こんにちは、野澤です。
前回に引き続き(前回記事はこちらから)マイルスデイビス生誕100周年ということで(執筆現在2026年)今回もマイルスにまつわる曲をご紹介。
マイルスは多くのミュージシャンやリスナーに影響を与え続けて1940年代から1990年代まで長くにわたりジャズの歴史を作り変えてきました。
そのため、マイルスのことに興味を持って間もない方はたまたま聴いてみたらエレクトリックだった。
はたまたモダンジャズだった、というように聴くアルバムによってのスタイルが大幅に違って驚くこともあるでしょう。
なので今回はジャズドラムが好きなら最低限聴いておきたいアルバム、ではなく“曲”をドラマー目線でセレクトしました。それではいってみましょう。
Airegin(From:「Cookin’」)
アルバム「Cookin’」から”Airegin”という曲をまずはチョイスさせていただきました。
この曲を叩いているドラマーはマイルスバンドを支えた有名なドラマーでフィリー・ジョー・ジョーンズ。
キレのいいリズムと繊細な音色を兼ね備えたフィリーのドラムですがこの曲のフィリーは他の演奏記録に比べてずば抜けていいです。
8分音符で刻むラテンのグルーヴとスイングに移ったときの前にぐんぐん進む推進力のあるライドシンバルのリズムは、コントラストもはっきりしていてテーマの演奏としてとても気持ちがいい。
ソロが始まってすぐにソリストの背中をプッシュしてくるエネルギーもヘッドフォン越しで伝わってきます。
そして何よりすごいのはコンピング。レッド・ガーランドのコンピングに恐ろしいくらいピッタリとリズムが揃っています。
フィリーがどういうテンションで演奏しているのか直に伝わってくるので初めてこの曲を聴くのであればこの凄さをぜひ体感してほしいです。
ビバップを極めた演奏がここに収録されています。
Two Bass Hit(From:「Milestones」)
フィリー繋がりでいうとこの曲も外せません。
マイルストーンズの中のTwo Bass Hit。フィリーの演奏をフィーチャーした曲になっていてテーマの中にドラムソロが組み込まれています。
このテーマでのドラムフィルがまたセンスが光っています。
どれも4分音符がわかりやすいフィルで前半繋いで進むのですがテーマのBに入るフィルでは3連符を4つ割りのフィルに急に挟んできます。
ちょっとマニアックですが、ドラマーからするば直球勝負かと思いきやいきなり変化球を投げられたかのようないいスカし方をしてきてここはさすが匠の技と感心させられます。
攻めているけどどこかクールな部分がありオシャレです。
シンバルのリズムもポール・チェンバースのベースの音と一心同体。ピアノのコンピングとも一心同体。
リズムセクションがここまで1つの生き物のように進むことがあるのかと驚愕するばかりです。。
お互いの腹の内を探って演奏するのではなくお互いを自分自身のように完全に理解して演奏しているのがこの曲の凄みですね。
フィリーのドラムの凄さを正面から感じてみたい人にオススメです。
So What(From:「Kind Of Blue」)
“So What”という曲はマイルスがよく演奏していたこともあり、多数のテイクが残されていますがやはり「Kind of Blue」に収録されているオリジナルテイクはマストで聴くべき1曲です。
マイルスバンドの時系列的にドラマーはフィリーから代わりジミー・コブになったとき。
ジミーもフィリーのように色々とアプローチできるドラマーですがこの曲では淡々とシンバルのリズムを刻んでいます。
シンバルの響き方が低重心で音色もダークですがアタックは明るい音色でリズムが出ている音と響いている音のコントラストが気持ちいいです。
大胆なアプローチではないのですがコンピングもソリストを少しだけプッシュするようなジェントルなアプローチもこの曲の雰囲気にマッチしています。
ポール・チェンバースのベースの相性もとてもよく、フィリーとはまた違った方向でチェンバースの音色が際立つコンビになっています。
