わせたものに一晩漬けるもの。
赤身のサクの周囲を湯霜(お湯をかけて軽く火を通すこと)にし、それをお醤油、酒、みりんと合わせたものに数時間漬けるもの。
どちらも同じマグロの赤身から作れますが大分味わいが変わります。
切り身のほうは特に難しくないです。お魚屋さんやスーパーで売っているものをそのまま漬けます。
醤油:みりん:酒は1:1:2です。お酒は先に煮きっておいて冷やし、みりん、醤油を合わせて漬けます。
なんとなく漁師さんの調理っぽいのはウチが港町の家だからかもしれません。
大体冷蔵庫で6時間くらい休ませてからおいしく食べられます。
サクの方はまずはパットなどに身を置いて、上に毛羽立たない調理用のコットンシートなどをかけます。
その上からゆっくりとお湯をかけていきます。
均一に火を入れたいのでうごかしながらかけましょう。
裏側も同じように。
10秒ほどでお湯を捨て水分をよく切って冷蔵庫へ。
漬け汁はさっきとちがってお醤油、みりん、酒を1:1:1の三同割です。
まずはお酒とみりんを煮きり、お醤油をくわえて一煮立ち。
僕はアクをとりませんが気になる方はアクをとって、さきほどのサクが漬け汁にひたるようにします。
漬け汁はあついまま入れるので耐熱の袋がいいですね。
冷蔵庫で3時間程度やすませて完了です。
それぞれの形をつくって食卓へ。
漬けマグロは実は一晩漬けちゃいました。
当日食べようと思ったのですがちょっと別で食べる予定が急遽入ってしまって。
そのためつけあがりの色合いが濃くなってしまいました。ちゃんとしたほうは昔のレシピ記事でどうぞ。
切り身のほうにはひねりごま、湯霜にしたほうはそのままゴマをかけます。
ひねりごまとは食材にゴマをかける際に指ですこしひねってゴマをつぶしながらかけることです。
風味がたつのと、すりごまのように食感をつぶすのではなくゴマのプチプチとした食感をうっすら残したいときに使えます。
潰し加減は塩梅です。
まずは湯霜にしたほうから。
うん。おいしいです。漬けの力強い味わい、甘み、塩み、それにゴマの風味がうっすらと立ちます。
湯霜にした部分の火の通った食感は舌触りいいわけではないので、ゴマのプチプチとした感じがよく合います。
つづいてひねりゴマをかけたほう。
こちらはトロリとした食感につぶれたゴマの強い味わい、そしてまたプチプチとした食感でいつもよりよく噛むように。
これがマグロのうまみを感じさせてくれます。
マグロの赤身はゴマとよく合いますね。
ほかのお魚と合わせてもここまでそれぞれの素材の特徴がハッキリとするものはすくないんじゃないですかね。
うまい。
あと一品くらいつくりましょうか。
利久揚げをつくる
利久揚げ(りきゅうあげ)というのもあります。
戦国時代の茶の名人、千利休がゴマを好んで精進料理に取り入れたとのことからゴマをまぶして揚げる、もしくはゴマ油で揚げたものを利久揚げと呼びます。
このときの利久の“久”の字ですが、千利休からとるなら利休揚げとなって“休”の字ですが、諸説あって久を使用することが多いです。
利久揚げを扱うお料理屋さんが休むという字の“休”を縁起が悪いとした説と、千利休は豊臣秀吉に切腹を命じられたので利休のままの字を使うのはまずいということで“利久”にしたとか。
利久下駄や利久饅頭なども久の字を使っていて、後者を気にして前者を建前にしたような気もしますが・・・。
とにもかくにも利久揚げは野菜だけではなくお肉やお魚にも使われます。
ゴマの量も異なり、精進料理では贅沢にならないようゴマ少なめだったり、いやいやカロリー摂取のために多めだったり。
いろいろです。
完成〜。
高野豆腐、かぼちゃ、万願寺唐辛子の利久揚げです。
これは結構簡単で。
気持ち重めに作ったころもに竹串に刺した食材をくぐらせ、パットに敷いたゴマをまとわせて揚げればOK。
ころもを薄力粉、水、氷、お酢少々、塩少々にすると失敗が少ないです。
高野豆腐は黒ゴマと、
白ごまで2色にすると鮮やかでいいですね。
では、軽く塩をつけていただきまーす。
うんうん、まあ、ぼちぼち。
精進料理ですからね。動物性タンパク質にあふれた現在ではそこまで大きな感動はありませんが、精進をしているお寺のお坊さんなどであればこのゴマを揚げた強い油分、風味、そして高野豆腐の食べがい。
夢中で食べるでしょう。
現在では素朴な味わいに捉えられると思います。
でもおいしい。滋味があります。
ちなみに、揚げると白ゴマ、黒ゴマとも特徴が薄れます。
いやー、これは地味で滋味で、でもなにか沁みる。
じんわりおいしいです。
単純に揚げ衣にゴマを混ぜ込むだけのものも利久揚げです。
これでも結構風味はたつんですよね。
と、いうことでゴマを食べてみました。
世界の使い方ではさまざまで、ひよこ豆とまぜたフムス、ゴマのスープの担担麺、利久揚げのように揚げ物に使ったり。
和食での使い方が注目されますがこれだけ身近な食材で世界的に利用されているもの、食用油以外ではほかにないんじゃないかな。
まあ、ゴマも食用油の1つなんですが。
今回は取り上げませんでしたが、よくスーパーなどで売っている煎りゴマと、生ゴマを炒って風味を出すのでは雲泥の差です。
ゴマに興味を持たれたらぜひ一度ゴマを炒ってみてください。
それではまた〜。





