カマシ・ワシントンのオススメアルバムをジャズドラマーに聞く

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こんにちは、野澤です。

関東に住まわれている方は台風の影響大丈夫でしたでしょうか(2026年8月下旬)。

私の地域では洪水でとんでもないことになって翌日には多くの車が故障して道の真ん中で止まっていました。。

幸い私の家は大したことなかったですが皆さんがご無事なのを祈ります。

さて今回は今をときめくサックスプレイヤーのカマシ・ワシントン。

ジャズの雑誌や音楽系メディアにも露出が多く、現代ジャズプレイヤーの中でもご存知な方も多いですよね。

そんなカマシの音楽の魅力とオススメのアルバムをご紹介したいと思います。

カマシ・ワシントン (1981年ー)

カマシ・ワシントンは1981年にロサンゼルスで生まれてテナープレイヤーの父親とフルーティストの母親のもとで育ったそうです。

幼少期の頃から音楽に触れドラム、ピアノ、クラリネットなどをやった後に13歳でテナーサックスを本格的に始めます。

高校や大学の時の同級生にはとても恵まれておりベーシストのサンダー・キャット、ロナルド・ブルーナーJr.、キャメロン・グレイヴスとバンドを組み自身の音楽を深めていきました。

メンバーを見ただけで相当レベルが段違いですよね。このメンバーで今も活動しています。

学生卒業後はチャカ・カーンやハービー・ハンコック、ウェインショーターなど多くのビッグネームと一緒に演奏するプレイヤーとなり、ケンドリック・ラマーの曲にも参加してカマシ・ワシントンという名前を世界に広めることになりました。

その後にトラックメーカー界隈では超有名なFlying Lotusのレーベルから「The Epic」というCD3枚組の3時間収録という超大作をリリースして年間ベストアルバムを獲得しさらに飛躍することになります。

スピリチャルでダイナミックなプレイスタイル

カマシといえばなんといっても壮大な音楽で直接リスナーに迫ってくる規格外のサックスサウンド。

それは音楽やサックスという枠にとらわれることなくカマシの音楽を通して彼の生命力の強さを感じる特別な体験ができます。

ジョン・コルトレーンやケニー・ギャレットと同じような系統で土臭い民族的なルーツを感じますが全体のサウンド自体はLAの都会的なスタイリッシュなサウンド。

今までにニューヨークでも昔の音楽を大事にしながら新しい音楽を生み出していくマーキス・ヒルやエマニュエル・ウィルキンスのようなサウンドもありますが、LAのポップでグルーヴ感がわかりやすいサウンド作りはカマシならではですね。

さらにクワイヤーやストリングスを入れることで壮大な音楽になり、かつヒップホップやR&Bのリズムを足すことで唯一無二だけど若いリスナーにもダイレクトに届く音楽に仕上がっています。

そんなカマシ・ワシントンのおすすめアルバムを2つご紹介します。

オススメのアルバム2選

「The Epic」

カマシ・ワシントンのことを知るならまずはこのアルバムがオススメ。

先ほど述べたように収録時間は3時間ほどにもなりますがとにかく聴きやすい。

アルバムのサウンドが洗練されていてLA特有のカラッとした質感が気持ちいいです。

1曲目からカマシの世界が広がる”Change of the Guard”で一気に引き込まれていきます。

マッコイ・タイナーのようなモード調の曲ですがクワイヤーとストリングスの壮大な感じとエレクトリックベースとドラムの現代的なグルーヴが相まって、とても聴きやすいバランスの音楽に仕上がっています。

カマシの凄いところはダイナミクスの幅の広さ。

バックが結構盛り上がっているのに対してソロの始まりはかなり小さいところから始まります。

意外と前に出てこないなとリスナーが感じ始めたところでギアが段々と入ってバンドもさらに熱が高まっていき、さらに高い次元の音楽に広がっていきます。

テンションが上がってくると野生的な音になりますがとてもコントロールされたスマートな演奏に聞こえるのも不思議です。

メンバーもベースにサンダーキャット、ドラムにロナルド・ブルーナーJr.、ピアノにキャメロン・グレイヴスという最強布陣。

ロナルドのR&Bのフィールも感じさせつつトラディショナルなスイングも上手く混ぜていてフュージョン色はあまりないのも好印象です。

2曲目の”Askim”の最初のソロはサンダーキャットのベース。フライングロータスの曲のようなフレーズだったり16分で攻めてくる高速フレーズも聞き応えがあります。

そこに入ってくるバックのストリングスも最高です。

クールダウンしたところから入ってくるカマシのサックスソロも無駄の力が入っていないリラックスして歌うようなところから始まり、サンダーキャットに負けないくらい16分の速いフレーズで攻めていきます。

