はち巻岡田は、銀座で江戸料理を楽しめる最高のお店です

はち巻岡田

某日、たまたまN響の定期公演のチケットをいただきまして。

ジャズのライブは定期的に行くんですが、クラシックは久しぶり。

ウキウキしながら出かけましたが、まずは腹ごしらえを、と思い、以前から行ってみたかったお店へ。

はち巻岡田

やってきたのは銀座にある、はち巻岡田さん。

ご覧ください。この店構え。

なんだかチェーン店やブランド店が多くなり、明るすぎる銀座の中で、無駄なものをそぎ落としたような、過剰なもののない佇まい。

はち巻岡田

「はち巻」は、先代のご店主のトレードマークであったハチマキからきているそうです。

前に江戸料理を楽しめるお店として、雑誌で紹介されていて。

淡口で素材の旨味を引き出し、自然との調和を目指す見た目の京風のお店が多いですが、江戸料理といえば、しっかりとした味付けや、香りやクセの強い食材を合わせつつ、別の角度から食材の旨味を強めに引き出す料理、ということくらいは見聞きしたことがあります。

実際、江戸料理専門というお店は初めてです。

銀座にはまだ江戸料理の金プラを食べさせてくれるお店もあったな。なんて思い出しつつお店の方に声をかけました。

はち巻岡田

口開け直後でほかのお客さんがいなくて入れました。

お店の方いわく、予約は必須ではないようですが、日によって埋まっていることもあるのでなるべく予約したほうがいいみたいです。今日は幸運だった。

普段、ほかにお客さんがいる場合なんて店内を撮ることなんてないんですが、割烹ドストレートな店内があまりに気に入って。

なんていい店構えなんだ…。

画像右には、写っていませんが小上がりもありました。

はち巻岡田

お品書き。季節で品が変わるそうですが、冬のお品書き。

はち巻岡田

とりあえずビール。アテにジャコをあさく炊いたものが。

お腹にたまらないけれど、旨味と塩味が肴にいいなあ。

変に気取った小鉢より、よっぽどうれしい。

お酒はビールと日本酒があるようで、日本酒がこれまた…。後述します。

はち巻岡田

それからこのテーブル。

まな板や板場にも使われるさわらかな。

非常に手触りがいい上に、木の脂を多く含んでいて衛生的。

しかも傷も染みもない。お客さんがいい食べ方をしているのと、手入れをちゃんとされているんじゃないでしょうか。

有名店でも、あまりよろしくないテーブルのお店が増えているので、こんなに気持ちのいい食卓は、本当に久しぶりに見ました。

はち巻岡田

そもそもの素材も結構な金額ですが、お手入れを大工さんなんかに頼むと意外と費用もかかるんですよね。

ここにお料理が並ぶと、それだけで美しくなる。

はち巻岡田

1品目は名物。

はち巻岡田

岡田茶わん。すっぽん鍋に発想を得て、先代のご店主が鶏を用いて創ったお椀。

はち巻岡田

ネギと鶏だし。こちらのお椀にシンプルという表現を用いるなら、大間違いですよ。

鶏はしっかり味が出ているのに濁りがほとんどなくて、ネギは冬のものなのに辛みや嫌味が一切ない。

はち巻岡田

歯触りも最高です。

単純に千切りしただけだと繊維がつぶれていて、熱が通り過ぎてシャキシャキとした食感が損なわれてしまったり、あたたかい汁物に味が抜けてしまったりすることが多いんですが、職人技が光り、ネギはネギの味わい、鶏だしは鶏だしの味わい、と、素材が殺し合うことなく1つのお椀に共存しています。

これを似た感じで作っても、絶対に表現できない。

はち巻岡田

鶏の食感も抜群。汁物の鶏は固くなりやすいのに、おだしとは別で煮て後で合わせてあるのかな。

シンプルさは一切なく、複雑な味わいが一体となったところを楽しめる椀物です。

なんて手の込んだ一品なんだ。

うまい。最高の幕開けです。

はち巻岡田

この辺で熱燗を頼みました。

はち巻岡田

今日は帰っても仕事しないと決めているのでグイッと。いや、すいませんねえ。

定番の菊正宗。いただきま〜す。

…?

あれ…、うまい。抜群にうまい!

