Elvin Jones『Elvin!』(1962)
パーソネル
- エルヴィン・ジョーンズ(ds)
- サド・ジョーンズ(cor)※4,6曲目を除く
- フランク・ウェス(fl)※4,6曲目を除く
- フランク・フォスター(ts)※4,6,7曲目を除く
- ハンク・ジョーンズ(p)
- アート・デイヴィス(b)
収録曲
- Lady Luck
- Buzz-At
- Shadowland
- Pretty Brown
- Ray-El
- Four and Six
- You Are Too Beautiful
エルヴィン・ジョーンズといえばジョン・コルトレーンのバンドで60年代以降のジャズ界を牽引していったスーパースターの1人です。
ですから相当エルヴィンを好きな人でない場合は、おのずとコルトレーンと共演した作品ばかりを耳にすることが多いのではないでしょうか。
かくいう僕もその1人。
学生時代に参加させていただいたライブでLady Luckを演奏することになってからこのアルバムの存在を知りましたが、アルバム全体を聴いたのはごく最近のことです。
またニューヨーク留学時代にハンク・ジョーンズやフランク・ウェスの演奏を偶然耳にすることがあったため、最近聴きだしたにもかかわらずなんとなく懐かしいなと感じる作品でもあります。
リラックスしたニュートラルなエルヴィンのサウンドを楽しもう
この作品を通して言うことができるのはまず1つ。
コルトレーンバンドのときのような鬼気迫るような演奏ではなく、素のエルヴィンというか、非常にフランクなエルヴィンの演奏を聴くことができるという点です。
1曲目のLady Luckの冒頭なんかはエルヴィンらしい、ぬたっと湿っぽく重い、しかし速くてパンチの効いたブラシサウンドではありますが、どこか弾んでいるような楽しげな雰囲気です。
もちろんエルヴィンだけがリラックスしているというよりは、バンド全体がリラックスした暖かな雰囲気で包まれているような印象を受ける作品なのですが、それにはもしかするとエルヴィンの2人の兄であるサドとハンクが参加しているということもあるのかもしれませんね。
3兄弟で末っ子のエルヴィンは2人の兄たちから大変愛されたということですから、お兄さんたちとのレコーディングはエルヴィンにとってとてもリラックスでき、楽しいものであったのかもしれません。
もちろんエルヴィンだけでなく、ハンク・ジョーンズのコロコロとした珠のようなシングルトーン、フランク・ウェスがたまに見せるユーモラスな歌いまわし、アート・デイヴィスの粘っこく弾力のあるグルーヴ感など、細かいところまで魅力がたっぷり詰まっている作品です。
粋で小洒落たセットリスト
またこの作品で特徴的なのが、決して派手ではないが小洒落た曲が多いという点です。
この作品が吹き込まれたのは60年代ですから、ハードバップから次のスタイルのジャズを模索していく時代だったかと思いますが、ちょうどそんな雰囲気を感じさせるような曲が多く見られます。
例えばLady LuckやBuzz-At、またRay-Elなどは本当に粋で小気味のいいメロディです。
単にこのメロディを練習するだけでもジャズのニュアンスの習得に役立ちそうだなと思ってしまいます。
しかもテーマは複雑そうに聞こえるかもしれませんが、コードチェンジは決して難解な方ではないと思いますので、コードを採ることのできる方はトランスクライブに挑戦してみてレパートリーの1つ加えてみてはいかがでしょうか?