マイルス、キャノンボール、コルトレーンという3管編成。3人分のソロが続くのは長いような気がしてしまいますが実際聴くと3人とも気張ることなくのびのびと吹いているのが印象的です。
この曲はモードという技法の曲なのでコード進行を気にするよりスケールで横のフレーズ感を大事にするのがコンセプト。
そのためストレスなく歌い上げるような吹き方がピッタリハマる感じがします。
それもジミーの淡々としたアプローチがあるからこそ成り立つのでしょう。
派手さはないですが大人のアプローチを感じてみたい方はぜひ聴いておきたい1曲です。
Seven Steps To Heaven(From:「Seven Steps To Heaven」)
アルバムの表題曲にもなっている楽曲。
この曲のドラマーはトニー・ウイリアムス。トニーといえば16歳にしてマイルスバンドに加入して60年代のジャズシーンを大きく動かした人物でもあります。
そんなトニーの演奏ですが、イントロからテーマのパターン全て今まで聴いたことないようなアプローチをしています。
まずイントロは2ビートをかもし出すリズムでシンバルを叩いていますが同時にライドとクラッシュシンバルを交互に叩いてサラウンド効果を持たせる不思議なパターン。
テーマが始まって管楽器の2分音符のメロディに対してスネアで8分音符で埋めていくこのアプローチも珍しいです。
普通のドラマーならメロディのリズムに合わせていくところを8分音符で合わせることで疾走感が出て次のドラムフィルにもスムーズにつながっていきます。
ドラムがフィーチャーの曲ではないのに自然とドラムが目立つ仕上がりになっている、このテーマのアプローチを分析すると一味違う音楽性を持っているドラマーだというのを感じます。
ソロが始まってから本格的に4ビートになり、ライドシンバルのドライヴ感がとてもスムーズでとても気持ちいいです。フィリーやジミーとも違う音色ですし安定感と緊張感が入り混ざっていきます。
トランペットソロが終わるとドラムソロが始まりますがちゃんとコーラスの中で1コーラス分ソロを演奏していてフレーズもとてもメロディックです。
ビバップフレーズよりさらに進化したと思うのがハイハットを使うフレーズ。
手足でのコンビネーションは両手と右足のバスドラが基本となりますがトニーの場合はそれに加えて左足も入れたフレーズになっています。
それがまたオリジナリティのあるプレイとなりトニーらしいソロが楽しめます。
Footprints(From:「Miles Smiles」)
Footprintsはマイルス作曲ではなく、サックスのウェイン・ショーターの3拍子の曲です。
ブルースのような形式でセッションでもよく演奏されます。これをマイルスバンドでは次元の高い演奏技術を駆使してプレイ。
コーラスの17小節目から4小節間はベースが倍テンの6拍子になったり、トランペットのソロ中にドラマーがタイムモジュレーションで3拍子の中に3拍4連符を演奏して4拍子にしたり、聴いていて複雑な仕掛けがたくさんあります。
この複雑なリズムにマイルスも乗っかってソロを吹いていますが3拍子から4拍子にいったり、また3拍子に戻ったり拍子の狭間でソロを吹いていますね。
それにしてもメンバーのタイムモジュレーションに対するレベルが高い。。
そんな高レベルな演奏をするのはウェイン・ショーター(T.sax)ハービー・ハンコック(Piano)ロン・カーター(Bass)にトニーウィリアムス(Drums)。
アルバムは「 Miles Smiles」でスタジオ版ながらもライヴのような仕上がり。それでいてスタジオ版なので各楽器の音がクリアで細かい音もよく聞こえます。
どれも必聴ですがこの曲は後にも先にもないような奇跡的なテイクなので聴いてみるべき1曲に選ばせてもらいました。
以上5曲選ばさせてもらいました。マイルスのアルバムや曲はハズレなしなのでどれを聴いても感心してしまいますがこの5曲は驚くほど凄まじいパワーを感じます。
マイルスのことや関係するドラマーを深掘りしたい方はぜひ聴いてみてください。









