こんにちは、野澤です。
今年(2026年現在)は偉大なるトランペッター、マイルス・デイビスの生誕100周年ということで世界中でトリビュートが行われています。
この間もブルーノートにカート・ローゼンウィンケル、マーク・ターナーが参加するトリビュートバンドが来日していましたし、ニューヨークのsmokeでもビリー・ハートが別でトリビュートしていました。
ジャズ界に多大な影響を与えた人物であり、あまたのジャズミュージシャンと関わり、若いミュージシャンをレジェンドプレイヤーにまで育て、リーダーとしてもミュージシャンとしてもカリスマ性を持つマイルス。
いつもは彼の有名なアルバムをピックアップするところですが、マイルスの有名アルバムについては他サイトや動画など、紹介から詳細な解説したものまで枚挙にいとまが無いほど。
そこで、今回は少しマニアックなマイルスをピックアップ。
“有名”じゃない、“ファン”が多くない、“あまり知られて”いない、“誤解されている”かもしれない、いわゆる“じゃない方”のマイルスデイビスのアルバムをご紹介したいと思います。
“マイルスらしくない”アルバム
“マイルスらしくない”というかまだマイルスの演奏スタイルが確立する前のアルバム「Birdland 1951」。
長らく未発表だった1951年のバードランドでのライヴレコーディングブルーノートレコードが2004年にリリースしました。
51年の2月、6月、9月のライヴ曲を集めたものでメンバーはJJジョンソン(Trombone)ソニー・ロリンズ(T.Sax)ケニー・ドリュー(Piano)トミー・ポーター(Bass)アート・ブレイキー(Drums)ビリー・テイラー(Piano)チャールス・ミンガス(Bass)など、多くの有名ミュージシャンが参加しています。
まだみなさんがお好きなマイルスらしい演奏はそこまで出てきませんが、このときのマイルスはキレキレの演奏で後年になるにつれ吹かなくなったビバップフレーズ満載。
1曲目の”Move”からテンポ340くらいのアップテンポの中8分音符のフレーズでブレイキーの煽ってくるリズムに乗っかるようにブローしていきます。
マイルス自身はディジー・ガレスピーやチャーリー・パーカーのようにトランペットを吹くことができないから自身のプレイを見極めてクールジャズという新しいジャズを作ったと語っていますが、そうは言ってもここまでビバップを追求していたとは。
偉大なプレイヤーの【できない】のレベルの高さを感じます。
どの曲もいい意味でマイルスらしくないビバップフレーズがたくさん聴けるアルバムです。一聴の価値ありです。
“マラソンセッションじゃない”マイルス
マラソンセッションといえばマイルスバンドの第一黄金期であるジョン・コルトレーン(T.Sax)レッド・ガーランド(Piano)ポール・チェンバース(Bass)フィリー・ジョー・ジョーンズ(Drums)のメンバーで「Workin’」「Relaxin’」「Steamin’」「Cookin’」の4枚を収録したことを指します(マラソンセッションについてはこちらから復習してください)。
マラソンセッションには全て「~in’」と名前がついていますが、実はもう1枚「Walin’」というアルバムがあります。
こっちのアルバムはマラソンセッションではなくコンピレーションアルバムで、ラッキー・トンプソン(T.Sax)JJジョンソン(Trombone)デイヴィッド・シルドクラウト(A.Sax)ホレス・シルバー(Piano)パーシー・ヒース(Bass)ケニー・クラーク(Drums)というメンバー。
「Miles Davis All Stars」「Miles Davis Quintet」「Blue Haze」の曲を収録しており、「Blue Haze」の時にレコーディングしたけどCDには入れられなかった未発表曲の”Love Me Or Leave Me”がこのアルバムに入っています。
マラソンセッションではどれもピリッとしたバンドの雰囲気や第一黄金期の勢いがある演奏が収録されていたのとは対照に、「Walkin’」ではセッション的でリラックスした空気感があります。
それにクールジャズの名残があるので都会的なサウンドで肩の力が抜けた大人の雰囲気も漂います。ホレスのコンピングが鋭くケニーとのコンピングの相性もとてもいいですね。