ほのかな甘みと木の香り。おまけに日本酒のお燗独特の喉のべたつきが一切ない。

聞いてみたら、樽酒を提供してくださっているそうです。そうそうないですよ。

お店で、しかも祝いの席でもなく、普通に樽酒を提供していただけるなんて。

生涯で2度目です。ほんとにおいしいの。

日本酒苦手な人も一回試していただきたい。

ここで日本酒をいただかないと嘘だな。

はち巻岡田

続いて、あいがもの塩焼き。

鴨好きなんですよね。野趣あふれる感じで、ちょっと噛み応えあって。

はち巻岡田

取り皿は、有田焼かな。こういう器もなかなか見かけなくなりましたね。

白磁にこってりとした藍色の染め付け。はやくなにかお料理をのせたくなってしまう。

はち巻岡田

そして合鴨のやわらかいこと。

噛み応えも奥のほうに感じるんですが、どうやったの、というくらいやわらかい。

一度蒸してから焼きを入れているのか、分かりません。

椎茸も「とにかく素材にこだわりました!」という感じではなく、合鴨を一切邪魔することのない、ツマとしていい相棒です。

感動につぐ感動。

はち巻岡田

舞茸と春菊のお浸し。

あたたかいお出汁でお浸しにしてあるんです。

冬の寒い時期に冷たいお浸しだと、ちょっと腹の底が冷えますからね。

夏もあたたかいのかな。今度来て確かめてみよう。

味ですか? うまいに決まっているじゃないですか。

柚子の香りと、うすめの酸味が春菊と舞茸の風味とがっりりスクラムを組んできます。

はち巻岡田

揚げしんじょです。

椀物にしんじょは定番ですが、揚げたものもときどき見かけます。

でも、いつもそんなに、なんですよね。隣のお席の方が常連さんで、揚げしんじょがいい、とお話していたのでお願いしてみたんですが。

あまり好物ではないというか。

はち巻岡田

辛子はほんの少し。風味を壊さないでね、ということか。

はち巻岡田

つけだれにちょこん、と。

はち巻岡田

わずかに辛子を付けて。

ぱくり。

何度目か忘れましたが、うまい。

えびのしんじょで、えびのぷりぷりとした食感がしっかり残っています。

普通、よくよくすりつぶしてつなぎを入れていて、お店によっては固すぎることもあるくらいなのに。

柔らかく、えびの食感とうまみがしっかり残っていて。

つなぎも少なめに感じるんですが、しっかりまとまって揚がっていて。

絶妙。

つけだれもお醤油かと思ったらウスターソースと、出汁? と、薄口? おいしい。

これ、おおげさではなくて、どれを食べても感動が。

揚げしんじょ、好物にランクインしました。

はち巻岡田

続いて、こちらも有名なあんこう鍋。1人前からもお願いできてよかった。

もっといろいろなお料理をいただきたいので。

それにしても、なんてそそられる見た目なんだ。

はち巻岡田

あんこう鍋は茨城が有名ですが、最近は関東全域で食べられるようになりましたよね。

はち巻岡田

火が通ったので、さっそく。

はち巻岡田

これはおいしい。

出汁は、やっぱり江戸料理で、しっかりとした味付けで。

お醤油のうまい味わいが効いていますが、柚子の香りが出汁についています。

ただし、酸味が強い訳ではなくて香りと旨味を引き立てる程度に。

がっつり絞って火を通すとえぐみなんかもでるんですけど、さらしで絞って鍋に浸すというほどでないほどつけると、えぐみなどは出ずにすっきりとした味わいだけが引き立つんですが、そういう調理なのかな。

はち巻岡田

お野菜にも味がしっかり通っていて、箸が止まりません。

総称すると、今まで食べた中で群を抜いておいしいあんこう鍋でした。

このお鍋は名物で、お店に通った文豪の大先生たちから食通まで、みんなに愛されているそうです。

繊細かつ大胆で、鍋で煮ているのに具材の味わいは抜けない。

文豪でなくてもファンになりますよ。

はち巻岡田

食べ終わったあとは…

はち巻岡田

お雑炊になりました。

お品書きなんかには書いてないんですが、お店の方に聞いたら一度鍋を下げて作っていただけました。

はち巻岡田

これまたおいしいんですよ。しみじみおいしい。

1人分を2人で食べましたが、十分な割合でした。

本来ならここで締めるべきですが、ほかのお料理もいただいてみたい…。

はち巻岡田

と思って、不調法ながら追加を。

粟麩の田楽です。粟って滋味も栄養もあるし、結構好きなんですが、家ではなかなか調理しないですよね。

岡田さんでは焼きではなく、揚げで。

しっかり揚がっているんですが、決してカリカリ・ザクザクではなく、粟麩の柔らかさを味わえる食感。

玉味噌も江戸らしくしっかりとした味付け。

激うま。

はち巻岡田

お酒を追加。

これはN響寝るぞ…。でも、止められない!

はち巻岡田

穴子の蒲焼きも追加。

江戸はやっぱり穴子ですよね。

実を言えば蒲焼きはうなぎよりも穴子やどじょうのほうが好きなんです。

でも、なかなか穴子やどじょうの蒲焼きのお店がなくて…。

はち巻岡田

しっかりとした噛みごたえとうまみ、脂は強すぎず、弱すぎず、歯にあたった身がほぐれていくのが実に楽しい。

というところでお勘定。

これだけ飲み食べしたのに想像の半分の金額でした。

これだけ強くオススメすることはなかなかありませんが、はち巻岡田さん、一度は行ったほうがいいですよ。

 



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大学卒業後に新聞社に入社、その後ビジネス書の制作を得意とする編集プロダクションに転職。フリーでWEBや紙媒体での企画、編集、執筆、撮影などを担当し、現在はモジカル編集長。趣味の料理が高じてレシピ記事なども制作。