魚が好きです。
夏のスズキの洗いに秋口の落ち鮎の甘露煮、冬のフグ、アジ、春のサワラ。
鮭は皮と皮下脂肪の部分を焼いたものだけをお茶漬けにしたり、鯛子を出汁で炊いたものなら日本酒でもお米でもいける。
ニシンはぬか漬けも米麹に漬けたものもおいしいし、マグロやカツオは湯霜にしてヅケにするのもいい。
鯉の洗いも好きだし鮎は背ごしもいける。ブリは内臓を焼いたものが抜群においしいし、マカジキならメキシコの粗塩を使った塩焼きがうまい。
銀だらの西京焼きは好物から外すことはできないし、湘南育ちとしては生しらすも忘れてはいけない。
刺身でも塩焼きでも、利休焼きでも幽庵地に漬けた焼き物でも青酢がけでも、なんでも好き!
が、1つだけ苦手なお魚料理があります。
それが、パサついた食感のお魚。
物が悪い、という理由だけではなく季節外れや個体差によってもパサつきが出ます。
こればかりは天然自然のものですから、しようがない。
しかし、せっかく命をいただくのだから無駄にはしたくない。
それならば!
オイル煮にしてみてはいかがでしょう。
サワラのオイル煮を作る
オイル煮とは、つまりコンフィと同じ調理方法です。
実を言えば肉でも魚でも、はたまた貝、甲殻類であっても、ほぼすべての食材に応用が効きます。
ただし、オイル煮というからには低温であってもやはり高温。
トマトや水分の多い食材だとちょっと危ないです(トマトは揚げると皮が破れ中の水分が油に放出され油ハネが起きる)。
しかも油と水分というのは極性が違い、水の分子は電気を帯びますが油の分子には極性がありません。そのため混ざらずに分離します。
分離した水分は見た目も悪いし、再度温めるとまたハネます。
というわけで、水分の内包が少なめのものの方がうまくいきます。
目安は鶏肉。
鶏肉よりも少ない水分なら大丈夫、多い場合はあまり向きません。
サワラのオイル煮の下ごしらえ
今日はサワラです。
サワラは春の季語として有名です。春告げ魚とも呼ばれます。
僕の住む小田原でもよく獲れます。
で、春の季語としてほど有名なお魚なので、春は産卵前で栄養を溜め込んだ状態。
夏に産卵を終えると身の味はかなり落ちます。公開した今頃(8月下旬)はあまりいい時期ではありません。
が、たまに脂ノリのいいものが獲れます。
今回はそんな珍しい一匹の切り身。でもやはり春に比べれば少し落ちますね。
魚をよく食べる方はご存知の通り脂の落ちたサワラは火を通すとかなりパサつきます。
魚焼きの網から外すときに身が崩れるほどのものもありますね。
そこで、オイル煮の登場です。
サワラの中骨はかなり凶暴です。
逆に言えば太く強いために口に入れればすぐ分かるので飲み込んでしまうことは少ないと思いますが、焼きものとちがってオイル煮は身がやわらかになるためにオイルから身をすくいあげたときに骨を起点に崩れてしまうことがあります。
そのためできれば事前に抜いておいたほうがいいです。
家で食べるだけならばそのままでも大丈夫です。
中骨の部分を身ごと包丁で切れ込みを入れて取り除いてしまっても大丈夫です。
トレーに塩を敷きます。
大体漬けるサワラの1%くらいの分量の塩がいいですかね。僕は目分量です。
大体一切れにつき小さじ3くらいかな。
切り身の横側、身の部分に塩をなじませます。
あとはラップをして一晩冷蔵庫へ。
サワラをオイルで煮る
今回は翌日のお昼にとりだしました。塩によってサワラの水分が少し外に出ているのでキッチンペーパーをあてがって除去します。
その後直火にあてられる耐熱容器にまずは油を入れます。
かならず先に油を。サワラを先にいれると底面に油がまわらず容器に焼き付きやすくなってしまいます。
油は今回はヒマワリ油を使用しましたが植物性のものならばなんでも合います。
個人的には米油がさっぱりして好きですが、夏のサワラのように脂が少なければコッテリとした味わいの油も合いますよ。
火加減は弱火で油に鷹の爪を入れました。
鷹の爪の種はそのままにするとかなり辛みがでるので抜いています。
油があたたまってきたらしばらくの間切り身を油に泳がせるようにゆらゆらと動かします。
こうすることで容器に焼き付くことを防止できます。
もしも焼き付いて動かなくなってしまったらしばらくそのままにしておきましょう。
熱で身が縮めば容器がはがせるようになります。
いい感じに熱が入りましたね。画像で10分ほど経過。
あと5分くらいは熱を通します。
15〜20分(身が薄ければ15分)熱を通すとパサパサしてしまいますがオイル煮ならふんわり仕上がりますので大丈夫。
最後3,4分くらいは皮目に熱い油をかけまわしましょう。
油の中でひっくり返してもいいですが、サワラの皮目は熱を通すと内部でふくらみがちです。
分かりにくいかもしれませんが油をかけまわしただけでも皮目が少しふくらんでいます。
こうなったら一度油をかけるのをストップ。少し落ち着いたら作業再開。
あまり一気に熱を通せばこのふくらみが割れます。焼き魚の皮目の気泡はアズキ、ともよばれますが割れると見た目がかなり悪くなる。
皮下脂肪の柔らかな部分も火が入りすぎて食感が悪くなるので、ここは慎重に。
そして完成。
このまま冷めるまで放置して、ラップをして冷蔵庫へ。
そして一晩オイルにつけ込みます。
完成
一晩おくとこんな感じ。
塩を強めにすればもう1日くらい漬けておけます。
食べるときに、同じ容器で温めて完成です。
香りがいいですね。
箸を入れたときの感覚がふわりとしていい。
塩も一晩おいたことで身によく回っています。
おいしい。
サワラは西京焼きなども有名ですが、身がカチッと固くなりがちです。
やわらかさを味わうにはオイル煮はオススメです。
時間はかかりますが手間自体はそこまで必要としません。
ぜひ、夏のサワラで試してみてください。
鷹の爪と食べるとビリッと辛い。でも嫌いではない。