ジャケットもとてもオシャレなのでLPで飾っておくのもアリかもしれません。
“第二黄金期じゃない”アルバム
さきほど取り上げた第一黄金期の解散後に少し間があいて第二黄金期と呼ばれるマイルスバンドが誕生しました。
メンバーはマイルスに、ウェイン・ショーター(T.sax)ハービー・ハンコック(Piano)ロン・カーター(Bass)トニー・ウィリアムス(Drums)のクインテット。
スタジオレコーディングでは「E.S.P」からこのメンバーですが、このメンバーになるまで少しの移行期間がありました。
「Seven Steps To Heaven」ではハービーとロンとトニーがバンドに加入。しかしこのときのテナーはジョージ・コールマンというプレイヤーでウェイン・ショーターではありませんでした。
同メンバーで「Four & More」というライヴレコーディングもしていて、ここでとてつもない音楽が繰り広げられています。
最初から最後までジェットコースターに乗せられているかのような目まぐるしいスピードで音楽が展開されていき、内容もテクニックも完成されています。
トニーのコンピングの切れ味、ロンの周りを束ねる力、ハービーの音楽を異次元に導くハーモニーが今までのジャズにはない感じでジャズ界に風穴を開けてきました。
ただコールマンのプレイはウェイン・ショーターのような新進気鋭というわけではなく、トラディショナルなスタイルでコードトーンを重視するようなプレイだったのでこのバンド内でのコンセプトにそんなに合っていないと思われていました。
そんなコールマンのプレイに痺れを切らしたのがドラマーのトニー。
気に入らずコールマンのソロのときに叩くのをやめたりするなど演奏中に嫌がらせをし始めました。
トニーは実際にマイルスにもメンバーチェンジを迫ったらしくトニーと仲の良かったサム・リバースを入れてくれと言って、実際「Miles in Tokyo」にはコールマンの代わりにサムが参加。
マイルスは最終的にジャズメッセンジャーズで活躍していたウェインに目をつけて彼をバンドに入れてサックスプレイヤーを巡る騒動は収束することになります。
「Four & More」は完成度が高くマイルスバンド第二黄金期として認知しているかたもいるようなのですが、厳密にいうとこのアルバムはまだ第二黄金期手前。
じゃない方のアルバムなのです。
息子と甥が参加したアルバム
マイルスの息子のエリン・デイビスと甥のヴィンス・ウィルバーンJrがマイルスのバンドに参加したことがあります。
エリンはパーカッションとしてツアーに参加し、ヴィンスの場合は「You’re Under Arrest」「Decoy」のアルバムにドラマーとして参加しています。
マイルスの自伝の中でも書いてありましたが結構センスがよかったから誘ったと語っています。
「You’re Under Arrest」のアルバムはジャズではなくポップスに振ったアルバムでその中でも”Human Nature”と”Time After Time”は名曲として今でも世界中のミュージシャンが演奏していますね。
その”Human Nature”でヴィンスがドラムを叩いています。低重心なグルーヴにサスティンが短いタイトな音でうまく曲の雰囲気を作っています。
アルバムタイトルである”You’re Under Arrest”ではアル・フォスターがドラムで、自分的には断然こっちのほうが好みのドラムではありますが、、
ヴィンスはマイルスの七光でバンドに入れてもらったと思われるのが嫌で必死に練習したそうで、幼い頃もマイルスのライヴを見に行きトニーやディジョネットを間近でかぶりつきで見ていたそうです。
そもそも音楽にかける熱意が人並みではなくプロになるべくしてなったプレイヤーだったのでしょう。
メンバー構成や音楽について大変強いこだわりを持つマイルスでしたが、こういった一面も持っていたことに驚きです。
決して内容は聞けない訳ではないので、一度聞いてみてください。
以上、少しマニアックなマイルスのアルバムを選んでみました。
ジャズファンであれば多くのマイルス情報を目にすると思いますが、あまり取り上げられないマイルスのお話もたくさんあります。
どれも面白いお話ので自叙伝や映画もご覧いただけるとマイルスや彼に関わるプレイヤーを深掘りできて楽しいと思います。














