ジャズドラムで4ビートとボサノバのリズムの次に覚えるべきフィール

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ジャズでのライヴやセッションで求められるのはスイングだけではありません。

ふと考えると不思議ですけどジャズミュージシャンはいろいろなフィールで演奏することが求められます。

フィール? となる方は下の動画を聴き比べてみましょう。

・スイングフィール

・16ビートフィール

1:14からテーマです。

・セカンドラインフィール

フィールとは演奏するリズムやスタイルのことですね。ジャンルを変えるということではなくフィールを変えるだけなのでジャズの構成やコード進行、もちろん醍醐味のアドリブの要素はそのままです。

そもそもフィールを変える必要性ですがそのフィールで曲を演奏したらいつもと違って面白そうというのが1つあります。

他にもアレンジではなく原曲が指定のフィールを求めている場合もあります。例えばI’ll Remember ArilやNight In Tunisiaはラテンが求められたり、イパネマの娘ではボサノバが求められていたりというのが当てはまりますね。

あとはライヴのセットリストを考えたときにスイングばかりだと聴いている人にはどれも一緒に聞こえてしまいがちなので、最後まで楽しんでもらえるようにバラエティ豊かにしようという意図でいろんなフィールを演奏します。

それでは本題に入っていきましょう。スイング以外では主に、

  • セカンドライン
  • バラード
  • ボサノバ、サンバ
  • ワルツ
  • ラテン
  • カリプソ
  • ファンク、R&B
  • 変拍子
  • イーブンエイト

大体はこのフィールを使い分けて演奏します。それぞれ解説するとかなり長くなってしまうので今回はかいつまんでご紹介します。

昔から取り入れられていたフィール

セカンドライン

セカンドラインとはニューオリンズの行進で使われていたリズムのことです。

以前少しセカンドラインのことに触れているので読んでみてください。

https://mojicul.com/archives/7696

スネア主体のリズムとなりますが足もつけてできるといいですね。4拍目が強調されるとニューオリンズのリズムに近くなります。さっき比べたLove for Saleのシェリルエイミーとロイハーグローブの動画でもセカンドラインが使われていますね。

バラード

バラードも雰囲気を変えるためにライヴではラストの曲の前に演奏されることが多いです。3連符がベースのバラード、8部音符がベースのバラードがあるのでどちらも覚えておくといいでしょう。バラードはブラシで演奏されることが多いのでブラシのテクニックを押さえておくのがいいですね。以前にブラシのことは記事にしているのでまだみてない方は参考にしてみてください。

https://mojicul.com/archives/7968

ラテン

アートブレイキーが積極的に取り入れて今ではジャズに欠かせないフィールです。元はキューバやアフリカのリズムとなりますが、ジャズでは本格的なラテンのリズムでやるより以下の感じで演奏されることが多いです。

ラテンのフィールをメインにしたスタンダードナンバーもありますし、ラテンとスイングを行ったり来たりするようなスタンダードナンバーもあるのでスイングの次に練習しておきたいフィールです。

ポイントは右手のライドシンバルのカップを叩くようにしてベルサウンドで演奏します。右手のリズムがメインになりますが意外と足のリズムも重要です。理由としてはベーシストもバスドラと同じリズムを演奏しているのでベースの音をプッシュするように踏んであげるといいでしょう。

ボサノバ、サンバ

前回の記事で詳しく説明しているのでこちらを参考にしてください(前回の記事はこちら)。

ワルツ

拍子が3拍子になるのでまずはそこに注意ですね。あとはワルツの感じを出すには左足のハイハットが大事になってきます。

この譜面のように2、3拍目は踏んであげるとワルツの雰囲気が一気に出てきます。

律儀に拍がわかりやすいように叩いてもいいですが、1.5拍フレーズを使いこなせると高度なジャズのインタープレイも可能になってきます。

カリプソ

カリプソのリズムはこのスタンダードナンバーで有名ですね。

あまり頻繁にカリプソはやらないので練習してないと個人的に焦るフィールではあります。ドラム譜としてはこういう感じです。

イーブンなのでボサノバみたいな感じですが、メインは太鼓系のサウンドです。左手はクローズドリムショットで右手はスネア右下の空いているスペースで叩きます。しっかりリズムの抑揚が出るようにするといいですね。

