新しく始まった「伊藤シェフの“ひとあじ”ちがうね」は、
イタリアン、フレンチから、現在はポンデケージョ(ブラジルのチーズパン)、シフォンケーキと、多彩な料理を駆使してみんなを楽しませてくれる伊藤シェフに、
家庭でも役に立つお料理の知識を少しだけ紹介していただく連載企画です。
これで今日の食卓が“ひとあじ”ちがうものになるかも。
第1回は「トマト」を題材に、“ひとあじ”ちがう食材にしてしまいます。
では、伊藤さんよろしくお願いします。
トマトってどうやって選んでる?
こんにちは、伊藤です。
さて、さっそくですが皆さん、普段食べるトマトってどうやって選んでいますか?
八百屋さんやスーパーに行くといろいろな種類のトマトが売られていますよね。
デパートでは、50種類近く置いているところもあります。
しかし野菜ですから、やはり個体差があるんです。
まずはおいしいトマトの見分け方をご紹介しますね。
はい、これです。以上!
うそうそ(笑)。ちゃんと解説します(笑)。
トマトのヘタの方を見てみましょう。ちょっと縮んでいますよね。これ、実は新鮮ではない証なんです。
左がさきほどのトマト、右が新しく持ってきたトマトです。
ヘタの部分が大分違いますよね。右の方が新鮮です。
収穫されてから時間が経つうちに水分が抜けて左のようにヘタが縮むんです。
では、おいしいトマトなら新鮮な方を選べばいいのかというと、実のところそうでもないんです。
なぜかというと、左の方が熟しているから。
画像だと分かりにくいかもしれませんが、ツヤがよくて赤みが強いというのが熟しているものの特徴です。
だから、食べて美味しいのは左のトマトなんです。
新鮮であればなんでもおいしいという訳ではないんですね。
もしも購入してからしばらく食べない、という場合には新鮮なほうがいいですよ。
パスタに使うトマトは品種で選ぶ
それでは、パスタにも熟したトマトを使いましょう!
いやいや、お待ちください。今回のテーマはパスタソースです。
フレッシュなトマトを使ったパスタなら熟したトマトでいいんですが、トマトソースにするならば選ぶべきは鮮度でも熟し方でもなく品種です。
そもそも、トマトソースをよく使う国であるイタリア。
使っているトマトの種類がとてつもなく多くあります。
その中でも、トマトソースにはサンマルツァーノ種という品種をよく使用します。
しかしながら、これ、日本では生のものがなかなか手に入らないんですね。
お料理屋さんなら取り寄せているところもあるんですが、家庭で取り寄せを行うとかなりの費用がかかります。
そこで活用したいのがこちら。
缶詰のトマト缶です。意外かもしれませんが、家庭でパスタ料理に使用するならば缶詰のものがベストです。
缶詰にはサンマルツァーノ種のものがよく出回っているんですね。
お値段も100円しないくらいのものなどが多いので、そんなに高くありません。
そもそも、生のサンマルツァーノ種のトマトをパスタを作るたびに1からソースにしているお店なんてイタリア、日本を探してもほとんどありません。
最初からトマトソースという調理用の食材にして用意しておき、適宜使用しているんです。
さて、知識はこれくらいにして普通のトマトとどのように違うのか、実際に味わってみましょう。
トマトの食べ比べ
トマトをパスタソースにするための下準備をしながらそれぞれのトマトを試食してみます。
まずヘタをとって、
おしりに十字に切れ目を入れたら、
熱湯に入れて湯むきします。
トマトソースとして使用するときは、湯むきをして皮をとってしまいましょう。
皮と身の間の部分は特に美味しい部分なのでなるべく残したいんですが、皮の食感や味はソースの邪魔になってしまいますので。
皮がむけてきたらお湯からあげて、
冷水にとります。
湯むき完了。
右と左で種類が違うトマト。断面を見ると、中の構造が違うのも分かりますよね。
品種が違うと、似ているようで大きく違うんです。トマトって、おもしろい!
で、中のトロッとした部分を取り除きます。
この部分は酸味とうま味がつまっているので、ソースにするときはそのまま使用します。
ただし、トマトをコンカッセ(粗みじん)して使ったり、サラダにしたりするときはこのように取り除いた方がおいしい。
今回は食べ比べなので取り除きます。
スプーンの柄を使うと簡単に取り除けますよ。
こうやって見て見ると、中身の部分も水分量や色味なんか違うんですね。
ここだけ軽く塩にして、濾したものをゼリーにしたり、お味噌汁にしたりしてもおいしいんですが、それはまた別の記事で。
さあ、食べ比べてみましょう。
まずは桃太郎という品種。甘みが強くて柔らかい。おいしいですね。
こちらは足柄野菜というブランドのもの。歯ごたえがしっかりしていて酸味を強く感じます。色味はうすいんですが、しっかり甘みもありますよ。
最期にサンマルツァーノ種。
うん、濃い! うまみがぎっしりという感じです。そしてしっかりとした酸味! そのまま食べても結構おいしいんです。
この濃さがトマトソースに適しています。これは、ほかのトマトが熟していてもなかなかこういう味わいにならない。
作り置きできるトマトソースならではの特徴に適しています。
パスタに使用するトマトソースなら、サンマルツァーノ種というトマトを選んでみてくださいね。
初回はこのくらい!
次回は、このトマトを使用して、実際にパスタソースを作ってみます。
第二弾はこちらから