【金村盡志】直接的に、直感的にはき出すフレーズがジャズを創る

━━金村さんのライブを拝見していても、バンド内の反応を楽しんでいるというのが伝わってきました。よくミュージシャンの方にお聞きするんですが、特にジャズは他のジャンルに比べて演奏者側が楽しむという要素も強く、音楽の出自的にもそうであったのではと言われています。現代音楽としてのジャズは、プレーヤーのためにあるものでしょうか、それともリスナーに向けたものとして解釈する方が正しいんでしょうか。

芸術、アートという意味では、どちらもある、と言わざるをえないかなと思います。

音楽において、リスナーが評価を与えるということは、商売としての音楽という一面があります。

ライブにミュージックチャージを払って見に来てくれる、音源を購入してくれる、これがなければミュージシャンは活動できない訳です。

そうすると、リスナーに向けた音楽かと言われれば、そうです。という答えになる。

そもそも僕は自分の芸術のためだけに演奏します、と言うならば、もっと確実に生活と音楽を両立する活動スタイルがあります。

それは、サラリーマンになって、生活の保障のある状況で演奏活動を行うことです。

ほかに生活の糧があれば、チャージも対価もいらない、と演奏活動をもっと自由にできるし、お客さん側も、なんなら無料で楽しめるので、互いにいいことが多い。

しかも、そうやって活動している人は実際にたくさんいて、非常に芸術性の高い人もいるし、音楽を目一杯楽しんでいる人がいる。

もしそれを専業ミュージシャンとして行うならなら、多少受けなくても自分のやりたい方向性を詰めていくこと。そしてあまり反応がなくても、泣かない(笑)。

そういう姿勢が必要だと思います。

自分のやりたいことを詰めていくというのは、研究していくとも言えるかもしれませんが、芸術としての音楽は、そうやって煮詰めていかないと創れないと思います

金村盡志ライブ3
ほかのミュージシャンと同じような演奏をしたい、とか、憧れのミュージシャンのフレーズを自由に使えるようになりたい、というならば話は別です。

さきほどのお話のように、ほかに本業を持っていてもいいと思うんですね。

何か自分の中に音楽を通してしか表現できないジャズという枠組みの中で新しいものを生み出したい、そしてそれを発表したい、と考えたときに、音楽に真剣に向き合う姿勢、時間というものが必要になると考えています。

なにかの拍子に評価を受ける、というミュージシャンは歴史上に多数存在します。

そういう人達は、下積みというか、評価を受けるまでに誰からも賛辞を受けなくても、自分の方向性を見失わなかった人達であることが多いですよね。

まだまだ自分もその領域まで達していないのに、ちょっと偉そうに言ってしまいましたが、これは多くのジャズミュージシャン達も感じていることではないでしょうか。

━━ありがとうございます。これからミュージシャンを目指す人にも、非常に有益なお話だったと思います。少しお話の方向は変わりますが、ジャズを演奏する上で大切なことはどのようなことと考えていらっしゃいますか。
金村盡志ライブ2
僕の音楽教室でもよく言うんですが、とにかく聞き込むこと。これにつきます。

たとえば、ニューヨークで指導してくれたジミーオーウェンズは、ブルースをよく演奏しました。そこで、同じ譜面をもらって、フェイク(譜面にアドリブで装飾を加えること)なしで同じように演奏してくれと言われます。

そうして吹いてみると、譜面上間違えている部分はなくても、同じようにはならないんですね。彼のほうがずっとブルースっぽさがある。

僕はそのたび泣きそうなりましたが…。

厳密にアナライズすると、休符の長さが0,01秒違うとか、音の強弱が違うという部分も出てくると思うんですが、譜面上の音符をブルースとして演奏する、ということに対して、生粋のニューヨーカーである彼と、日本人の僕では、感覚的な下地が違うんです

