寒い、冬は寒い。
そして、この寒い冬の中でも極寒の時期の早朝、もはや寒いを通り越して痛いように感じる海岸淵で、とても珍しい海藻が獲れます。
それが、ハバ海苔。
実は高級食材なんです。
僕の地元の神奈川県小田原市から、湯河原くらいまでの地域で食べられているのですが、ほか地域で食べるというのはあまり聞いたことがありません。
偽物、という訳でもないのですが、本来のハバ海苔の特徴である海藻が厚く旨味と香りの強いもののほかに、海藻が薄く香りや味わいも薄いものがあり、これは前者がハバ海苔であって、後者は似たような別物だと聞いたことがあります。
両方とも食べたことがあるのですが、磯料理に慣れ親しんだ人でなければ、後者のほうが好きと言うかもしれません。
どちらも美味しいです。
ただし、やはり厚みのある方が伝統の食材であり、飲食店で重宝されるのもこちら。
そして購入してきました。スーパーなどにはあまりならびません。
海産物の専売商店や野菜などの直売をしているところでよく目にします。
これ、ずいぶん厚みがあるように見えますが、よく販売されている海苔とちがって何枚も重なっているわけではないんです。
1枚だけなんです。
そして、1枚1,500円。
いや、そうそう買いませんぜ。
厚みがあって、見た目から想像するより重さがあります。
乾燥しているんですが、しっかりとした身のため握ってもガサガサと崩れたりはしません。
強い磯の香り。
きっと若い人は嫌いだと思います。僕と同年代(30代です)でもおそらく苦手。
磯料理のおいしさが分かる世代や和食に親しんだ人でないと分からない風味でしょう。
なかなかね〜、こういう伝統食材は。今は食性が違うから…。特に化学調味料や香料に慣れ親しんでいる人は、自然の、強い風味をおいしく感じないようです。残念なことですが。
ハバ海苔の食べ方は、僕が知っているものは多くありません。
1番ポピュラーなものは火で炙って崩し、鰹節と醤油をかけてご飯やお酒のお供にする食べ方。
あとは大根の大名蒸しの銀アンに使用したり、汁物に合わせたりと、海苔の代用にすることが多いですね。
ただし、現在よく食べられる焼き海苔のような、外来種の海苔の代用に使用すると風味が強過ぎて相性が悪いです。
アサクサノリのような、日本で昔から食べられている海苔の代用にしたほうがいいですね。
今回は炙りでいただこうと思いますが、ガスコンロで炙ると火が燃え移ってしまいます。
炙る場合は炭火などがいいのですが、毎食、炭で火をおこす家庭も稀でしょう。
こういうときはフライパンなどを使用すると楽です。
小さめに千切って炒ります。火を通す前は身がしっかりしているために細かく千切るのは大変です。
火が通ると食べやすい大きさに崩しやすくなるので、この段階では大体の大きさで大丈夫です。
これ、ガスの火に一瞬かざしただけですが、このように燃えてしまいます。
こがすと一気に香りが悪くなりますので、お気をつけて。
フライパンを強火で1分ほど熱した後、火を弱火か、消して、予熱で炒って、様子を見ながら火をつけたり消したりしながら炒ると安心です。
僕は中火でガンガンいきます。
こげないようによく動かして。
千切った部分が色づいてきて、カサカサと乾燥してきたら食べごろです。
少し冷めたら手にとって…
握り砕く!
そうして細かくしたら完成。
ここに鰹節をかけてもいいのですが、実はハバ海苔は個体差が激しく、香り旨味がちょうどよいもの、香りが強すぎる、もしくは弱すぎる、旨味が少し足りない、などの違いが顕著です。
そのまま少し食べてみて、必要そうだった追加したほうがいいですよ。
ちなみに、塩気に関しても同じで、醤油なしでいけるときもあります。
それから天然ものであるがゆえに、小さい貝が紛れていることも。
手で砕くときに気づいたら取り除いておきましょう。
こういうのあると、天然自然のものをいただくんだな、と思って安心します。
今回は香りが程よいので、鰹節なしでお醤油をひと回し。
ご飯にちらします。
米の香りに磯の香りが混ざり合って、鼻腔を刺激します。
こういう風味、ほかにないよな〜。これだけで嬉しくなる。
では、いただきます。
うん! いい! 今回購入してきたのは特においしい。
昆布のような強い旨味に、独特の風味、パリパリとしているけれど肉厚で食べ応えのある食感。
毎年食べるけれど、今年は特にうまい。
似たようなもの、食べたことがありません。唯一無二の自然の味わい。
と、いうことでハバ海苔のご紹介でした。
非常に貴重なもので、収穫環境が過酷な上、通年獲れる訳でもない上に一回の収穫量も少なく、実は珍しく貴重な食材になりつつあるとか。
食べたことのない人は一度は試していただきたいですが、なにぶん結構な高級食材。
しかし、ほかに似通ったものは今のところ知りません。
一食の価値ありです。