速い曲を演奏するための大前提
ジャズをやっていると必ずと言っていいほどぶち当たる悩み。それが「速い曲をちゃんと演奏できるようになりたい」という思いですよね。
今回は速い曲を演奏するためにはどう練習すればいいか、をお伝えしたいと思います。
僕自身もテンポ300以上でどんな曲もスラスラというわけではありませんが、速いテンポの曲に苦戦しているという方に読んでいただいて、何かヒントになるものを得ていただければと思って書いてみました。
最初に、楽器の演奏技術はそこそこ磨いておきましょう(笑)。
当たり前のことではありますが目標とするテンポで8分音符を刻むことができる程度は必要です。
アドリブの技術に関しても同様です。アドリブ初心者の方がこの記事を読み進んでもポカンとするだけかもしれません。
まずはミディアムとかミディアムファーストと呼ばれるようなテンポのスタンダード曲を、カッコよくなくてもいいので無難に演奏できるようになるのが先決です。
以上の前提をクリアしているという方は、次に目標テンポと曲を設定しましょう。
今回のテーマに合わせてCherokeeを演奏してみました。まず、記事全体を読んでからご覧ください。
いきなりものすごく速いテンポに挑戦するのは達成より先に心が折れてしまいますし、難易度の高い曲というのもやめておきましょう。
個人的にはアップテンポの定番曲であるCherokeeやリズムチェンジの曲などがおすすめです。
キモは脳を慌てさせないこと
ジャズは、というか人間が行う全ての行動は基本的に脳が指令を出して行っているものです。
ジャズは心で演奏するんだという声も聞こえてきそうですが、解剖学的に心という臓器は存在しませんので、ここではそれも含めて脳ということにしましょう。
アップテンポの曲に限らず、脳がわずかでも焦っている状態では良いパフォーマンスを発揮することはできません。ですから以下に挙げるアドバイスは全てこの点にフォーカスして考えられたものです。
1.まずは歌ってアドリブできるか
まずはトランペットを机に置きます。そして上手ではなくてもいいので、目標テンポでその曲のアドリブを声に出して歌ってみましょう。
もし全然歯が立たないという場合は目標テンポが速すぎるか曲が難しすぎるのかもしれません。
多くの場合–––特にトランペットの場合は顕著ですが–––声で歌えないのなら楽器で演奏することは困難なことが多いかと思います。
また音楽性という観点からも声で歌うことは非常に重要です。
2.チェンジ(コード進行)は覚えておく&最初から細かいミスは気にしない
チェンジは覚えておきましょう。
たとえ初見でなくとも楽譜を目で追いながら、それを頭で理解してから演奏するのと、すでに理解して頭の中に入っているチェンジを呼び出してそれをもとに演奏するのではどちらが脳の行う仕事量は少ないでしょうか?
どんなテンポの曲でもチェンジを覚えることは自由にインプロビゼーションをする上で重要なことです。
(究極的なことを言えばいずれ覚える必要すらなくなってくるのですがそれはまた別の次元のお話ということで…)
チェンジを覚えることに慣れないうちは大小様々なミスが発生しますが、頭の中で曲の流れがストップしてしまうほどの大きなミスでなければとりあえず無視して続けてみましょう。
その箇所を何度も間違えてしまうようであれば、別に抜き出して練習してみてください。
3.拍を大きく感じる
速いテンポを1234123412341234…と数えながら演奏するとその分余計に脳が仕事をしなくてはなりません。
1と3のみ、もしくは1だけを感じながら演奏することによって、同じテンポであってもかなりゆったりと感じられるでしょう。
単純なことではありますが今回挙げたものの中で最も効果を実感しやすいものだと思います。
さらにこれはさまざまな種類の音符を使うためのヒントともなります。
4. 恐れずにスペースを空ける
アップテンポになると8分音符を多用しがちですが、2分や全音符、3連符なども用いることによって演奏にメリハリをつけることが可能になります。
どうしてもずっと音を出し続けたいのならそれでも構いませんが、ほどよくスペースを空けることによって演奏の質がぐんと上がることがあります。
言わずもがなですが演奏中の脳の忙しさという観点からもスペースを挟むことは有効です。
もちろんどこでも良いというわけではないので、ある程度の経験と勘を要するのは事実です。
ただ「自分が思っているよりも少ない音数でもいい演奏をすることは十分可能である」ということを頭の片隅に置いておきましょう。
この感覚に気付くことができたならそれは大きな進歩です。
最後に忘れてはいけないこと
ジャズの演奏はサーカスや曲芸ではなく、ひとつの芸術であるということを常に忘れないようにしましょう。
特にアップテンポの演奏では曲芸的な演奏に終始してしまうことが起こりがちです。
もちろんたまにそんな演奏をするのも面白いですし実力の向上に役立ちますが、せめて今自分が曲芸をやっているのか、芸術をやっているのか見失わないようにしましょう。
最後はあくまでも自戒の念を込めて書きました。
それではまた!