それを可能な限り縮めていくには、とにかく聞き込んで自身の感覚を磨いていくしかありません。

だからこそ、ソロもテーマも含めて口で歌えるくらいまで、いい音源を一生懸命聞く、これが一番大切だと考えています。

━━技術的な要素を乗せる、下地を創っていくことが大切なんですね。少し大きなトピックとなりますが、音楽教室を経営しながらミュージシャンとして活動していく上で、今後の日本のジャズはどうなっていくと思いますか。

現状、リスナーの数は、他ジャンルに比べて非常に少ないと思います。

ミュージシャンも、音楽教室も、ライブハウスも、少ないパイを奪い合ういかに呼びこむかを競うような状況になっていて、告知のやりかたや呼び込み方、また運営のスタイルも多様化していますね。

これには、リスナーは少なくても、プレーヤーの数は増えているという環境が影響しています。

とくに、ミュージシャンを本業とせず、普段別の職に就きながら音楽の仕事もするというプレーヤーの数は数年前よりもずっと多いです。

━━いわゆる、パートタイムミュージシャンと呼ばれる人たちですね。

そうです。いわゆるプロとアマチュアの境がなくなってきているという印象です。

今までよりもはるかに安いギャラ…というか、場合によってはノーギャラでそこそこ良い演奏をしてくれるのですから、プロと呼ばれるミュージシャンの立場は以前よりもずっと危うくなってきていると感じます(笑)。

とはいえ、どんな業種でもそうですが、競争の行われない業界は腐敗していくのみです。どんなに厳しくても自分の心の中にあるビジョンを追求していくということには変わりはありません。

それに音楽教室を経営しているのでよく分かるんですが、最近レッスンに通い始める方たちは意外なことに年代的に言うと20代後半から30代前半くらいの人も多くて。

仕事に慣れてきたので、昔演奏していた楽器をしっかり習いたいとか、今までトランペットを吹いたことはないんだけど休みの日に楽器を演奏してみたいとか、そういう理由から始めることが多いようです。

このような年代の方々にトランペットに興味を持ってもらう機会が増えるということは将来的にもいいことですよね。

また彼らは、演奏の場をライブではなく、ジャムセッションに求めていることが多いので、数年ほど前からジャムセッションの機会を今までよりもはるかに多く設けるお店が増えてきました。

これは、ジャズの普及という意味ではいい傾向だと思います。

━━だんだんと、これまで通りの“リスナーを相手に演奏活動をしていく”というやり方を変えていく必要があるんでしょうか。

金村盡志ライブ4
僕もすごい成功していると言える訳ではないので…、なんだか偉そうに聞こえてしまいますが、確かにそう言えると思います。

音楽ビジネスという面では、リスナーを相手に演奏をするだけ、というよりもレッスンの場を設けるとか、交流の場を設けるほうがいいという意見もあります。

また、演奏だけではなく、YouTubeを利用した広告運営に力を入れているという人は、ある程度の集客力を持っています。

━━現在のジャズの状況が非常に分かりやすく見えてきました。サポートをする人材というか、芸術としてのジャズをどのようにしていくかを、かかわる人間の中でもっと考えなければなりませんね。

うん、なんだか大仰な話をしてしまいましたが、おそらく、どのミュージシャンに聞いても、似たような感覚でいると思うよ。

もっと、音楽との関わり方を広げていかないといけない、そう、自分でも思っています。

━━最期に、今オススメのミュージシャンを教えてください。

ピーター・エバンスというトランペッターは、ここ最近すごいと思っています。

クラシックでの演奏なんかをバックグラウンドに持っている人なんだけど、一見奇抜な吹き方をする印象を持つと思うんです。

ただ、そこがオススメする理由ではなくて、そういった吹き方をしても表現したいことがあるという表現力の幅、そこが気に入っています。

トランペットという楽器は構造上、高い音から低い音へ急に変えるというのが難しい楽器なんですが、そこを軽々演奏していくように見せる。

普通の吹き方の枠を飛び越えて、唇の振動とトランペット内の振動を共鳴させて、こういった技術力の高い技巧を芸術として組み込んでいくのを聴くと、トランペットってまだまだいろんな開拓の余地があるんだなと感じ

てわくわくします。

━━長時間にわたり、ありがとうございました!



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