60年代以降から現代にかけて流行っているフィール

ファンク、R&B

いわゆる皆さんが知っているリズムでありポピュラーなビートです。ただ16ビートで少しリズムが細かいので、演奏するならノリが出るようにするといいですね。

ファンクとR&Bどう違うのかは音色とリズムのノリを聴けばわかりやすいです。どちらもタイトな音ですがファンクはタムの音に伸びがあります。最近のR&Bやヒップホップはスネアだけでなくタムの音もかなりタイトです。

そしてリズムのノリとしてはファンクはかなりジャストでビートを叩きますが、同じリズムでも少しバックビートを早めに入れたりタメたりしてリズムをずらすとR&B寄りな雰囲気が出ます。

あとはドラムだけでなくベースやギターなどの音色やリズムによってもファンクかR&Bかが変わってきます。

なので周りを見て今自分が何を求められているのか判断できるといいですね。見極めるコツとしてはそれぞれのジャンルのルーツとなるものを聴くことです。

例えばファンクだったらジェームスブラウン、R&Bやヒップホップであれば最近の流行であるロバートグラスパーを聴くなどしておくとどっちなのか判断がつきやすいです。

・ファンク

・R&B,ヒップホップ

変拍子

これも以前別の記事で取り上げているのでまだご覧になってなかったら見てみてください。

https://mojicul.com/archives/8014

変拍子で演奏する時は7拍子か5拍子が多いです。プロでも変拍子になると割と身構えてしまう人もいたりするのでこれはなかなか上級者向けになります。ですがストイックにリズムを追求するならばやっておきたいフィールなので徐々に練習していくのがオススメです。

イーブンエイト

俗にECM風とも言いますがこれだけだと伝わりにくいので下の動画を見てみましょう。

8ビートなんですがファンクやR&Bと違ってバックビートを出さないのでかなりふわっとしたリズムに聞こえます。ここ10年以上はこういうイーブンエイトが主流となっていて、こういう音楽をコンテンポラリージャズと呼んだりします。

最初にコンテンポラリージャズが流行ったときはふわっとした曲が多かったです。今も相変わらず変則的なリズムですがカッチリしてだいぶ聴きやすくなっています。

フィールを変えるときの注意

セッションでやる時は必ず一緒に演奏する人とフィールの確認をしておきましょう。

そうでないと本当はスイングでやりたかったのに違うフィールで始まってしまった。。と他のメンバーが思いながら演奏が続いて気まずい空気が終始流れます。

始まってしまうとよっぽど何かきっかけがないと途中からフィールは変えづらいので、演奏する曲が決まったらテンポとフィールを確認しておくのがベターです。

現代のジャズドラマーは高クオリティのフィールが求められる時代

一昔前はジャズミュージシャンはスイングがメインだったのでラテンをやるにしてもファンクをやるにしてもスイングの感覚の延長で演奏していたのでエセ感はありました笑

しかし今のジャズミュージシャンは何をやるにしてもオールマイティです。今は一通りのフィールが世の中に溢れていて、いろんなレジェンドプレイヤーがテクニックを昇華して道を切り開いてきました。おかげで今は正しいリズムや音色が最短で学べる時代です。

Youtubeで調べれば現地のミュージシャンが解説している動画もたくさんあって海外に行かなくても学べる時代ですし、年々ミュージシャンのクオリティも上がってきている気がします。学びたい情報がすぐ手に入る今の時代はいいですね。

ただ、全てなんとなくこなせればいいというわけではありません。しっかりそのフィールに関わるジャンルの音楽をよく聴いてルーツを深掘りしていきましょう。

そうでないと音やフレーズに深みは出てきません。フィールのリズムだけを追っていると上辺でしか音楽してないことがわかる人にはわかってしまうのです。

どのフィールを演奏しても本物の音楽ができるように日頃からいろんな音楽を聴いて練習していきましょう。



ABOUTこの記事をかいた人

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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。