全部ピックアップすると、とんでもなく長くなりそうなので個人的にオススメの曲をピックアップ。

  • Final Thought
  • The Rhythm Changes
  • Miss Understanding
  • Henrietta Our Hero
  • The Magnificent 7
  • Cherokee
  • The Message

Disc2がかなり濃い内容になっていますね。

“Miss Understanding”はテンポ340くらいの超アップテンポスイング。それにも関わらずしっかりコントロールされたバンドサウンドでクオリティがとても高いです。

逆に”Cherokee”はアップテンポで演奏されることの多いジャズナンバーをファンキーでポップなスローなアレンジになってかなり新鮮です。

切り口としてはありそうなのにホーンアレンジやオルガン、エレピなどゴージャスな仕上がりになっていてサウンドがとてもリッチ。

これならジャズを知らない層でも楽しめるのもわかります。

シリアスな部分が多くなると初心者を置いてけぼりにしがちですしポップでチャラいアレンジだとコア層にはハマらない音楽になるので、そこら辺のバランスを多くのミュージシャンは考えると思います。

それが見事にどの層にもハマるというのがこのアルバム。

これが今の時代の1つのアンサーとなるので真似したくなりますが到底真似できないくらいディティールにこだわり抜いた曲の数々。

ジャズシーンをまた一つ大きく変化させた1枚でしょう。

「Fearless Movement」

created by Rinker
Young Turks

メンバーは「The Epic」のときと同じリズムセクションで固められて、そこにブランドン・コールマン(Key)トニー・オースティン(Drums)にテラス・マーティン(A.sax)が加わりさらに個性溢れる音楽になっています。

最初の曲からツインドラムにツインキーボード。

マイルスバンドのビッチェズブリューのような壮大な音楽が展開されます(ビッチズリューも解説した以前の記事はこちらから)。

イントロも民族的な歌から入り、そこからインストゥルメンタルがガッと入って1曲目が始まっていきストーリー性のある楽曲展開でこのアルバムも最初から引き込まれますね。

2曲目は同じような民族的な歌にファンクを混ぜてカマシ独特な音楽の仕上がりに。

ソロはサンダーキャットのソロからしっかり盛り上げてくれるのでここも満足度が高いポイントです。

ベースのソロにロナルドもチョップスで反応していく展開も個人的には好みですね。

そしてカマシのソロも最初から最後までエネルギッシュなサウンド。

テナーサックスにしてはかなりハイノートでフレーズをリズミックに展開していてかなり攻めています。

そこからラップが入り若い層が好きそうな音楽になっていますがクオリティや曲のコンセプトは統一されています。

5曲目の”Get Lit”もR&B、ファンク、ヒップホップのブラックミュージックの要素がかなり高めの重めの曲です。

グルーヴ感がかなり強くロックなサウンドにも聞こえますがスティービーワンダーの”Superstition”を思わせるような頭を縦に振ってノリたくなる楽曲も収録されています。

”Computer Love”や“Together”のような都会的な曲もあったり“Dream State”のような笛を吹くような民族的な楽曲もあったりしてバラエティの幅が広いですが、アルバムを通して一貫したサウンドがあるのでこのカマシサウンドに飲み込まれていく感覚が楽しいですね。

最後の曲“Prologue”も16ビートにのせてポップなテーマのメロディをサックスとトランペットで歌うように演奏します。

この曲もツインドラムで右と左のスピーカーで2台のドラムが振り分けられていて聴いている自分が音楽の中心にいるような感覚になります。

トランペットソロに入ってからはその2台のドラムが違うアプローチで攻めてくるのでとても壮大に。

カマシのソロもとても細かいパッセージを使っていますがとてもドラマティックな内容に。

ソロの最後は鳥肌が立つくらい最高潮を迎えます。まさにエンディングに相応しい曲になっていて超大作の映画1本分見たかのような充実感がある1枚です。

 

以上2つオススメのアルバムをご紹介しました。

ヒップホップやソウルなど最先端の音楽を取り入れることで昔の音楽とかけ離れるように感じるかもしれませんがルーツはビバップやハードバップを感じるプレイヤーであることは間違いありません。

今後のジャズシーンを変えていく一人になっていくカマシ・ワシントンをこれから追ってみてはいかがでしょうか。



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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。